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31:モヤモヤ

第31話です。ブクマありがとうございます。がんばります。

「ふーん……なるほどな……」


 全てを話すと悠太郎は考え込んでしまった。

 やっぱり、色々無理があるよね……。


「つまり、5年生が終わるまでに河村からの吉田に対するいじめを解決しないと、何か大変な事が起こるってことか」


「だいたいそんな感じかな……うん」


 でも今の状況、吉田さんのいじめ自体は解決しているように思える。

 件の河村さんの手によって、だけどね。


「河村さんをずっと怪しんでた。でも、そんな様子全く見えなかったし、とりあえず吉田さんを助けなきゃって思って……」


 何も証拠が無い河村さんをいきなり捕まえて、いじめをやめてっていうのも無理あるし、そもそも面識すらなかったから動きようがなかった。

 このメモを証拠にってわけにもいかないし……。


「事情は大体つかめた。このこと、他のみんなは知らないのか?」


「知ってるのは悠太郎だけだよ。こんなこと話しても信じてもらえないと思ってたからさ」


「そっか……いや、どうしような……」


 何か必死に考えだす悠太郎。

 どうするって、どうするの?


「よし、このことをみんなに話そう!」


「ええ!? やだよ、痛い子だって思われるよ絶対!」


「オレとお前だけの秘密にしておいてもいいけど、オレもあんまり賢い方じゃないから。みんなで話せば何か突破口が見つかるかもしれない」


「突破口? 謙輔達はもう、全部解決したと思っちゃってるよ?」


 由美だってもう呆れちゃってたし、琢也や順だってどう思ってるか……。


「オレも、お前と一緒にあいつらに言ってやる」


 そう言いながら、悠太郎はカルピスを飲みほしニコッと笑った。


「最悪、誰も信じなかったとしても、オレだけはお前をずっと信じていてやるよ」


 真剣な目で私を見つめてくる悠太郎。

 その迫力に思わず押されてしまう。


 ……え、何で無言でずっと見てくるんスか?

 ちょっと気まずい。


「……悠太郎?」


「ただいまー。玲美ー、お部屋に居るのー?」


「あ、お母さん、おかえりなさーい!」


「あ、お邪魔してまーす」


 ……何だったんだ一体……心臓めっちゃドキドキした。

 あと、なぜかファンクラブの皆さんに怒られそうな気がしたんだけど。



******



「伊藤君来てるなら、もっとお肉系の物にしたほうが良かったかしら?」


「そんなことないっス!煮物もおいしいです!」


「そう言ってもらえると嬉しいわぁ」


 何事も無かったかのようにバクバクと食べる悠太郎。

 私なんて、何だかいろいろあって胸いっぱいなのにさ。


「玲美、あんたの好物の煮物よ?食べないの?」


「食べるよ。ちょっと休憩してるだけ」


「そお?」


 ぬー……無性にモヤモヤする。

 もうヤケだ! ヤケ食いだ!


 一気にサトイモを頬張る。


「リスみたいだな……」


 失礼な事を言われた。

 私を動物に例えるの流行ってんのか?


「伊藤君、おかわりいる?」


「あ、どうもすみません」


 ほんと、よく食べるね……見てるだけで満腹になりそう。

 悠太郎は、この後めちゃくちゃおかわりした。



******



「お世辞抜きで、お前んちの晩飯ほんとにうまいな」


「ご飯3杯も食べるとは思わなかったよ」


「成長期だからな」


 まだ成長する気らしい。

 その身長を少しは私にも分けてほしい。


「そういえば、もうすぐキャンプなんだよな」


「そうだね。いろいろ準備しなきゃ」


「オレもお前達と同じクラスが良かったな……」


 そっか、由美は朱音が居たし、私には琢也と順が居たけど、悠太郎は一人でクラスが別れてしまったんだ。

 正確には同じクラスだった子達も居たんだけど、特に仲の良かった子達じゃないもんね。


「クラス替え、寂しかった?」


「少しな。でも、クラスが違っても会えなくなるわけじゃないし、割り切ったよ」


 悠太郎は強いんだね。

 転校のことにしても、クラス替えのことにしても、ちゃんと受け入れている。


「さて、そろそろ帰るか」


「うん、気を付けてね」


 自転車を出す悠太郎。

 明日も来るのかな?


「明日はどうする?」


「晩飯のことか?」


「またうちで食べるの?」


「大丈夫だ、明日は母さんも早く帰ってる」


「そっか……じゃなくて、明日もうちに自転車止めてくの?」


「どうしような……寂しいか?」


「そ、そんなことないよ!」


「玲美が嫌じゃなければ、しばらく続けるよ」


「嫌じゃないけどさ……大変じゃない?」


「いい運動だ」


 いい運動か。

 私も運動しようかな……この微妙なプニプニ感を何とかしたいし。


「じゃあ、また明日な」


「うん、また明日」



******



 部屋に戻って、メモを見る。

 もう一度状況の確認をしよう。


 河村さんは、どうやら吉田さんとは旧知の仲で友達だったらしい。

 そして、吉田さんに何かを言って、それに吉田さんは従った。

 その結果、吉田さんに対するいじめが止まって、私達への嫌がらせも無くなった。


 これってもう、このこと自体が河村さんがいじめの主犯だったって言ってるようなものじゃない?

 そして、小岩井のこと。

 河村さんと付き合いだした。

 小岩井が、吉田さんのいじめに加担し出したのもちょうどその頃。


 ちょっと前に由美達のクラスに行って、河村さんのこと何かわかったか聞いてみた。

 結果、同じクラスだった人達はみんな優等生だったという印象しかなかったらしい。

 優等生で吉田さんの友達だった河村さんが、吉田さんをいじめる理由がよくわからない。

 今の状況から主犯だとは思うんだけど、その理由がまったく見えてこない。


 何か見落としてる気がする。

 こう、何か引っかかってることがある。

 何だっけ……3歳の頃の記憶じゃない何か……。


 何か重要なことがあったような……今日はモヤモヤしっぱなしだ。

最近の小学生はませてるって言いますもんね。過去に転生した話なんですけどね、これ。

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