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21:恵利佳の行方

第21話です。ちょっと時間が空いたので、投稿します。よろしくお願いいたします。

 翌日も吉田さんは休んだ。


 先生が言うには、体調不良でと連絡があったらしい。

 さすがに今日は花瓶は置かれていなかった。


 花瓶は謙輔達が割っちゃったしね。



******



 休み時間――――


 廊下で小岩井とばったり会った。


 吉田さんをいじめたことについて聞くチャンスか?

 でも、ここは慎重にならないと、私一人が暴走してしまうわけにはいかない。


 そんなことを考えていると、小岩井の口から出たのは意外な言葉だった。


「日高、俺、河村と付き合うことになった」


 河村……!?


「河村智沙……さんのこと?」


 ここまで動きの見えなかった河村智沙の話題が急に出たことで、少し動揺してしまった。


「ああ、彼女は素晴らしいんだ。俺のこと頼りにしてくれるし、お前と違って優しい」


「悪かったね、優しくなくて」


「彼女のためなら、俺は何だってできるぜ……そして、抱き締めるとこう柔らかくて、いい匂いがするんだ……」


 こういうの、何て言うんだっけ……?

 何とも言えない気味の悪い笑みを浮かべる小岩井。


 背中がぞわっとする。

 こいつのこんな表情、今まで見たことがない。


「お前も、河村を見習って、もう少し女らしくなれよ。じゃあな」


 言いたいことだけ言って、小岩井は去って行った。


 思いがけず得た情報。

 小岩井と河村智沙は、付き合っている。



******



 20分休みを利用して、私は由美のクラスへ行った。

 由美と朱音に、さっきあったことを相談するためだ。


「そんなことがあったの」


「恋をすると、人って変わるものね……私も琢也君に出会って、随分変わったと思うし」


 朱音は性格が丸くなった気がする。

 昔のトゲトゲしさは全く無くなったと思う。


「いつものあいつと違う感じで、ちょっと寒気がしたよ」


「それにしても、河村智沙さんねぇ……どんな子だっけ?」


「私も、名前くらいは知ってるけど、どんな子かは全然知らないわ」


「優等生を絵に描いたような子だよ。小岩井とは正反対って感じ」


「小岩井の変貌ぶりを考えると、ちょっときな臭い感じがするわね」


「わたしもそう思う。ちょっとクラスの子達にも河村さんのこと聞いてみるね」


 小岩井が吉田さんのいじめに加担したことに、河村智沙が関わっているとは思う。

 だけど、あまりに情報が少なすぎて、まだ証拠は掴めそうもない。


 もっと、情報を集めなくちゃ。

 いっそ本人に直接聞いてしまおうか。


「玲美、河村さんに直接聞くのはやめてね。危ないから」


「あ、はい……」


 由美に釘刺されたのでやめておこう。



******



「それにしても吉田の奴、全然出てこないな」


 放課後、体育館脇にある池に、私達は集まっていた。

 

 ここには人がほとんど来ることは無く、あまり目立たない場所でもあるので、こうして集まるにはちょうどいい場所だ。


 悠太郎と朱音は部活動をしているので、今集まってるのはそれ以外のメンバー。


 珍しいことに今日は坂本も居た。

 坂本が私たちの集まりに参加するのは、初めてのことだ。


「謙輔さんが、あんなことしたからじゃないか?」


 坂本が、謙輔をたしなめる。


「う……たしかに、俺がいじめてからだよな、来てないのって……」


 落ち込む謙輔。


 いや、そこは庇わないからね?

 やったことは事実なんだし。


「様子見がてら、謝りに行くのはどうだ?」


 琢也が提案を出した。


 それ、意外といい案かも知れない。

 本人にも直接いろいろ聞けるし。


「吉田さんの家ってどこだっけ?」


 由美が言って気付いたけど、私も吉田さんの家どこかわかんない。

 神社であったことがあるくらいだし……。


「僕、知ってますよ。そんなに離れていないし、行ってみます?」


 さすが順、こういう時頼りになるね!


 この後家の用事があるという森山さんとは別れて、私達は吉田さんの家へと向かった。



******



「ここが、吉田さんの家か……」


 そこは、結構年季の入ったコーポだった。

 ところどころ朽ちてる部分も見られる。


「あいつ、こんなところに住んでるんだな」


「そんなこと言ったら失礼だぜ?」


「そうだな、子は親を選べないもんな……よし、江藤、呼び鈴押してくれ」


 お前、自分では押さないのな。


「了解っス」


 江藤が呼び鈴を押す。

 じっと待つ私達。


 ……誰も出てこない。


「呼び鈴ちゃんと鳴ってた?」


「聞こえたような、聞こえてないような?」


「もう一回押してみるっス」


 何度押しても反応がない。

 留守なんだろうか?


「しつこいね!新聞なら、うちは取らないよ!」


 不機嫌そうな大人の女性の声が聞こえた。

 もしかして、吉田さんのお母さん?


「あの、私達、恵利佳さんのクラスメイトで、日高玲美って言います。恵利佳さんがずっと休んでるので心配で来ました。恵利佳さん居ますか?」


「新聞じゃないのかい。恵利佳ならどっか出掛けてるよ。全く、家の手伝いもしないで何やってんだか」


 不機嫌な声の主によると、吉田さんは家に居ないそうだ。


「あの、恵利佳さん、どこに行ってるかわかりませんか?」


「知らないよ!どっかその辺にでもいるんじゃないのかい!?」


「玲美、もうやめとこう」


 由美が止めてくる。


「ありがとうございました。失礼しました」


 それだけ言って、私達はコーポを後にした。



******



「おかしいよな。あいつって体調不良で休んでるんだろ?病院に行ってるならわかるが、親がどこに行ってるかわからないって言うなんて、変だと思わないか?」


 謙輔の言うとおりだ。


 それに、あの親の態度は何だかおかしい。

 私達が思っている親というものとは、随分と違う感じがする。


「どこに行ってるんでしょうね……」


「吉田が行く場所なんて、見当もつかないよな」


 吉田さんの行く場所か……。


 ……もしかしたら、あそこかも!


「待って、みんな。私、吉田さんのいる場所わかるかもしれない」


「本当か!?」


「うん、私に着いてきて」




 こうして、私達は、吉田さんがいるかもしれない場所へと向かう。


 向かう先は、私が吉田さんと初めて出会ったあの場所だ。

レイアウトはいろいろ研究中なので、ある程度定まってきたら、第1話から全部レイアウトを変更する予定です。

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