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15:初めてのボウリング(1)

第15話です。よろしくお願いいたします。

※レイアウト修正を行いました。

 ボウリングに行く約束の日。


 私は琢也達と合流してから、待ち合わせ場所のバス停に向かった。

 渡辺達はもう来ていた。


「遅かったじゃねえか」


 渡辺は待ちくたびれたとばかりに背伸びをしている。

 約束の時間まで、まだ10分以上あるんだけど。


「謙輔さん、待ちきれなくて30分以上前からここにいるんだよ」


 あ、そうなんだ。

 江藤君も付き合わされて大変っスね。


「伊藤様ー!! お待ちしておりましたわ!!」


 あ、ファンクラブ会員だ。

 完全に目がハートマークになってる。

 悠太郎にも『様』付けてるし、彼女の口癖か何かか?


「ちょっと早いけど、みんな集まったなら向かおうか」


 悠太郎はマイペースだ。

 渡辺達のこと詳しく知らないし、仕方ないか。


「おめえが仕切ってんじゃねえよ! いいか? 俺がリーダーだ!!」


 さっそく悠太郎に絡む渡辺。

 悠太郎はというと、全く気にしていない感じ。


「チッ……まぁいい。おい、江藤、バスはあとどのくらいで来る?」


「次は11分後くらいっスね」


「そうか。しばらく待つしかないな。玲美と加奈は俺の横に座ってろ。立ってたら疲れるからな」


 4人掛けの椅子の真ん中ら辺に座る渡辺。

 端っこ行けば、もう一人座れるじゃん。

 しょうがないな……森山さんの横に座ろう。


「ちげえよ!お前はこっちだ!」


 チッ、森山さんの横に逃げようとしたのに気付かれたか。

 自分の左側をバンバンと叩く渡辺。

 機嫌悪くなっても困るし……仕方ない、座っとこう。


「渡辺だっけ?お前、随分と粗暴な奴だな」


「あ?お前調子乗ってんの?玲美がどうしてもって言うから誘ってやったのに」


 やばい、二人とも険悪ムードだ。


「悠太郎とケンカするなら、私帰るよ」


「むぅ……あいつが調子に乗ってるから」


「伊藤様、こちらが空いてますわ」


 ファンクラブ会員は、さっき私が座ろうとしていたところに悠太郎を誘う。


「オレは立ってるからいいよ」


 ファンクラブ会員は撃沈した。

 うつむいて、指でイジイジしてる。


 その行動を実際に取ってる人を初めて見たよ。

 クールビューティーなイメージだったのに、残念美人な人かもしれない。


 そうこうしてるうちにバスが来て、私達はボウリング場に到着した。



******



「西田、俺とボウリングで勝負しろ!!」


「勝負?いいけど、俺が勝っても恨むなよ」


 なぜか琢也に宣戦布告する渡辺。

 琢也がボウリング上手いっていう話は聞いたことないけど、どうなんだろ?


「ただ勝負するだけじゃ、面白くもなんともないよなぁ?」


「そうか?」


 渡辺は何か企んでそうな悪い笑顔をしている。

 頼むから、ボウリングぐらい穏便に済ませてほしい。


「玲美の……玲美のキスを賭けて勝負だ!!」


「な、何言ってんのお前!?」


「勝ってもいらん」


 琢也ひどい。

 てゆうか、私を勝手に賭けの対象にすんな!


「じゃあ、オレもその勝負に参加しようかな」


 悠太郎はそう言いながら、ボールをなんかキュッキュと磨いていた。

 あれ?悠太郎のボールって何か柄が付いててかっこいいね。


「て、てめえ!マイボール……だと!?」


「たとえ遊びだとしても、手は抜きたくないんだ」


 そういえば、あんた負けず嫌いだったな。


「じゃ、じゃあ、もし私が勝ったら伊藤様にキスして貰ってもよろしいですか!?」


 森山さんはよくわからないことを言い出した。

 私も悠太郎もキスはしないよ?



 ゲームを始める前にシューズを借り、ジュースを買いに行く。


 それにしてもボウリング場って、何でもあるんだね。


 ゲームコーナーも広いし、フードコーナーも充実している。

 プリクラもいっぱい置いてある。


 今度、由美達とも遊びに来たいな。



「そういえば、玲美ってボウリングやったことあるの?」


 やったことないです。

 悠太郎は上手そうだよね。何か、恰好からして違うもんね。


「今日が初めてなんだけど、ピンを倒せばいいんでしょ?テレビで見たよ」


「投げてみると、思った通りには行かないもんさ。そういえば、ルールは知ってる?」


「端っこ転がっちゃうとガーターだっけ?」


「正確にはガターね。ただ、一般的にはみんなそう言ってるから、それでも良いんだけど」


「悠太郎はボウリング詳しそうだね」


「ガキの頃からやってたから。親父がスパルタでさ」


「凄いね、悠太郎は何でもできるスーパーマンだ」


「雲梯では玲美に負けたけどな……」


 え、それまだ引きずってたの?

 たぶん、今やったら私が負けるよ?


「それにしても、どうなってんだ」


 琢也もやってきた。


「あの渡辺が別人みたいだ。玲美、お前あいつに何かしたのか?」


「いいえ。急に給食の時に呼ばれただけです」


「わけがわからん。あいつ、俺をボウリングに誘うために俺にあの日のこと詫びてきたんだぜ?」


「私もわけわかんないよ」


「あの日のことって何だ?」


 あ、そうか、悠太郎は知らないんだった。

 もし話したら、きっと悠太郎めっちゃ怒るだろうな……。


「ああ、あいつが俺の給食こぼしちゃってさ」


 琢也が適当にごまかしてくれた。

 悠太郎はそれでも、なんか怪訝な顔している。

 この人、こういうところは変に勘がいい。


「おう、こんなところにいたのか」


「玲美がボウリング初めてだって言うからさ、ルール教えてたんだ」


「何だと!?それでは俺が手取り足取り教えるしかないじゃないか」


「いえ、遠慮しておきます」


 手つきが何か嫌だ。


「ところで、ジュースは買ったのか?」


「そういえばまだだったね。何にしようかな」


「何がいいんだ?俺が買ってやる」


「ちゃんとお小遣い持ってきたから大丈夫だよ。あ、カルピスにしよっと」


 お金を入れようとしたら、渡辺が先にお金を入れてボタンを押してしまった。

 そして、私の前にカルピスを出してくる。


「ほら、お前のだ」


「あ、ありがとう……ございます」


 さすがに買ってしまったものを断るわけにはいかないので貰っておいた。

 何だか、渡辺のペースに飲まれてしまっているような気がする。


 そういえば、順が言ってたっけ。

 狙った女子はどんな手を使ってでも手籠にするって。

 今のところ酷いことされたりはしてないけど、気を付けておかなくちゃ……。



******



 レーンだっけ?

 その場所に戻ると、渡辺がまたも自分の席の隣に座れと言ってくる。

 断るとうるさいからなぁ……さっき、ジュースも買って貰っちゃったし、しょうがないか。


「さあ、5年3組ボウリング大会の始まりだ」


 いえ、私達6人だけですけど。

 しかも、悠太郎は5年1組です。



 こうして、小規模な5年3組ボウリング大会は開催された。

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