01:過去への転生
初投稿です。至らないところが多々ありますが、よろしくお願いいたします。
※少しレイアウトと文章を修正しました。
俺は、毎日がむしゃらに働いていた。
所謂ブラック企業に勤めていた俺は、毎日毎日終電近くまで残業をしていた。
家に帰ってきて、玄関を開けた瞬間、突然視界がぐら付いた。
そのまま前のめりに倒れ込み、体が麻痺して動かなくなっていく。
そして、胸の辺りが押さえつけられるように軋み痛みが増す。
ああ……、死ぬんだ。そう俺は悟った。
俺は一人暮らし。こんな時、助けてくれる家族も彼女も居ない。
そういえば、まだ買ったばかりのゲームクリアしてなかったな……。
友達に借りた漫画もまだ返してない。
そんなことを考えていると、走馬灯らしいものも見え始めた。
体にあった痛みが段々と引いて、心地良さすら感じ始めた。
思えば、子供の頃から親には迷惑ばかり掛けていたな。
ああ、あの時みんなと行った祭りは楽しかった……途中で大雨になって大変だったけど。
走馬灯の中に、一つ気になるものがあった。
それは、小学校の頃の記憶。
走馬灯の中の少女は泣いていた。
記憶の中の俺は、その子を必死で庇っていた。
家が裕福では無いという理由から、その子はクラスのほとんど全員からいじめを受けて、俺はその中で唯一その子の味方をしていたんだ。
でも結局、その子は進級間近だった小学5年生の春休み、学校の屋上から飛び降りて……。
目の前が真っ白になり始める……。そろそろかな。
思えば、そんなに良い人生じゃなかったような気がする。
もう疲れたよ……別にペットに犬が居るわけじゃないけど、そんなセリフが最期に脳裏に浮かんだ。
******
「お目覚めかい?」
見知らぬ天井……じゃない?
天井どころか何も無い。壁も、地面も、空も。
紫と緑色を薄くして足したような、何とも言えない色の広がる空間だ。
浮いているわけでもないし、地面に触れているわけでもない妙な感じがする。
ここは……どこだ?
「簡単に言うと、君達があの世と言っている空間だよ」
白い衣を纏った、何人とも言い難い眼鏡をかけた男がフレンドリーな感じで語りかけてくる。
と言うことは、俺はやっぱり死んだんだな……。
「残念だけど、そうだよ」
そっか……そういえば、俺が喋っているわけでもないのに会話できるんだな。
「ここは思念だけで会話できるからね」
もしかして、神様だったり……します?
「そうだよ」
そうですか、失礼しました。
神様って案外フレンドリーな感じなんだな。
「それで、この場所はね、簡単に言うと輪廻転生するための場所なんだ。現世で悔いを残した人がやって来る場所でもあるんだよ」
え?俺に悔いなんて……あったっけ?
「死ぬ前にいろいろ記憶を見たでしょ?その中に無かったかな?」
あ、あった!俺が小学生の頃に救えなかった子!
……でも、あれはどうしようも無かった。
俺一人が頑張ったところでどうにかなるもんじゃなかったし、友達ですらいじめる側に加わって四面楚歌状態だったから。
それに……俺にはどうしても突破できない壁があった。
そういえば、彼女は!?死んでからどうなったんですか!?
「ああ、その今思い浮かべてる子かな?その子ならね……こっちには来てない」
どういうことですか?
「あれ?聞いたことない?自殺者の魂はね、死んでからも浮かばれないんだ」
まさか……自縛霊?
「そうそう、そんな感じ。可哀想にねぇ……ずっと同じ行動を繰り返して苦しみ続けている」
何とかならないんですか!?
「悪いけど、そんなのは世の中にいっぱいいるんだ。数え切れないほどね。その中の一人だけ、特別扱いにはできないよ」
そっか……。
「君は、彼女を救いたい?」
できるんですか!?
「できないこともないよ。幸い君は転生の対象だし、その悔いとなってる部分が彼女とリンクしてるからね。どうしてもって言うなら吝かではない」
ほんとですか!?
「そうすることで、彼女がこうして苦しむことも無くなるなら、君にとっても彼女にとっても一石二鳥だよね」
ぜひ頼みます!もし、それができるなら、どんなことだって何でもします!
「何でも……と言ったね?」
う、それは……言葉のあやで。
「それにしても、そんなに彼女を気にかけるなんて、もしかして……」
彼女は……俺の初恋の相手です。
「正直でいいね。じゃあ君は……その時代、つまりは過去に転生させることにしようか」
過去に?過去をやり直せるんですか?
「うん。でもね、難点が二つほどあって、まず一つは君のこれまでの記憶が残るのは物心つく3歳くらいまで……かな?」
じゃあ、大事な場面になっても肝心な時に覚えてないってことですか?
「何らかの形で部分的に思い出したりはするかも知れないけど、完全に覚えているのは無理だね。君は今の君ではない人物に生まれ変わるのだから。物心つくと、前世の記憶はほぼ消えてしまうんだよ」
あ、もしかして、もう一つの難点って……。
「そう、違う人物になってしまうことだ。察しが良くて助かるよ」
それでも……良いです!俺は生まれ変わって過去を変えます!
「ふぅん……潔いね。わかった、そんな君には僕から一つ手助けになるヒントをあげよう」
助かります!
「僕は言ったね?記憶は物心がつくまで残ると」
あ、はい。
「だから、その間に物心がついてしまった君に対して、何かメッセージを残しておくんだよ」
な、なるほど……。
物心がつくのは3歳くらいか……ギリギリ文字を残したりとかできるかも知れない。
「じゃあ、転生しよっか」
ずいぶん軽いっスね。
「僕にとっては日常業務だからね。もう流れ作業だよ」
神様の仕事って言うのもあまり夢が無さそうですね……。
「夢を与えるのが、僕の仕事だからさ」
そっか。すみません、立派な仕事ですね。変な事言ってごめんなさい。
「……ふふ、ありがとう。そうそう、言うの忘れてたよ。君の転生先なんだけど」
え……?何ですか?
神様が何か言っていたけど、俺の体は小さな光となってどんどん降下していった。
死んでからも苦しんでしまっている、初恋のあの子を救うため、俺の第2の人生が、幕を開けようとしている。
我ながらちょっと、何ていうか、ヒロインを助けに行く正義の味方?みたいな気分だ。
……いや、そんなことはどうでもいい。俺はもう後悔したくないんだ。
彼女を助ける。それだけだ。
再び光が見えてきた…………今度こそ……俺は………………
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「立派な女の子ですよ!」
………え!?
2016/2/9 文章の一部おかしな所を修正しました。