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64. 耳を塞ぎたくなる。

 動物の行動描写があります。苦手な方はスルーをお願いします。

残念な描写があります。「あイタ」という方もスルーをお願いします。


 防疫上の観点から、関係者以外の方は家畜小屋に入るのはご遠慮下さい。


 間近(まぢか)で聞くと耳をふさぎたくなる騒音だった。

大小並んだ小屋の前で、ため息を吐く。


 雌鳥(めんどり)は卵をんでいてかえし、ヒナを育てる性質上「滅多な事」がないと叫ばない。まれに個性的なヤツがいないわけではないが「コケコッコー」と大音声(だいおんじょう)で鳴くのはおおむ雄鶏(おんどり)だ。

 その滅多な事(非 常 事 態)が「夜中に馬が大暴れ」という椿事(ちんじ)で、臆病(おくびょう)な鳥達の動揺たるや幽霊風情では想像を絶する。


 綿羊(めんよう)が絶叫しているのも、多分、理由は一緒だ。

というか、自分は羊の鳴き声を毛刈りで羽交(は が)めにした時くらいしか聞いた事が無い。

 あ。

エサの時間が遅れた時もか。物凄い声だった。実家は人里離れた山中だが、あの時は遠い隣家や風下の家からも問い合わせが来たっけなぁ。

 ちょっと遠い目になった。

ついでに言ってしまえば、山岳馬(ポ ニ ー)だって好きで暴れたわけじゃない。

何故(な ぜ)ああいう状況になったのかは分からないが、どの動物も被食者(ひしょくしゃ)(ゆえ)の自然な反応だ。


 ず壁を透り抜け、鳥小屋の中に入る。

生身だったら見知らぬ人間が入って来た時点でパニックに拍車(はくしゃ)がかかり、こんな騒ぎじゃ済まないだろうが、幸か不幸か今の自分は幽霊だ。

動物の間では幽霊が彷徨(さまよ)っているのはフツーだが、それはこちらでも同じらしい。自分(幽 霊)には見向きもしないで、鶏は必死で鳴きわめき羽根をバタつかせている。

 スルーされて、ホッとした。

良かった。コレなら何とかできそうだ。


 ここの鳥は全体的にこうばしい色合いで、白よりは目立たないが、あイタ

待て。鈎爪(かぎづめ)攻撃(アタック)すんな。ん、お前、雄鶏か。バタつく翼が地味に痛ぇ。防衛本能ならまだしも、ちょ、この。うざ。

どさくさまぎれに単なるランキング争いの勝負を仕掛けんな今それどころじゃ――イイ度胸だ。

そっちがその(ヤ る)気なら二足歩行動物として鳥類には負けんぞ。


 眼鏡をかれそうになって、イラッとした。

鷲掴(わしづか)んで捕まえる。習慣(ク セ)で翼を互い違いに組んでしまってから他人(ひ と)の鶏に何してンだと我に返り、とりあえず持ち上げて目線をあわせてみた。

 雄鶏は、幽霊にられたのは初めての経験だったのだろう。

金茶の瞳を真っ直ぐ向けてきた。自分を見返す鋭い鳥目に、カチンとくる。反省なんかするかと思った。

 その間も他の鳥達は騒ぎ続け、とうとう壁にぶつかる個体まで出始めた。


 あああ。すまん。雄鶏(コイツ)所為(せ い)らん時間くった。


 ムカついたから雄鶏は小屋のスミへ転がした。

互い違いに組まれた翼を何とかしようと一心(いっしん)になって足掻(あ が)いているが、パッと目には茶色い羽のかたまりがモコモコしているようにしか見えない。

け。しばらくそこでモコってろ。


 身をかがめて、意識をしずめた。

耳を澄まして音を拾う。動物の鳴き声には意味がある。

しばらくして、自分が知る音と変わらない事が解って胸を撫で下ろした。


 そっと口の中で<音>を真似た。

警戒解除(危険 は 去った)という意味の鳴き声に似せて、慎重に繰り返す。やがて、恐慌でバタついた気配が少しずつ落ち着いて静かになる。止まり木に並んだ鳥達や巣箱の親鳥がジッとし始めた。

 上手くいってホッとする。

が、コレは本来()れの一位(ボ ス)たる雄鶏が果たすべき役割だ。小屋の中に散らばっている大量の羽毛が目に入って、自分は腹が立ってきた。


 雌鳥すらスルーした幽霊(ザ コ)なんかにケンカ売ってないでシゴトしろよ一位。

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