表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/106

43. 美人がキレると凄みが出る。

 呆然としてしまい、更に心配そうに自分を見る琥珀色の瞳とかち合って、ギクリとした。

 火の神の口止め付きでは、説明が上手くできない。

相談しようと視線を彷徨(さまよ)わせたら、掌の騒動はエスカレートしていた。


 ……。

……どうしてガチンコ勝負になってんですか。


 得物(え もの)を手にした攻防は、収まりがつきそうにない。

むしろ激しくなっていく。

 ……仕方(し かた)ない。

イリイチに話そうとしたら、察知した二神が鍔迫(つば ぜ)り合いをしながら視線を投げて寄越した。

 火の神からは止められ、水の神からは(うなが)される。

互角に渡り合っているさまは見事だったが、板挟(いたばさ)みのストレスがハンパない。

その結果、自分の挙動不審(きょどう ふしん)拍車(はくしゃ)をかけただけだった。


 イリイチの目が厳しくなった。

美人がキレると凄みが出る。


「ナナシノ。……お前、イドで何かあったな?」


 飛び上がりそうになるくらい驚いた。

的のド真ン中を当てられたどころか、射抜(い ぬ )かれた勢いで的そのものを吹っ飛ばされた心境だ。

 おまけに自分は図星を指されると弱い。

狼狽(うろた)えて、すぐに表情に出る。だから、動揺(どうよう)のあまり顔が引き()ったのが自分でも解った。

必死でパニックを抑え、ようやく一言(ヒトコト)喋る。


「……後で話す」


 うあああああ。


 内心で絶叫した。

自分は頭を抱えたくなった。


 何て言い草だ。

他に言い方があるだろう。

それに、イリイチはコレ(・ ・ )で納得するようなオヒトヨシじゃない。


 案の定キリリと(まなじり)を吊り上げられた。

ビリビリと気圧(け お)される。

 何か言いかけたイリイチを、扉が開く音が(さえぎ)った。

夜の玄関先を四角い光が切り抜く。

ピタリと掌の騒動が止まった。


 頑丈なドアを開けてくれたのはイーラだった。

すこし奥でハルトマンも待っていた。暖かな家の明かりが、太陽よりも眩しかった。


「二人とも、どうしたの? ここはわたくしの家だから、さあ、入って」


 イーラが促してイリイチを招き入れる。

続いて自分も入ると、重いドアが開かれたときと違って静かに閉じられた。

 振り返ったイーラは自分を見て首を(かし)げた。


「ナナシノ? どうしたの? 真っ青よ?」


 一斉に視線が集まった。


 ……。

……いっぱいいっぱいの時に全員注目とかマジでヤメテ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ