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39. 神でなければ立ち入れない。

自分でも気にしていたし、努力しなかったわけでもない。だが「モテない」指摘が二回って、どんだけだ。

ビミョーな心境になった。

 トタトタと水の神が寄って来て、火の神をツイツイと引っ張った。


『火の、火の、ちょっと良いか。……ナナシノ、すまぬがそこで待っててくれ』


 目礼で返すと、水の神は(うなず)き火の神の首根っこを掴んで、ぐいぐいと井戸の方に歩いて行った。両腕を組んで何かを考え込んでいるふうの火の神は、ほぼ引き()られる様な形で両足と武具とで三本線を引きながら連れて行かれた。

 何と無く二神を見送った。


『……火のって面白いよね』


 唐突な言葉にドキリとした。

いつの間にか、自分の(かたわ)らに(みやび)な姿の存在が立っていた。

火の神から()り飛ばされたばかりだからすぐにわかった。水の神に招かれたこの<場>は、何らかの神でなければ立ち入れない。

自分を見上げ、ニコリと笑った。


『はじめまして? 僕は“風の”と呼ばれている。よろしくね、ナナシノ。それで――』


 風の神の影からするりと立ち上がった存在が、そっと前に踏み出してきた。


『――オレは“土の”と呼ばれている。はじめましてナナシノ。異界の<本>の管理者』


 火の神に続き風の神と土の神の出現に、驚きと緊張が過ぎて心臓がもたない。それにどうして初対面の自分を知っているのか訳がわからない。

 惑乱しそうになったが、なけなしの理性で黙礼した。口を開くと変な声を上げそうで、自分でも予想がつかない。そのくらい動揺していた。

 フリーズ一歩手前の自分に、風の神は『水のが君の事を知らせてくれたんだ』と事もなげに話し出した。


『それで、水のと火のの「頼み」のことなんだけど』


 ピクリと自分の指が動いた。

風の神はひょい、と肩をすくめた。


『聞き入れるかどうかは別にして、……彼らを、許してやってくれないか?』


 思いもしなかったことを言われて、一瞬思考が止まる。

 ゆるすも何も、自分には心当たりがなかった。

強いて言えばモテない指摘くらいだが、それだって謝られるほどの内容じゃない。

ポカンとした自分に、風の神はいきなり黙りこくった。

ふ、と息を吐く。

軽やかな気配が(ひそ)められ、(うれ)いの色が顔に表れた。

そして真っ直ぐ自分を見た。


『君は、自分自身の<死>にかかわるのが二度目だろう?』


 それは問いというより確認だった。


『一度目は<本>の所為(せ い )。二度目の今は、――殺されたと』

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