37. 神は沈鬱な表情で。
前に死にかけたのが、神のせい?
唐突に言われ、更に意味が解らなくて、思考停止した。
自分の硬直に気付かず、神は落ち込んだまま話し始めた。
『そなたも既に知っておろうが、ここには魔法があっての』
はあ。
と、内心で頷いた。相づちを打つのは日本人の習性だ。
『その中に我等を召喚し使役する術があっての。余りに被害が甚大であったが故どうしてもソレを封印する必要があった。魔法系統を整理し、術そのものを書物化するまでは良かったが、<本>管理の問題が出た』
小さな神は嘆息した。
『禁書にして封印はした。ところがそう何度もできない。特殊な書物だからこそ焚書にもできず、悩み抜いた我等は魔法の無い世界に送り付けて処分することにした』
自分は呆気に取られた。
神は俯いて『異界で朽ち果てるどころか、まさか保管されていたとは……』とヘコんでいる。もにょもにょと手を動かし、再び話し始めた。
『そなたが触れた書物の中に、ソレがある。死に掛けたのは曲り形にも我等を召喚できる呪術が記された物に触れた所為じゃ。<呪いの本>と言えば解りやすいかの。<禍神>がそなたを滅ぼせなかったのは、病に罹っても死ななかった過去に因る』
……。
……そういえば「呪われている古文書」とか噂あったなー。
ようやく衝撃から立ち直ってきて、ボケッと思い出した。
神を乞う儀式、<降臨>について書かれていた古文書。
禁帯出本として他の稀少本同様、書庫管理されている。
『双子の無事を確認するまでそなたらが滞在するのを認めよう。だがそれとは別に、そなた自身に是非とも聞き入れて欲しい頼みがある』
神は沈鬱な表情で自分を見つめた。
何となく予測できた。
『蘇らせてやるから、そなたの世界の<本>をどうか焼却してはくれまいか』
『無理です』
即答してしまった。