31. 話を聞き出すことにする。
ゆったりと構えたイリイチと、外目には緊張している自分の間に、手を繋いだ双子が笑って立っている様子はほのぼのと見えるのだろうか。
ハルトマンとイーラが笑っている。
ハルトマンは失神した母親にコートを被せて腕を取り、あっという間に背負う。呆然と控えていた部下に目配せをして、促す。部下はハッと我に返り、歩き出した。
……そうか。
その人はイリイチと自分が見えていないから、双子が突然アクロバットしたように見えるのか。スマン。悪気は無い。反省はしてないから、また今度やるかも。
主にイリイチ、ひょっとすると自分も。
思っていたより力強く引く子供の手に、ビクつきながらそんな事を考えた。
ハルトマンがチラリと振り返って歩を進める。青い瞳は光を反射して内心を読めないが、迷いの無い歩調は訓練された動きだ。
そして冷たい夜の中、双子は怖がりもしないで元気に歩く。
ちびっ子というのはこんなにオープンなのか?
イリイチに視線を向ければ、同じだったらしく、苦笑された。思わず笑み返した。
殆ど引き連れられるようにして歩いていたが、おかげで考えがまとまった。
この子達への虐待の可能性は低いが、日常生活を把握しなければならない。
向いていないが、遊び相手となったイリイチではなく自分が話を聞き出すことにする。
母親であるクソ女の為というより、聴取に慣れていなさそうな子供達の為だ。
仮に真意を看破され聞き取りに失敗しても、自分の確信が第三者に証明出来ればそれで良い。どう思われようが別に構わない。
双子を助けたイリイチの信頼が損なわれるより、接点の少ない自分が子供達から嫌われる方がずっとマシだ。
小さな手がキュッと自分の指を握り直して、考えた以上に覚悟が要った。