表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/106

30. 手を繋ぐ。

 驚いた顔のまま何か言おうとしたハルトマンは、駆け込んできた部下に気付いて唇を引き結んだ。部下は手に持っていた子供用の靴を、抱かれたままの裸足の子に履かせている。

 器用に身につけさせた後はハルトマンの耳元に何か報告をしていた。


 イリイチと自分が、見えてなさそうだ。

良かった。ちょっと安心した。外国向けの作法なんて知らないんだよ。

アレを他の人にも見られていたら恥ずかし過ぎて死ねる自信がある。もう幽霊だけど。


 ハルトマンへの報告は耳打ちに近く、双子にはくすぐったかったのだろう。

くすくすと笑う様子に不安感はない。

ハルトマンは頷き、一言二言、唇を動かすと部下は立ち去る。そして双子に何か言うと、子供達はパッと笑顔になった。


 腕を解かれて双子は滑り降りる。ダッフルコートはハルトマンが自分の腕にかけた。次にやって来た別の部下が何か報告を始める。

 そして双子は、何故か真っ直ぐにイリイチと自分を目掛けて走ってきた。


 イリイチはともかくなんで自分もだ!?


 自分のパニックを察したイリイチは、満面の笑みを浮かべて飛び掛ってきた双子を、ガッシリとキャッチした。もの凄く楽しそうに、そのまま両脇に抱えて、ぶうんと二回転する。


 うあ。ちびっ子すげぇテンション上がっている。

きゃあきゃあ笑ってご機嫌になった子供の手を繋いでイリイチは琥珀色の瞳を真っ直ぐ自分に向けた。


「ナナシノ、その子と手を繋げ」


 顔は()んでいたが、目が(わら)っていなかった。

イーラと同じ迫力だ。否も応もなかった。


 あの、自分が物に触れて人に触れないって解っているか? 

あと泣かないか?

パニックから立ち直ってオロオロした自分を、イリイチはニッと笑った。

清々しいくらいの力強さがあった。


「イーラの手を取れたのは手袋しているからだろ? 四の五の考えずにとっとと手を繋げナナシノ」


 うん。わかった。とりあえずアレに関しては黙れ小僧。


 ニコニコしている子供の手に、恐る恐る指を伸ばした。

そっと触れた途端に嬉しそうに握られて、自分は心を打ち抜かれた。


 あああああ。めっちゃカワイイ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ