表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/106

29. どこのホストだ。

 ハルトマンをほっといて、老女の側に赴く。パーソナルスペースを十分に開けた間合いで静かに片膝をついた。


 ……どこのホストだ。


 和室だったら正座でいいのに。

畳じゃないから分らん。そもそもニガテなんだよ。慣れないこと。


 一呼吸おいて慎重に口を開いた。


「……初めまして。我々は、元は人間ですが死亡しているので、亡霊というか幽霊という存在になります」


 老女は穏やかな様子で口上を聞いてくれた。

目顔に促されて、そのまま名乗る。


「自分はナナシノ、双子の側にいるのが」


 自分を指した手を、そっとイリイチへ向けた。

琥珀色の瞳が真っ直ぐに老女を見た。気負いの無い立ち姿は、どこか洗練されている。


「ピョートル・イリイチという呼び名です」


 イリイチは目を伏せて会釈した。実直な動きに優美さがあった。

……さっきも思ったが、何気にスペック高いなイリイチ。後でコツをきこう。

 自分は老女に向き直り、威圧的にならないよう注意を払った。


「こちらには数時間前に参りましたが、用が終われば直ぐに戻ります。それまでどうぞ、よろしくお願いします」


 老女はふっくりと口唇を上げた。嬉しそうに。

居住まいを正し、やわらかく笑む。


「こちらこそ、初めまして。ご丁寧にありがとう。わたくしはエイレーネー。イーラと呼んで。貴方達とお知り合いになれて嬉しいわ」


 イーラが手を差し出した。

微妙な距離を自分の方から詰める。目を伏せてそっとその手を取り、銀の指輪に触れるだけの口付けをした。

半呼吸おいて、(すべ)らかに手が引き抜かれる。

自分は普通礼のまま元の位置まで下がり、一呼吸おいて静かに立ち上がった。


 そして、振り返ってビクリとした。

ハルトマンと双子と、イリイチまでが目を丸くして驚いていた。


 ……待て。

そんな目で見るな。

特にイリイチ。お前にそんな顔されると、ガチでヘコむ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ