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第十七話 決闘までの時間はどう過ごす?

窓から薄っすら漏れる朝の光に包まれて目を覚ます。

美稀を探すと、スヤスヤ隣で眠っていた。

あどけない寝顔を見て、もう少し寝かせてあげたいと思いつつ、時間を確認する。


もう遅刻は免れない時間になっていた。こんな時間までゆっくり寝たのなんて、どれくらいぶりだろうか…。

美稀に話した事で、安心してしまったのだろう。

情けない様な…嬉しい様な気恥ずかしさに悶えそうになってしまう。


学園は…今日はいいだろう。美稀が起きた時に仮に怒られてもいいから、今はこの可愛い寝顔を見ていよう。そう思って美稀を見つめながら暫く時間を過ごしていた。


眺めながら、1時間ぐらい経過しただろうか…。

美稀が軽く身じろぎをする…。起きるかもしれないな、そう思った矢先美稀の目が薄っすらと開く。


「おはよう美稀」


まだ美稀の瞳は焦点が合っておらず、ボンヤリしている。

軽く頬にキスをして、もう一度声をかける。


「おはよう美稀、朝だよ。今日は学園には行かないだろ?もう少し寝ておくか?」


「・・・・・・・・ふぇ?」


そう呟いた美稀の瞳が見開く。もしかして、学園へ行くつもりだったのだろうか?悪い事したな…起こした方が良かったみたいだ。

昨日のうちにちゃんと聞いておけば良かったと後悔しつつ、美稀に謝ろうと口を開く。


「美稀…悪かった。まさか学園に…」


「颯にしては、少しだけ気が利いた事したと思ったのに…何で詰めが甘いのよ‼︎」


「は?」


「『は?』じゃないわよ。あんた馬鹿じゃないの?おはようのチューは口にするって今時、ちびっ子ですから知ってる事実じゃない‼︎それが何ですか?ほっぺですか?べ、ほっぺでも実は嬉しかったとか思ってないからね。勘違いしないでよ‼︎」


美稀が勢いよく言ってくる。なんだかんだで嬉しかったんだな…。

でも、口にしないといけないのか。少し恥ずかしいが、俺も素直になるって決めたんだ。少しずつ前に進まないと…。決心が鈍らない様に急いで行動に移すとしよう。


「美稀…おはよう。三度目の正直って事で許してくれ」


そう言って、唇に軽く触れるくらいのキスをする。

美稀は…顔を赤くしながらもニヤニヤしてる。気持ち悪いと他の人には見えるかもだが、今の俺には可愛く見える。


「颯…お返しのチューするね♪おはよう‼︎」


そう言って、美稀の方からもキスしてくる。これは、嬉しいけど恥ずかしい。

今の俺は『かも』じゃなくて誰がみても気持ち悪い顔をしている、自覚はあるが我慢出来そうになかった。


「もう…そんなに拗ねないの。別に緋莉を無視してないってば!えっ?ムカつくからデレデレすんな…。いや、それは…ほら…。寝る前はオッケーしてくれたじゃん」


美稀…お前、今なんて言った。どうしてお前が緋莉の…妹の名前知ってるんだ?まさか…。


「美稀、お前…緋莉とコンタクト取れたのか?」


声がつい震えてしまう。自分で質問しておきながら…返答を聞くのが怖い。

俺は今も昔も弱虫のままなんだな、そんな風に思ってしまう。


「うん…寝る前までずっと一緒だったよ。私の頭の中で…詳しく説明した方がいいなら、するけど…。一応ガールズトークだから、あんまり聞かれたくはないな。でも颯が望むなら…え?ダメだって。緋莉は言うなって。そういう訳で詳しくってのは無理、言っておきながら…ごめん」


緋莉らしい…久々の緋莉を感じられて嬉しい反面、胸が締めつけれる。


「なあ、美稀…。緋莉は、俺を恨んでなかったか?それともこんな弱くて何も出来ない俺を憐れんでいたか?それとも、もう俺なんか…」


言い終わる前に…美稀から頬を叩かれる。


「颯…あんた何言ったのか分かっているの?緋莉に謝りなさい。あんた…そんな事ないよって…許しを欲していたの?それを得る為に、そんな下らない事の為に、あなたは緋莉を侮辱したの?緋莉がそんな子な訳ないでしょ‼︎私よりあんたの方がどんな子か分かっているでしょ‼︎…えっ⁉︎緋莉あんたは黙ってなさい‼︎お姉ちゃん、本気で怒ってるんだからね」


美稀の言葉にハッとする。俺、最低だな。美稀の言う通りだ…許して欲しかった…緋莉に優しい言葉をかけて欲しかっただけだ。

緋莉を貶める様な発言して…昨日美稀に甘えたら、もう甘えグセがついたのだろうか?本当に弱いな…。


「美稀の言う通りだ。すまない緋莉、俺が甘えていた。元気そうって言い方も少しおかしいが、変わってないみたいで、嬉しかったよ。お前と直接は話せないけど、お前がまだ近くにいる事が分かって嬉しいよ」


「最初からそう言えばいいのに…颯は駄目なお兄さんね。緋莉の方がよっぽどしっかりしてるわ。あ、そうそう…忘れてた。颯がね?前に緋莉は我儘で手がかかるみたいな事を言ってたわ。手がかかるのはお互い様のくせにね」


「美稀…お前‼︎余計な事を言うな」


「ね?否定じゃなくて、余計な事だからね…ギルティ!!」


「むぐっ……」


返す言葉がないな。美稀が言葉を続ける。


「颯、全てが終わったら…その時は緋莉に会えるはずだから。だから、絶対にやり遂げなさい」


美稀の真剣な表情。緋莉から何か言われたんだろうな…。


「美稀が言うならそうなんだろうな。分かってる、必ずやり遂げてみせる。美稀、すっごい頼れる女になったな、この数日で。俺も負けてられないな、頑張らないとな」


「颯…あんた私に言うことあるわよね?そもそも…あんたなんでそんなに態度デカイの?」


「はぁ…?お前何言ってるんだ?」


「へぇ〜。まだ惚けるんだ。あんたは私の一つ下って分かってるの?タメ口だったから、年上かと思ったけど…まさか年下とは思わなかったわ。それだけじゃないわよ?あんた10才の時に、怖いテレビ見て…」


「待て‼︎いや、待ってください‼︎美稀さん…年下って黙っていたのは…謝ります。だからその話だけは…許して下さい」


見た目は実年齢より上に見えるらしいのは知っていたから…年上っぽく演じていたのに…何故バレた。いやいや、考えるまでもない。しかも俺の黒歴史まで…緋莉、お前は昨夜美稀とどんな話をしていたんだ…頭が痛くなる。


「別に『さん』をつけて欲しいわけでも、タメ口で話さないで欲しいわけでもないから。とりあえず、今まで通りでいいわ。そういう事ではなく、あんまり調子に乗らない様に‼︎」


釘を刺された…年下の俺に急に甘えてくるのはどこの誰だよ?とか…思っても言えない。やり返されるのが目に見えてるし、緋莉がいるんじゃ俺に勝ち目なんて最初からない。


「分かった、気をつける…」


一言ぽつりと呟いて、ジト目を向けて…睨まれて…たじろぐ。

少しの反抗も許してもらえそうにない。


俺、まだ美稀にちゃんと好きだって言ってないよな?

今ならまだ引き返せるかも…そんな不謹慎な事を考えつつ、本気で検討しようと思った。


決闘まであと少し…。それまで美稀とこうして騒いでいるのが、なんだかんだ言って居心地が良かった。

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