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第十四話 真夜中の訪問者

美稀が風呂から上がってくる前にトイレを済ませる。

この事には触れないで欲しい、察して下さい…。


何食わぬ顔でリビングに居ると突然チャイムが鳴る…こんな時間に誰が何の用だろう…?

訝しく思いながら、モニターホンを確認する。女が2人…立っている。あれ…?片方の女…どっかで見た記憶があるけど…誰だったっけ?


えっ…?あれ…ルーンのトップの奴だ。なんで…ここに居るんだ…予想だにしない事にすぐに臨戦態勢に入る。どうやって…奇襲をかける?考えろ…落ち着いて考えろ…冷静に対処すれば二人相手でも…乗り切れるはずだ。

美稀はまだ風呂か?先に呼びにいかないとマズイよな…。

考える時間がもったいない。先ずは美稀だ、風呂場に行こ…


突然横から手が伸びる。咄嗟の事に飛び退く。

その手が…モニターホンの通話ボタンを…………押した‼︎はいっ⁉︎


「どちら様でしょうか〜?」


のんびりした声で美稀が応対する。


「こんばんは。あなたを殺しに来た者です…」


「・・・・・・・・・・」


美稀…絶句。お前…固まるぐらいなら勝手な事をすんなよ。


「美稀、ここにいるのはマズイ。とりあえず外に出る…」


「聞こえてるわよ。信じてもらえないだろうけど…今殺る気はないわ。話をしたいのだけど、入れてくれる?ここで騒ぎを起こして良いなら、こっちはそれでもいいけど…見ての通り武器は出してないわ。まぁ、モニターの死角に隠してるかもしれないけど」


こちらのやり取りはモニターホン越しに筒抜けだった。通話切るの忘れてた…俺もどうやら動揺しているらしい。

さて…どうするかな。美稀は相変わらず固まったままだな。このままでは、逃げるのも難しい。どちらにしても状況が最悪だ…こういう時は下手に動くべきではない。相手に従うのも癪ではあるが、言う通りにしよう。


「美稀…とりあえず出てみるから。もしもの時を考えて…いつでも動ける準備だけはしておけ。モニターホンを見てろ。不審な動きが見えたらすぐに逃げろ」


今度は向こうに聞こえない様に小声で話して…再度モニターホンに話しかける。


「とりあえず…今から向かうから待ってろ」


そう告げて外に出る。ドアを出て前を見ると…さっきモニターホンで見ていた女達が立っている。

注意しながら近づいて行くと…ルーンのトップの女が話しかけてくる。


「こんばんは、颯君」


「どういうつもりだ?」


「だから、新山美稀さんを殺しに…ね。とは言っても今日は果し合いのお誘いってところ。あなた、私の言葉を信じて出てきたんでしょ…本気で私達が二人で来たと思ったの?他に居るとは思わないの?」


その言葉にはっとして、家の方に振り返る。


「大丈夫よ…本当に二人で来たから。でも、あの子と離れたのは不用心ね…それと今、後ろを振り返ったのも。危機感がなさ過ぎるわね…あなた。本当にあの人の『息子』なの?」


女の言葉に怒りが込み上げてくる。


「ふざけるなっ!息子だと…?その言葉を次に言ったら今ここで殺るぞ…」


「あらあら…今度は怒りで我を忘れるわけ?」


女は、人を小馬鹿にした態度で笑っている。その態度に更に激昂しそうになったところで…


「とりあえず要件を伝えたいので、中に入れてもらえませんか?玄関先で大声出して良いのであればここで話しますけど…?」


「・・・・・・そうだな、とりあえず入れよ」


静観していたもう一人の女の言葉で冷静さを取り戻し、家の中に促す。


「邪魔するわね〜」「失礼します」


二人をリビングに通す。美稀は…モニターホンの前で突っ立っていた。


「美稀、とりあえず今日の時点ではこいつらに害はない」


許可したわけでもないのに、女達はソファーに座っている。


「立ち話もなんでしょ?あなた達も座ったら?」


ルーンの女が我が物顔で、勧めてくる。

こいつら…本当に何を考えてるんだ?冷静に…冷静に…自分に言い聞かせつつ、美稀と一緒にソファーに座る。


「やっと、話が出来るわね…とりあえず、私が話すから」


そう語る月の女は…色素の抜けたような銀髪ロング。サイドで作った三つ編みを後ろで纏めてあるハーフアップ。つり目なので少しだけきつい印象があるが端正な顔をしている。


もう一人の女は…金髪のショートカット。こちらは…顔立ちは良いのだが、無表情である。


「こちらだけで知っているってのもフェアじゃないからね…颯君は知っているだろうけど、一応自己紹介しておくわね。私が月のリーダーだった天音あまねよ。こっちの無愛想な子がみことよ。」


命は知らなかったとは言う必要ないから黙っておく。それより気になる事がある…


「だった…?」


「そうよ…私達…太陽も月もあの人に敗北したのよ…そっちでなんて言われてるかは知らないけど」


「・・・・・・・・」


「あら?その顔はどうやら知らなかったみたいね…どうでもいいことだから話を続けるわね。伝えたいことは二つ。先ずは颯君…あなたあの人の下につくつもりはないかしら?一応確認を取るように言われてるの。なかなか使い道があるって言ってたわよ?」


「ふざけるなっ!誰がそんな事に従うか。つまらない事言うなら、今ここでその口が利けない様にしてやろうか?」


「あらあら、あの人の予想通りね。何があったのか知らないけど…興味ないから別にいいわ。それじゃ次ね。新山美稀さん、あなたに恨みはないんだけど…消えて欲しいのよ。だから、悪いんだけど逆らわずに消えてくれないかしら?」


「お前…本当に死にたいらしいな…」


流石に我慢の限界だ。


「気高き…」


「颯…待って‼︎」


美稀に止められる。


「すいません、私まだまだやりたい事あるんで消えられないんです。それで…どうしたいんですか?果し合いのお誘いって言ってましたよね?颯を煽るのはやめて、要件を単刀直入に言ってもらえませんか?」


美稀がそう告げる。俺よりよっぽど…冷静だった。

すると、静観していた命が口を開く。


「天音は話が長い。新山美稀…あんたが生きてると困る人が居るから死んで。神谷颯…あんたどうせ邪魔するんでしょ?明日の夜23時…この近くの廃工場で決着つけましょう。分かってると思うけど…新山美稀は必ず連れて来なさい。ご両親…殺されたくないわよね?」


少しばかり腑に落ちない…一体何が目的なんだ?


「何が目的なんだ…ってところかしら?」


天音が呟く。考えていた事が読まれてドキッとする。俺…そんなに顔に出るのだろうか…。自覚なかったからショックだ。


「こないだのショッピングモールは…雨宮が指示して起きた事なの。こないだの雨宮の件もあいつが勝手に動いてるのよ。正直色々あって…本来は派手な行動はしたくないのよ…。だから、こうしてあなた達に接触したってわけ…。新山美稀さん、あなたと最悪その家族は殺っていいって言われてるわ。一番いいのは…あなたが消えるだけで、こちらの要望が通ればベストなの。あなたが消えて、葉山氏がこちらの要望に従わない様なら…次はあなたのご両親がターゲットになるわ。いづれにせよ、ここで私達を止めないといけないのよ。逃げようとしても無駄よ。どう…理解出来たかしら颯君?」


「天音…喋り過ぎ。もう黙れ」


無表情だった命が不機嫌を露わにして吐き捨てる様に呟く。感情がない…とかでは流石にないんだな。

ついついどうでもいい事を考えてしまった、少しだけ自己嫌悪。


「そうね、ごめんなさい。そういう事だから、明日の23時。逃げずに来るのよ」


最後にそう告げると、二人は出て行った。

美稀を見ると、流石に青ざめている。


「美稀…大丈夫だから。俺が何としてでもお前を守るし、ご両親にも手は出させない」


美稀をそっと抱きしめて、背中をさする。


「美稀、ベッドで横になろう。もう疲れたろ?こういう時はゆっくり寝るのが一番だからさ…」


そういって、美稀の手を引き先ずは玄関の鍵を締める。

そのあと…美稀の部屋へ行き、布団を剥ぐってベッドに促す。

美稀は…布団に…入らない。大丈夫だろうか?心配になって美稀の元に駆け寄ろうとしたら…


ゆっくりとパジャマを脱ぎ始める…本日は白のベビードール(シースルー仕立て)。こういう時でも、セクシーアピールは忘れないんだ。

少しだけ呆れたけど…それを見て興奮した俺に呆れる資格はないんだろうな…って、そんな事を思いながら美稀を優しく抱きしめるのであった…。


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