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時空法封呪  作者: 以龍 渚
少年時代編
7/13

ザンの記憶編その2「千里眼の賢者」

 所々につけた目印を頼りに、リュセイアたちは元の道まで戻ってきた。

「ようやく元の道に戻ってきたな」 カノンがそう言葉を漏らした。

「すみません、カノンさん。結局、無駄足をさせてしまったようで……」 申し訳なさそうに、ザンがカノンに謝る。

「いや、気にしなくていい。少なくともあの場所はお前にとって何かある場所だということはわかったんだ」

 カノンはザンが気を使わないようにそう言葉を返した。

「そうだ、気にするな、ザン。お前がなにかを思い出したら、またあの場所に行ってみればいいさ」

 そして、リュセイアもそう声をかけた。

「……ありがとな、リュセイア」 ザンがリュセイアに礼を言う。

 そして、カノンが気持ちを切り替えるためにか、手を叩き、声を上げた。

「よしっ。じゃ、賢者に会いに行くとするか」

「おやっさん、道はきちんと覚えているんだろうな?」

「ま、多分大丈夫だろ」 リュセイアの問いにカノンは、あいまいな答えを返していた。


 山に入ってから約四時間。三人の視線の先にようやく目的地と思われる、小さな小屋が見えてきた。

「あった、あそこだ。――どうだ、リュウ。ちゃんと道は合っていただろ?」

 カノンは得意げにリュセイアにそう言うが、リュセイアは呆れたような表情を浮かべている。

「よく言う。何度も同じ道を歩いたぞ、おやっさん?」

「ま、まぁ、無駄に歩いた分を除けば、本当に一、二時間でこられましたね?」 ザンがすかざずフォローを入れる。

「まぁ、いいじゃねぇか。今度はきちんと道も覚えたし、次からは迷わん」

 カノンは悪びれることなくそう言い放った。

「でも、カノンさん。連絡も約束もなしに訪れて大丈夫なんですか? もし、出かけていたりしたら――」

 ザンがそんな心配をしていると、小屋の方から男の声が聞こえてきた。

「その心配にはおよびませんよ」 小屋の扉が開き、一人の男が現れる。

 ――カノンが昔に世話になったと聞いていたので、かなり年配の人だと思っていたのだが、その男の姿は、カノンよりも若く、二十歳前後の歳に見える。

「さ、どうぞ皆さん中へ。用件は承知しております」


 小屋に入ると、男は机から椅子を引き腰かける。

「どうぞ、適当に腰をかけてください」

 と、リュセイアが小声でカノンに話しかける。

「本当にあれが賢者なのか? だとしたら、歳がおかしくないか?」

「正直、少し驚いている。……前に会ったときとちっとも姿が変わっていない」 カノンは少々驚いているようだった。

「それでは、そちらの方は私の目の前に座ってください」 そういって賢者はザンに目の前に来るように言う。

「? なんで用があるのが俺だとわかったんですか?」 まだザンは何も用件を言っていない。

「そういえば、俺たちがここに来た用件を承知しているとか言ってたな?」 リュセイアが割って入る。

「私には全てが見えているのです、――と、言っても半信半疑でしょう。ですから、用件だけ済ませましょう」

 そういって賢者は、机の上に水晶玉のようなものを置いた。

「これは再生の宝珠というものです。これを手に持ってて目をつむれば、その者の記憶を脳裏に映し出すという代物です」

「! じゃあ、ザンの記憶が戻るのか?」 リュセイアが賢者に詰め寄っていく。

「残念ながらこれには記憶を取り戻す機能は備えておりません。……以前、失った記憶を取り戻した方がその事実に衝撃を受け精神を破壊していまうということがありましてね。これは記憶を見るだけのモノにしてあるのです」

「だったら、アンタは別に記憶を取り戻す道具を持っているってことなのか? なら、それを――」

「やめろ、リュウ」 声を荒げるリュセイアをカノンが止める。

「すみませんが、何を言われようと今私がしてあげられるのは記憶を見せるだけです。――もう、壊れいく人々はみたくありませんから」

 賢者はこれ以上は譲歩する気はないと告げた。カノンは――

「ザン、お前はどうしたい? ……失った記憶を見るだけでも見てみるか?」

「――お願いします」 ザンはカノンの問いにうなづいた。

「では、残りのお二人はお帰り願えますか? ・・・・・・残りたければ残っていただいてもかまいませんが、夜を徹することになりますよ?」

「そんなに時間がかかるのか?」 予想外の返答にカノンが問い返す。

「わかりやすく言えば、彼はこれから眠りについて夢を見ることになります。その中で失われた記憶を再生します」

「つまり、俺たちがここにいても何も出来ることはないと」 リュセイアも賢者に問いかける。

「すみませんね、お二人の分の寝具までは用意できないんですよ」

「そうか、わかった。――リュウ、俺たちは麓で宿を取ろう。ザン、それでいいか?」

「わかりました。せれでお願いします、カノンさん」

「では、お二人は明日の昼前にもう一度ここを訪ねてください。それまでには終わっているでしょう」

 リュセイアとカノンは賢者の小屋を後にする。

「……本当に大丈夫なのか、おやっさん? 俺たちも残って様子を見たほうが――」

「いや、それで賢者の邪魔になったら立場がない。今は賢者に任せよう」

「なあ、おやっさん? ――もし、ザンが記憶を取り戻して、どこかに行かなくちゃならないって言い出したらどうするのさ?」

「その時は笑顔で見送るさ。――ただ、一度島には帰らせる。村の者に黙ってさよならってのはさせないさ」


 リュセイアとカノンが麓に戻ってきた頃には、空は赤く色づき始めていた。

「じゃあ、宿の手配に行って来るが、リュウ、お前はどうする?」

「そうだな……。なぁ、おやっさん。少し町をぶらついても来ていいか?」

「……ま、いいだろう。宿の場所はわかるな? 完全に暗くなる前には宿にこいよ」

 そういい残して、カノンは宿のある方に向かっていった。

「……そういえば、ザンがやってきてからは初めてかもな。ザンのいない夜を過ごすことになるのは」

 不思議な感傷に浸りながら、リュセイアは当てもなく町をうろついていく。

「――すみません」 と、リュセイアの背後から声がかかった。

「?」 リュセイアが振り返ると、そこには一人の少年がいた。

 外見はリュセイアより少し下――アイカと同じ位の歳だろうか? 歳のわりには落ち着いた感じがある少年だった。

「何の用だ?」

「あなたは、アドベントの方ですか?」

「……いや、まだアドベントではない」 少年に悪気はないだろうが、リュセイアは少し複雑な気持ちになった。

「まだってことは、アドベントの見習いの方なのですね?」

「……まあ、そうなるな」 だんだんと不機嫌になっていくリュセイア。

「あなたにお願いがあります! 私に、力を貸してください」


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