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2.

それから、数日後

私は、チェーン展開している居酒屋にいる


「全員集まったことを祝して!乾杯っ!」

かちーんっ、ごちーんと、ビールジョッキが、合わせられる

くじ引きの席の周りにいる人たちと、グラスを合わせた


にぎやかな、話の中、相槌を打って

酔わない程度に、飲んで食べようと思っていたら


「やっときたぁー、もぅ待ってたんだよぉ」

と、元友人たちが登場

周りの人たちは、どうぞ、どうぞ、と席を譲り

私はあっと言う間に、携帯もメールアドレスも知らない

旧友たちに囲まれた


もう、ため息をつくしかない・・・そんな状況だった


彼女たちは、学生時代と変わらず

自分たち主体の話で盛り上がり、協調し

せめぎ合い、そして笑いあう

そう、ここまではいい


「くみー、飲み物ないじゃん、頼もうよ」

きゃはははっと笑い声をあげて、

リーダー格のくみ子にすりよりするのは、いつも友里

「あ、ほんとだ、何のもぅ、メニューみせてよー」

そう言って私に目を向けた

メニューは、くみ子の後ろにもある

だけど、私の隣にあるのがほしいらしい

「はい、どうぞ」

そう言って渡すと、くみ子は、沙希もないじゃん、頼みなよと

私にメニューを返してきた


そして、自分の後ろにあるメニューを取る

そう、これでゴングは鳴らされた

次の話題は、私

田中たなか 沙希さきとテロップが出た



「お待たせしましたー、カシスオレンジの方ー」

あたしーと、手を出して、ひょいひょいと

カクテル系のお酒が、目の前を飛び交う

「ウィスキーの方は」

「あ、私です」

そうして受け取ると、ウィスキーとか、ないよねーと

笑われる

はいはい、その為、私に選ばせて

その後、みんなでカクテル系選んだんだよね


さっきまで、ハイボール飲んでたのは、誰でしょうね

と、内心毒づくけど、何も言わない

だって、何を言ったとしても気に入るわけない


仕事は、結婚は、恋人は

テンプレ通りの質問に

仕事は順調、結婚してない、恋人、今はいない


「えー、ないないー」

と大きな叫び声をあげて、一瞬場がこちらに注視した


「沙希ー、男知らないのぉー?」

誰もそんなこと言ってない、今恋人がいなく、結婚してないだけだ


「え、田中さんって、処女なんですかー」

いつの間にかにいた男が、にやにやした顔で突っ込んでくる

もう、完全なる酔っ払い

酔うと下に走る率って高くなるよね


「さぁね」

私は明言を避ける、何をいっても、気に入らないんだから

「おれ、破ってあげましょーか」

さらに隣の男が言う


「沙希、お願いしたらー、上手いかもよー」

悪乗りした旧友たちがはやし立てる

「そーそー、上手いっすよー」

あははは、と爆笑している


「じゃぁ、試してきてー、その後考えるわー」

と、火に油を注いでみた

さて、炎上してくれるかしら


「あ、いいですねー、今夜どうですかー」

男は気付いてない、いつもの調子で答える


「あははは、何いっちゃってんのー」

旧友は、軽くたしなめる

あたし結婚してるしー

はい、抜きました、伝家の宝刀


だぁりんとらぶらぶだから、浮気できないしー

だからね、結婚も恋人もいない

沙希がいいと思うよ


あたしたちったら、キューピット


なんて、浮かれ騒いでる


うん、見事な反応

学生時代となんら変わりない

男の方は、真に受けて、まずは体の相性からだよねぇ

優しくするからねぇ

なんて、笑ってる


手なんで握らなくていいです

はいはい、酔っ払い

明日になったら、馬鹿話にしましょうね


「あ、はいはいー

 ごめんね、みんな」


そう言って、男と私の間に割り込んできたのは、

学生時代と変わらず

女の子たちにきゃぁきゃぁ、囲まれた男子

クラス委員長を務めた古閑こがさん


「何ーこがっちー

 びっくりするじゃないのぉ~」

くすくす笑いながら、学生時代のあだ名で

くみ子は、色目を使う

そりゃぁ、憧れの人だもんね


私の話題の前には、やっぱり彼のこと話題にしてた

一流企業にお勤めで、出世頭で

×1だけど、彼女もいない、私も×1だしちょうどいいよね

今夜がんばろうかしら


とか、言ってましたもんね


だから、古閑さん、向こうで、がんばってください

くみ子が、隣あけて待ってますよ

わざわざ壁側に割り込んでこないでください

狭いです


「何だよぉ、古閑ぁ

 田中さんの処女ねらいかー?」

そう言って古閑さんを押しのけて、隣に座ろうとする男

うん、完全なる野獣

もう、今夜やっちゃいます、絶対食いますモード

欲望に満ち溢れたその目は嫌いじゃない



それに身を任せられたのは、20代までですよ

で、やり逃げポイ捨て、都合のいい相手

つい、激流に身を任せて

はい、おしまい


まぁ、それなりに気持ち良かったし、

特定の相手がほしかったわけじゃない

季節のイベントに誰かがいたら、よかったのかもしれない

だから、私も同罪


そういうと、今の友人たちは、

苦笑して、理屈詰めで納得しないでよ

男運が悪いし、それにのっかるあんたも悪い

と、でこぴんされたのは、いい思い出

あれは、痛かった


「ちょっとぉっ」

ぱしっんっとくみ子が机をたたく

「どういうつもりなのっ」


半泣き顔だけど、その後ろの炎は嫉妬に満ち溢れた


ああ、駄目だ、酔ってる

現状放棄して、記憶の波にたゆたってたわ


「沙希、ひどくない、それ・・・」

ん?何がですか・・・


私は、現状を把握する

私の左にはさっきの男

うんうん、変わってないない


ただ、座り心地が悪い

狭い


そう思って振り返ると、

古閑さんがにっこり、と笑っていた


はぁぁぁぁ?!

何それ、どういうこと


確かに、どういうつもりなんですか

人のざぶとんになるとは

人間座布団、

天下の古閑様に、そんなどMな趣味があったとは知りませんでしたよ

後1話です

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