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キュラ・ドーラの埋葬

 結局、キュラの墓には本人が愛用していたパイプと花を入れた。花は庭にたくさん咲いていたので、それをテイラーとコニーがつんできて、遺体の上に供えた。


 「杖とか帽子はいいのか?」


 俺はテイラーに聞いた。テイラーは先ほどまで自分の部屋で手紙を読みながら泣いていたはずなのだが、呼びに行くと、意外なほどケロッとしていた。むしろニコニコと機嫌良さそうに笑っている。


 「いや、いい。杖と帽子はテイラーがもらう。キュラが大事にしていたものは、テイラーが使う」


 歪んだ顔をさらに歪めて、微笑んだ。


 キュラの手紙を読んで、ずっとテイラーに覚えていた違和感が、なんだかわかった。テイラーはいつも自分のことを、まるで別の人物が見ているように話すのだ。例えば食事をしている時、食べている間は普通に「美味い」と言っているが、終わった後に感想を聞くと「テイラーは美味しいと思っている」と、別の人がテイラーの感じていることを伝えているように話すのだ。キュラの手紙の通りなら、その別の人こそ、本当のテイラーだ。


 「その代わり、花をいっぱい入れる。キュラは花も好きだったから」


 テイラーは穴の底に横たえたキュラの遺体を、花で飾った。珍しくコニーが黙々とそれを手伝っている。こういう体力がいらない仕事は、できるらしい。でも、こいつのことだ。そのうち誤ってキュラの遺体を踏むぞ。


 「コニー、キュラを踏むなよ。踏んだら昼飯抜きだからな」


 先に言っておいた。コニーは穴の底から振り向いて、俺をにらむ。


 「踏むわけねえだろ。失礼なことを言うな!」


 文句を垂れながらも、足元を気にし始めた。よしよし、それでいい。


 「よし、じゃあ、最後のお別れだ」


 そう言った後、テイラーは長いことキュラの遺体のそばにいた。シーツに包まれた頭を抱えて、キスをして、長い間、何か話しかけていた。


 「テイラー、もういいか?」


 寒くなってきたので、声をかける。本人が気の済むまで別れを惜しませてやりたいのは山々だが、この調子だと日が沈むまで墓穴から出てこなさそうだ。申し訳なさを感じながらも、小さな背中に呼びかけた。テイラーは立ち上がると、名残惜しそうに何度も振り返りながら、墓穴から出てきた。


 「よし、じゃあ、ハーディー。頼むよ」


 ハーディーはうなずくと、スコップを使って土を入れ始めた。その隣で俺は見よう見まねで葬送の言葉を唱える。


 「清き魂よ、母なる女神の懐に抱かれ、高き天に昇りたまえ。苦しみより解放され、安らかなる眠りがあなたを包みますように……」


 こんなんだったっけ? こんなこともやることになるのなら、もっと熱心に教会で司祭さんたちがやっていることを見ておくんだった。まあ、いいか。何もないより、マシだろう。視線を感じて横目で見てみると、コニーが何か言いたげに俺を見ていた。冷やかしの一つでも言いたそうな雰囲気だ。こんな付け焼き刃のお祈りなんだ、無理もない。俺だってツッコむ。


 ザッ、ザッと音がするたびにキュラの上に黒い土がかぶさっていく。姿が少しずつ見えなくなっていく。俺の隣で、コニーの野郎はひざまずいて祈りを捧げ始めた。殊勝じゃないか。昼飯を食わせてやろう。


 「キュラ、ありがとうね」


 キュラの姿が完全に見えなくなる直前、テイラーはポツリとつぶやいた。それまで涙を見せずにじっと遺体が埋まっていくのを見ていたが、堪えきれなくなったのか、ブワッと涙があふれてきた。


 「キュラ、キュラ……。本当に、ありがとう……。うっ、うっ……」


 テイラーは肩を震わせて、ボロボロと泣き出した。思わずハーディーが手を止める。俺はハーディーを目で制すると、テイラーの肩を抱いた。


 「大丈夫だ、テイラー。キュラはいつもお前の心の中にいる。いつだって会えるさ」


 そんな言葉しか、かけてやれなかった。テイラーは俺の胸に顔を埋めて、いつまでも泣いていた。


 昼飯は、干し魚を叩いて、水を少し加えてペーストにしたものを、パンで挟んだサンドウィッチを作った。香草を利かせて、朝食とは味付けの目先を変える。だが、基本的に塩味なのは変わりない。もっと調味料がほしい。コニーにも食わせてやった。ようやくメシにありつけて、何か嫌味の一つでも言うのかなと思っていたが、目こそらんらんと輝かせていたものの、特に余計なことを言うこともなく、ペロリと平らげた。テイラーが残したサンドウィッチまで、食べてしまった。


 食欲がなくなるのも仕方がない。大切な人とお別れした直後なのだ。メシを食う気にもなれないだろう。だが、冒険者としてやっていくなら、こんな時でも食えるようにならないといけない。


 キッチンの窓から、キュラのお墓が見える。土を盛って、近くの山から平たい岩を運んできて、その上に乗せた。ハーディーがキャリバンを器用に使って『キュラ・ドーラ ここに眠る』と掘り込んでくれた。テイラーは食事を終えたあと、窓のそばに椅子を持ってきて、ずっとキュラのお墓を見ていた。


 ここでもう一泊していくか。テイラーが俺たちと一緒に行くか、ここに残るか、気持ちの整理をするには最低でもそれくらいの時間が必要だろう。だけど、俺はそろそろ出発したかった。タイタンには急げと言われている。悠長に構えていられる旅ではなかった。


 ヘイシュリグまではここから馬車で2日間半ほどかかる。フェンネルで買い出しをすることを考えれば、余裕で3日は必要だ。テイラーが全く身動きしないので、俺はハーディーに留守を頼んで、コンティニュアスを連れてフェンネルの街に買い出しに出かけることにした。

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