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乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、公式カプ(ヒロイン×王子)を全力で推しますわ!  作者: 朝月夜


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13.「学園最強対決」

 今回は、セレスティン視点と、今回から初登場となるタチキさん?視点でお送りします。

「学園の校庭――

 静寂を切り裂くように、二人の男が対峙する……」


「一方は――

 鍛え抜かれた鋼の肉体。

 積み重ねた鍛錬は嘘をつかず、拳は語り、その大きな背中が実力を証明する。

 入学から、わずか一か月。

 その存在は瞬く間に学園中へと知れ渡り、

 気づけば――騎士団部のエース。

 戦闘力は――学園最強といっても過言ではない。

 力でねじ伏せ、敵は正面から叩き潰す。

 “俺の前に立てるなら立ってみろ!”

 そう言わんばかりに、彼はどっしりと構える。

 彼はいつだって逃げも隠れもしない。守ると決めたその瞬間から、

 どんな強固な城よりも頼もしい、鉄壁の守護神となる男。

 その名は――アレクシ・ルフェーヴル!!」


「そして、もう一方は――

 磨き上げた魔法の達人。

 表舞台には立たず、歓声も、喝采も、彼のもとには集まらない。

 だが、魔法の才は間違いなく、生徒の中で群を抜き、その実力は、いまだ未知数。 

 “能あるたかは爪を隠すものだ! そしてその爪を見せるときが来た!”

 そう言わんばかりにアレクシの前に彼は立つ。

 知る人のみぞ知るもう一人の学園最強。

 “裏番長”。

 “ダークホース”。

 巷でそう呼ばれてきた男の、その未知数のベールが――ついに剥がされる!

 その名は――シュル・トゥレット!!」


「肉体か魔法か。

 正面突破か完全制圧か。

 剛か柔が 

 今――学園最強の座を懸けた戦いが始まろうとしている!!」


「……あの……さっきから何を熱く語っているのですか? タチキさんですかあなたは?」

 私――セレスティンが三階の廊下を歩いていると、サングラスをかけた、どう見ても生徒とは思えない大人びた男性が、校庭に向かって、全力で煽り散らかしていた。


 すると、そのサングラスの男性がこちらを振り返り――


「申し遅れました。私は、アレクシが所属する騎士団部の部長――タチキ・プライドと申します」

「……いや、本当にタチキさんだったんかい!」

 思わず、私は盛大にツッコミを入れていた。


「……おいおい、これってまずい状況じゃねぇか?」

 タチキさんの隣から、聞き覚えのある声がする。

 背の高いタチキさんのせいで前が見えにくいが、あの銀髪は――


「フェラン!? あなたもここにいたの?」

「その声は――義姉ねぇさん!?」


 偶然にも、フェランがそこにいた。

 どうやら彼も、タチキさんと同じく校庭を眺めていたらしい。

 二人はいったい、何を見ているのか。

 そういえば、先ほどから聞こえてくる名前――アレクシ、そしてシュル。

 嫌な予感を覚えながら、私も校庭を見下ろす。


「……アレクシと、シュル!?」

 そこには、少し離れた距離から睨み合うように向かい合う二人の姿があった。

 雰囲気からして、ただ事ではない。

 今にも決闘が始まりそうな、張り詰めた空気。


(アレクシとシュルが……喧嘩!? こんなイベント、正史ゲームにはなかったはず……)

 またしても、私の知らない『ププライ』が目の前で展開され、困惑が胸に広がる。


「……喧嘩か。理由は知らねぇが、それ以上に意味わからねぇのは、なんで、誰も止めようとしねぇんだ?」

「たしかに……! なんで、誰も止めようとしないのよ!」


 フェランの言葉に、ハッとする。

 言われてみれば、この廊下にも、校庭の周囲にも、生徒や先生はいくらでもいるというのに、誰一人として二人を止めようとはしていない。

 それどころか――

 今にも始まる戦いを、期待するように見守っている。


「それは簡単だ……誰も、止めたくないからだ」

 タチキさんはサングラスをクイッと押し上げ、淡々と語る。


「アレクシとシュル……我が学園の歴史においても、これほどの逸材が同学年に揃うことなど奇跡に等しい。

 たとえ戦う理由が喧嘩であったとしても――

 どちらが強いのか、この目で見られるのなら……止めたいと思わないのも、無理はないだろう」

「冗談じゃねぇぞ! シュルの奴何考えてんだ! こんな人前で大喧嘩して、その後、友人の兄さんにまで迷惑をかけるってのがわからないのか?」

「シュルもシュルだけど、アレクシの方がどうかしているわよ! もし、シュルに怪我なんて負わせたら……部活の試合なんて出れなくなるだろうし、最悪、退部や退学だって考えられる……まったく、あのゴリラ何考えてんのよ!」


 そして、私とフェランは目を合わせて――


「「二人の喧嘩を止め『るぞ!』『ましょう!』」


 偶然にもフェランと一見が一致した。

 普段はいけ好かないフェランですが、今この場で、二人の喧嘩を止めたいのは同じ。

 そして、私とフェランは、急いで校庭へ向かい、階段を駆け下りた。


 ***


 騎士団部の部長――この私、タチキ・プライドは、セレスティンとフェランが去った後も、変わらず三階の廊下から、彼らの戦いを見下ろしている。

 ここから先は、このタチキが、二人の戦いを解説しよう。


「準備はいいか?」

 ストレッチをしながらそう問うアレクシに対し、シュルは微動だにせず、短く答える。

「……いつでもどうぞ」


 それが二人のゴングの合図となった。

 猛ダッシュで距離を詰めるアレクシ。対するシュルはその場で地面へ拳を叩きつけ、呪文を唱える。


土人形ゴーレム

 ――ゴゴゴゴゴゴ

 高さ三メートルはあろうかという、土でできた巨人が三体。

 アレクシの行く手を塞ぐように、地面からせり上がる。


 だが――

 アレクシは表情一つ変えることなく、帯刀していた木刀を振るった。

 ――ズバッ! ズバッ! ズバッ!

 一閃、三連。

 三体のゴーレムは、まるで藁人形のようになぎ倒される。

 流石は騎士団部最強の男。その太刀筋に一切の無駄はない。


「このままいくぞ!」

「……まだまだ」

 シュルは即座に次の魔法を発動する。


旋風トルネード!」

 ――轟ッ!!

 シュルの手から放たれたのは、風速にして四〇〇キロを超えるであろう、凶悪な竜巻。

 家屋に直撃すれば、木端微塵は免れない。そんな破壊的な突風が、獲物を捕食するかのように、アレクシへと喰らいつく。


 だが――


「ハハハハハ! この程度の逆風がなんだ!」

 暴風の中から、アレクシの哄笑こうしょうが高らかに響く。


「こんなもの、訓練でウエイトベストを着けて行う加重走の坂道の方が、よっぽどキツいわ!」

 なんとアレクシは竜巻を真正面から受け止め、地面を踏み砕きながら、シュルへ突進してくる。


「!!?」

 目前まで迫る巨体に、シュルの表情は明らかな動揺を浮かべていた。


「そこだ!」

 木刀が、シュルを捉え――


「……くっ! 旋風トルネード!」

 シュルは自らの足元へ魔法を放ち、その反動で大きく跳躍。

 アレクシの一撃は、空を切る。


 ――ガバンッ!!

 だが、それは決して“ただの空振り”ではなかった。

 振り抜かれた一撃の先、前方の地面は扇状に大きく抉れ、土砂が激しく舞い上がる。

 シュルの魔法に勝るとも劣らない、圧倒的な破壊力。

 耐久力ではアレクシに圧倒的に劣るであろうシュルにとって、この一撃の直撃は――即ち、命取りに等しい。

 だからこそ、シュルは宙に身を置いたまま、新たな魔法の発動の準備をする。

 対するアレクシは、その場にある校庭の土を握りしめ――


落雷サンダーボルト

「なんの! 全力投球!!」


 ――ゴオオオオオオッ!!

 雷の魔法と、魔力を纏った土の投擲が正面衝突し、激しくせめぎ合った末、相殺される。

 やがて、シュルが地面に着地する。


「ただの投球で、僕の魔法を防ぐなんて……」

「流石だ……シュル。君は、多種多様な魔法を高レベルで使いこなす

 対する俺が自信がある魔法は己の身体能力を強化する肉体強化系魔法の一点のみ」

「……いや、生半可な魔法で来られるより一点突破で来られる方が僕にとっては怖いよ……」


 互いの実力を認め合い、称賛の言葉を交わすアレクシとシュル。


「だから……そろそろ本気出そうと思う……」

 そう言うなり、シュルは怪しげな“緑色の液体”が入った試験管を取り出した。


「……俺もだ……」

 その変化を察したアレクシは、上着の運動着を脱ぎ捨てる。

 露わになった全身には――

 “無数のギブス”。

 それを外すと、ドサッ、という鈍い音とともに地面へ落ち、鍛え抜かれた肉体が、惜しげもなく姿を現した。


「……うほ♡ 相変わらずいい男」

 おっと。しまった。騎士団部の部長として、そして一人の男として――思わず本音が漏れ出てしまった。


「これで重りを外した……スピードもパワーも今までの倍以上出せるぞ」


 対するシュルも、試験管に詰められた緑の液体を、ゴクゴクと一気に飲み干す。


「……僕も、厚生労働省が認可している範囲での魔力増強剤ドーピングを使わせてもらった。

 これで僕の魔法も一段階、は跳ね上がる」


 そう。

 ここまでの戦いは、ただの準備運動に過ぎなかった。

 真の戦いはここからだったのだ。


 ***


 私とフェランが、二人の戦いを止めようと校庭へ駆け込んだ頃、ようやく人混みを抜け、現場にたどり着いた。

 そこに広がっていたのは――アレクシがギブスを外し、シュルへ向かって走り出そうとする姿と、シュルが迎え撃つように魔法を発動しようとする、まさに一触即発の場面だった。


「「やめ『ろ』『なさい』――っ!」」

 気づけば、私とフェランは同時に大声で二人へ呼びかけていた。


「……セレスティン?」

「……フェラン君?」


 アレクシとシュルも、ようやく私たちの存在に気づいた。

 そして、阿吽の呼吸で――

 私がアレクシを、フェランがシュルを押し、それぞれの距離を引き離した。

 まるでレフェリーストップをかけるかのように。


「セ、セレスティン? ……いきなり何を?」

「……そうだよ。フェラン君も、そんな血相変えて……」

「いきなり何を、じゃねぇだろう? 何やってんだお前らぁ!!」

「……シュルの言う通りよ!

 それに、これ以上バトルなんてしたら、世界観とかジャンルとか……色々壊れちゃうでしょうが!」

「「「世界観? ジャンル?」」」


 しまった。つい口が滑ったせいで、フェラン、アレクシ、シュルの三人が揃って首を傾げている。

 ――この場は誤魔化さないと。


「……とりあえず、喧嘩は良くないって言っているの! アレクシもシュルどうして、こんな大喧嘩なんて真似を――」

「「大喧嘩?」」

 すると、アレクシとシュルはまたもや首を傾げた。

 二人の様子からして、とぼけているというより……本当に、私の言っている意味が分かっていないようだった。


「お前らがさっきまでやってた“あれ”に決まってるだろ! あれを喧嘩と呼ばずに、何だって言うんだよ!!」

「……うん? もしかして、さっきの特訓のことか?」

「「特訓?」」

 今度は、私とフェランが首を傾げる番だった。


「ああ、次回の試合相手が、魔法による戦闘を得意とするタイプと聞いてな。

 騎士団部は、俺含めて肉体をメインに魔法はあくまで補助で戦うことが多い。

 だから――魔法使いとして優秀なシュルに練習相手をお願いしたんだ。

 シュルなら“戦闘力”も申し分ないだろうしな」


(なに……戦闘力って? 乙女ゲームで、滅多に聞かない単語なんですけど!?)

 あまりにも自然にその単語を使われ、私は心の中で盛大にツッコむ。


 さらに、シュルが続けた。

「……うん。それに前々からポルナレフ先生に校庭を使う許可も取ってあるしね。

 先生たちも、これが喧嘩じゃなくて特訓の一環だって分かってるはずだけど……」

「「………………………………………………………………………………………」」


 しばしの沈黙。


「「な~~ん~~だ~~!! それなら、先に言『え』『って』よ~~~!!」」

 あまりにも拍子抜けな真相に、私とフェランは声を揃えて叫んだ。

 喧嘩だと聞いたから慌てて止めに来たというのに――どうやら、完全な取り越し苦労だったらしい。


「……どうする? アレクシ君? 気を取り直して、特訓の続きをする?」

 フェランがそう提案すると――


「……いや、充分だ。これ以上やれば、お互い怪我をするかもしれない。今日は、ここまでにしておこう」

 アレクシはそう言って首を振った。


 すると――


「……残念。君になら、僕の本気をぶつけてもいいと思ったのに……」

 意外にも、シュルの方が名残惜しそうな態度を見せる。


(……あれ? シュルってこんな好戦的なキャラだっけ?)

 私の中のシュルのキャラと一致しなかった。まさか、彼にこんな一面があったなんて。


「……むっ? そうか……シュルがそう言うなら、もう少しり合うか!」

「……うん。望むところ」


 二人はそう言うと、再び距離を取り、向き合った。

 心なしか、どちらも楽しそうな笑みを浮かべている。


「……どうする? 止める義姉ねぇさん?」

 フェランが、さっきまでとは打って変わって、面倒くさそうに私へ尋ねる。


「はぁ~~……私はパス。なんだか、馬鹿らしくなってきちゃったし……授業に戻るわ」

「同感だ。喧嘩じゃねぇなら、もう好きにやってくれって感じだ……」

「アレクシ! シュル! 特訓もいいが、やり過ぎるなよ――っ!」


 フェランが最後に忠告するが、二人はすっかり自分たちの世界に入っている様子だった。

 聞いているかどうかは分からない。それでも、私とフェランは、揃って踵を返す。


炎天ファイア・ブラスト!」

「なんの! ジャンヌダルク式剣術――殉国一閃!!」


 背後から、魔法オタクとゴリラが必殺技を掛け合う声が聞こえてくるが――

 私とフェランは特に気にすることなく、その場を後にするのでした。


 騎士団部部長のタチキさんは、CVに立〇文彦様をイメージしながら執筆しました。

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