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乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、公式カプ(ヒロイン×王子)を全力で推しますわ!  作者: 朝月夜


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11/12

10.「学園舞踏会」 前半

 金曜日に投稿予定でしたが、諸事情により土曜日の投稿となりました。お待たせしてしまい、申し訳ありません。

 入学式から一ヶ月ほど経ちました。

 エリナ様の故郷へ風邪薬を届けたあと、今度は私自身が見事に風邪をひいてしまい、

 ――せっかくですもの。推しからの風邪ならとことん味わってやろうと思いまして、一週間ほど学園をお休みしました。

 そして風邪もすっかり治り、久しぶりの学園生活に復帰した本日。

 学園の掲示板の前で、私の目に突きつけられたのは――


「……夜の学園舞踏会?」


 生徒会主催、学期初めの慰労と交流を目的とした、小規模ながらも正式な舞踏会。

 招待されるのは主に、生徒会関係者や成績優秀者、特別な功績を上げた生徒たち。そして――いわゆる身分の高い生徒も。

 ……ええ。

 つまり、公爵令嬢である私も、当然のように参加資格に含まれている、というわけですわね。


(それにしても……入学一ヶ月で舞踏会だなんて……少し早すぎませんこと?)


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() こういう舞踏会イベントは、春の卒業式や秋の文化祭あたりに入れるのが定番ではなくて?

 などと、掲示板を見つめながら考えておりました。

 まあ、ツッコミも野暮というもの、この辺で勘弁して差し上げましょう。


(……ああ、そういえば、学園舞踏会と言えば――)


 この舞踏会は、正史ゲームでも重要なイベントのひとつです。

 どのルートにとって重要かといえば……なんと、あの待望のエリナ様×レオナール様ルート!

 フェランの登場回であった魔力制御演習の授業をはじめ、学園内の数々のミニゲームでプレイヤーが見事に高得点を取り続けると、エリナ様は成績優秀者枠として、この舞踏会への招待を受けるのです。

 そこでおなじみ、二択による分岐イベント。


【参加する】


 or


【参加しない】


 もちろん、【参加する】を選べばエリナ様×レオナール様ルートへと大きく舵が切られる。

 そういう流れです。

 しかし、正史ゲームはそう簡単には進みません。

 この舞踏会に参加するのは、レオナール様とエリナ様だけではなく――あの悪名高い畜生娘にして、悪役令嬢セレスティン(つまり私)まで登場し、レオナール様とエリナ様の恋愛フラグをかき乱すという、お約束のひと悶着が待っているのですが……。


(当然、私は正史ゲームと違って、二人のイベントを邪魔しませんわ!

 いえ、逆に――二人がよりくっつきやすいよう、全力で支援する立場として振る舞いますとも!)


 そう決意しながら、今夜の舞踏会に思いを馳せ、ニヤニヤと笑みを浮かべつつ、掲示板を見つめていたのでした。


「……セレスティン様?」

(えへへ♡ ついに……ついにエリナ様とレオナール様ルートに進めるときが……

 二人は今宵、舞踏会で結ばれるの。シンデレラのように。しかも私の目の前で……)


「あのう……セレスティン嬢?」

(悪役令嬢セレスティンに転生して十五年。前世の記憶を取り戻して七年……長かった。このルートに進めるまでが……)


「私の声が聞こえていますでしょうか?」

(いや油断できないわ! むしろ、ここからが正念場! ここで私がミスしないように――)


「セレスティン嬢!」

「きゃ!」


 突然、耳元で嬌声カワボが響く。

 声の方へ振り向くと、エリナ様と目が合った。

 アクアマリンのように透き通った瞳が、私をじっと見つめる。


「な、なな……エ、エリナ様!? ど、どうしてこ、ここにぃ……?」

(もしかして、舞踏会で妄想していた私の顔が見られましたでしょうか?)


 私はさっきまでニヤニヤしていた顔がエリナ様に見られたかと思うと、身体中がじゅわっと熱くなる。


「あれ? 顔というより全身赤くなっていますが……もしやまだ風邪が――」

「い、いえ! 風邪は問題なく治っておりまして!!?」


 私は慌てて取り繕いました。


「それと……先ほどから、何を見ていらしたのですか?」


 エリナ様が、私が掲示板を見ていたことを話題に出す。

 その瞬間、ひらめきました。


(そうだ。この舞踏会の件に話を持っていけば――)


 私はさっそく、掲示板を指し示します。


「あ、あの……こちらをご覧になりました? 今夜の学園舞踏会について……」


 エリナ様は一瞬きょとんとしたあと、私の指先の先へと視線を向け、掲示板を見つめました。


「舞踏会……ですか?」

(来ましたわ……!)

「ええ! 今夜、私この舞踏会に参加しようと思っているのですが、せっかくなら、エリナ様もご一緒にいかがでしょう?

 エリナ様にも、案内が届いているはずですわ」


 努力家のエリナ様なら、成績優秀者枠として招待されていて当然です。


「……はい。そういえば、そのような案内状が届いていたような気が……」

「でしょう! 是非、エリナ様も参加しましょう♪ ねぇ、ねぇ」


 するとエリナ様は顎に手を当て、少し考え込んだあと――


「……そうですね。セレスティン様のお誘いなら、受けましょう!」


 そう言って、にこりと微笑んでくださいました。


(よし!)


 私は内心ガッツポーズを決め、今夜の舞踏会に向けて、密かに計画を立て始めるのでした。


 そして放課後。

 授業を終えた私は、当然のようにレオナール様をお誘いし、夜の学園舞踏会へと足を踏み入れました。

 柔らかな灯りに照らされた会場。

 小規模とはいえ、そこはれっきとした正式な舞踏会で、華やかな音楽が流れる中、すでに何人かの生徒たちが集まり、楽しげに談笑している姿が見えます。

 すると、私とレオナール様に気づいた生徒たちが――


「見て! レオナール様とセレスティン様だわ!!」

「綺麗な服装……!」

「見た目からして、二人は素敵な婚約者ですねぇ~~」 

「ええ、本当にお似合いですわ」


 そんな声が、ひそひそと、けれど隠しきれない興奮を帯びて耳に届きました。


 私の服装は、漆黒を基調としたオフショルダーのロングドレス。

 黒手袋に宝石のアクセサリーを合わせ、随所に蔓薔薇の刺繍が施されています。

 黒一色の装いの中で、赤い薔薇だけがひときわ鮮やかに映えていました。

 気品と妖艶さを併せ持つ、舞踏会仕様の装い。

 なお、正史ゲームとまったく同じ服装を選びましたわ。

 挿絵(By みてみん)


 一方、レオナール様の服装は――

 皓白こうはくを基調とした正装に、王家の青を差し色とした軍礼服風の上衣。

 金の装飾と勲章、白手袋が格式の高さをより際立たせ、まさに絵本の世界の王子様そのものだった。

 こちらも正史ゲームとまったく同じでしたわ。

 挿絵(By みてみん)


 私たち二人を見て、生徒たちは目を輝かせています。


(……フッ。わかっていませんわねぇ。

 レオナール様にふさわしい女性は、エリナ様をおいて他にはいませんでしょうに)


 私は内心で、勘違いしている生徒たちにやれやれと肩をすくめました。


「ところでセレスティン。誰かを待っているのか?」

 私の様子に気づいたレオナール様が、そう尋ねます。


「ええ……私の友達を、今ちょうど待っているのです!」

 私は満面の笑みでそう答えました。


 そして、そう言い終わるか終わらないかのうちに――


「セレスティン様?」

 待ち人は、実に良いタイミングで姿を現しました。


「エリナ様!!」


 エリナ様の服装は――

 純白を基調としたオフショルダーのロングドレス。

 身体に沿うコルセット仕立てで、胸元と腰元には淡い青のリボンがあしらわれ、清楚さの中に可憐さが添えられています。

 耳元では小ぶりなイヤリングが控えめに揺れ、全体として優雅で上品な印象でした。

 こちらも正史ゲームとまったく同じでしたわ。

 挿絵(By みてみん)


(ああ……祖母おばあ様から贈られた、その服装……本当に素敵ですわね!)


 その姿を目にした途端、私は正史ゲームでの舞踏会イベントを思い出してしまいました。

 正史ゲームでは――

 舞踏会へ向かう途中のエリナ様の前に、悪役令嬢セレスティンが立ちはだかり、

『お前みたいな貧民如きが、この選ばれたパーティーに参加できると思わないことね!』

 などと吐き捨て、手下の令嬢たちとともに妨害するのです。

『パーティーじゃなくて、舞踏会ですわ』

 と冷静にツッコむエリナ様ですが、抵抗むなしく、おばあ様から贈られた大切なドレスは、所々が無残にもビリビリに引き裂かれてしまう……。

 そして、精々した様子のセレスティン一派はゲラゲラと笑いながらその場を去り、エリナ様は打ちひしがれて泣いてしまう。

 ゲームでありながら、胸糞悪くなるイベントでした。

 私はプレイ時、エリナ様を思うと辛く悲しみの涙を流し、一方でセレスティンに対しては、

「よくもエリナ様をいじめやがって! 私がお前の服を――いや、お前の体そのものを木端微塵にビリビリに引き裂い(自主規制)――」

 と、殺意と憎しみに満ちた涙を同時に流したものです。


 ですが、正史ゲームには、その後の“救い”があります。

 セレスティン一派にドレスをボロボロにされながらも、エリナ様は舞踏会に遅刻して参加するのです。

 周囲から奇怪な視線を向けられる中――

 ただ一人、レオナール様だけが、迷うことなく彼女に手を差し伸べ、共に踊ろうと誘う。

 あの場面は、本当に名シーンで……

 ああ……今こうして思い出すだけでも、涙腺が危うくなりますわ。


「セレスティン?」

「セレスティン様?」


 気づけば、ぽろりと零れた涙を見て、レオナール様とエリナ様が心配そうにこちらを見ていました。


「失礼……あまりにもエリナ様のその装いが素敵でしたので、つい感極まってしまいましたわ」

「まあ、ありがとうございます! こちらはおばあちゃんから頂いたものでして――」


  そう言って、おばあ様から贈られたドレスのことを、嬉しそうに語るエリナ様。

 その無邪気な笑顔を見て、私は心の中で改めて誓いました。


(守りたい、この笑顔)


 今の私――セレスティンは、エリナ様にそんな仕打ちは決してしません。

 祖母から贈られた、大切なドレス。

 正史ゲームでは傷つけられてしまったその服を、この世界では、何ひとつ傷つけることなく。

 エリナ様には、心から舞踏会を楽しんでいただきたいのですから。


 まさかの前半・後半に分かれることとなりました。

 後半は、次回の投稿でお届けいたします。

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