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ヴァニタス  作者: 都築
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呪い①

「他人に優しくするといつか自分に返ってくる」という言葉を信じて、何の疑いもなく生活をしていた。

それが1つ目の呪いだった。

「お姉ちゃんと違ってしっかりしてるね。」「しっかりしてるから頼りになるね。」

これが2つ目の呪いになっていった。


姉は入退院、手術とは別に骨格の問題もあり矯正歯科に通うこともあった。

どうしても親が付き添いができず自宅から電車で1時間かかるということから、私も付き添いで行くことになった。

問題なく矯正歯科につき診察も終わった時、受付のお姉さんに「お友達?すごくしっかりしてるねえ。」と姉に話しかけた。

姉は「妹なんですよ。」と返すと、受付のお姉さんは「妹さんなの!?すごくしっかりしてるからお友達かと思っちゃった!」と。

これまで生きてきて確かにしっかりしていると言われることは多く、次第にその言葉は「しっかりし続けなければいけない」という呪いに変わっていった。

「優しくて、しっかりしている」そんな周囲の人が作り上げた人物像を演じていくしかなくなっていった。


小学6年生のとき、体育でやったバスケが思いの外素人の割には上手かったようで同級生に「ミニバス入りなよ〜!

」と言われたり、休憩時間に男子に混じってドッチボールをしていてこれもまたそこそこ上手かったようで「ドッチボール習わない?」と声をかけてもらうこともあった。

私は私に自分で価値を見出すことができなくなっていたから、他人に褒められることがとても嬉しかった。

誰かに自分を認めてもらえて、必要とされていることがとても嬉しくて、やってみたかった。

でも、気がかりなのは母にやりたい!という自分の気持ちと意思を伝えることだった。

いつからか初めから何も聞かれずに無闇に反対されるなら話したくない。話しても無駄だと思うようになっていた。

だから紙にこういう気持ちでこういう経緯があってだからやりたいというのを紙5枚くらいに綴っていった。

今思えばただでさえいい子だったのにいい子にしたり、家事を手伝ったりすると書いた覚えはある。

とはいえ母が不在で小学生ながらに洗濯機を回したり、洗濯物を干したり、取り込んだり、料理したりというのはやっていた。ゴミ捨てだって母から言われる前にいくと告げることだって多かった。

あんなに頑張らなくてもよかったのかもなと今では思う。


結局反対されたけどそれでもどうしてもやりたくて粘ってバスケだけはやらせてもらえるようになった。

本当はバスケよりもギターがやってみたかった。1番やりたいことは言えなかった。どんなこともそうだった。

1番を告げて否定されたとき私は自分の全てを否定されたような気がして、精神的にもう戻れなくなってしまうような気がしたから。

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