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ヴァニタス  作者: 都築
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私は私なのに

私の姉は5個上だから私が小学1年生の時小学6年生で、つまり同じ学校内に姉がいた。

校舎の階も違うからすれ違ったりとかはしなかったけど、入退院、手術を繰り返しているというのは小学生ながらに目立つらしく、6年生・先生の間で私は「姉の妹」として認知されるようになっていた。

6年生の活発な先輩とすれ違うたびに「お姉ちゃん元気!?」と聞かれるし、学校内で先生たちには「〇〇の妹か!お姉ちゃん最近どう?」と聞かれることがあった。

学年が上になる時に先輩たちは卒業し、校舎からいなくなったけどそれでも先生は何年も同じ校舎に居続ける人もいた。

その度に私は声をかけられる。私ではなく、姉の妹として。

私は私として認められている心地はしなかったし、その度に姉の話を友達に説明しなければならないことも煩わしかったし、どこまで話していいかもわからなかった。

それが悔しくて、苦しくて、でもニコニコするしかなかった。それしか私は知らなかったから。


学年が上がるにつれて母は家に帰って来れなくなった。父は仕事で深夜まで働いていた。

所謂鍵っ子ではあったけど深夜に帰宅する父を待てるほど夜更かしできる年齢でもなく、ご飯だってまともに作れない。

気づけば長期休みでもないのに祖父母の家に預けられて、毎日祖父が送り迎えをしてくれるようになった。片道車で1時間近くかけて。

放課後も友達とは遊べずすぐ祖父母の家に帰ることになっていたし、正直全くつまらなかった。

でもそれ以上に申し訳なさを抱えていた。小学3年、4年の人間が大人に抱える申し訳なさって何なんだろうって思う。

自分のせいじゃなくて、不可抗力でどうしようもなくて、親のせいなのに、どうしてこんなに自分が罪悪感を抱いているんだろうって。

姉を産んで大変だったって分かったなら産まなきゃよかったじゃんって思った。何度も思ってた。

祖父母が寝静まった後、不甲斐ないことへのしんどさや寂しさが入り混じって、一人布団で声を殺して泣いたことも一度や二度だけじゃない。

気づかれて誰かに心配をかけたくなかった。でも誰かって誰だろう。

どうして親は私を産む選択をしたのか未だに理解ができていない。


私は私なのに、どうして私の悩みだけでは人生は終わらないのだろうか。

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