表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

王子と国を私は捨てる

特に好きではないけど、嫌いでもない王太子と結婚したのが三年前。

子どもはまだいない。


でも、夫は子爵令嬢の愛人を作って孕ましたので、離縁を決めた。

その子爵令嬢とは学園時代から噂があったみたいだから、結婚前からの関係ということよね。


子どもができないから、正式に側妃を持つのならばまだわかる。


誰憚ることなくそれができる立場なのに、なぜしないの?


勝手に浮気をして孕ませてから側妃にっていう、その順序が最もムカつくのよ。


何でもナアナアで、正式な手順を踏めない人が未来の王って大丈夫なの!?


正式な側妃の子だって将来は王位争いの元になるっていうのに。弟王子達の子といずれそうなるわ。

ただですら、弟君の方が王に相応しいという派閥はまだあるのだから。


私の夫って、本当に何も考えていないのね。


浮気な王子の妃なんて真っ平ごめんなので、誰に引き止められようが離婚一択よ。


浮気した夫となんて今後寝たくもないし、もう義務的なキスすらできないわ。


王妃なんかには元々なりたくないし、ボンクラな王の正妻になるのも正直嫌なの。

そんなの、私が苦労するのが目に見えているじゃない。


王太子妃教育を受けていない愛人には王太子妃は無理だとか言われても、それなら王家総出でその分をフォロー、穴埋めすればいいだけでしょ。


王子妃とか王太子妃に王家があまりにも頼り過ぎなのよ。


王太子妃を失って困るなら、失うような愚かな行為を王族側がしなければいいだけよ。

王子が手順さえ守ってくれたら、まだ離婚はしなかったわ。

それぐらいの危機管理ができない時点で、私は自分の夫とこの国の王家を見限ったの。


王妃になってしまえば離婚しにくくなるでしょうし、王子妃のうちに離婚するのが得策よ。


私は人生の殆どを王太子妃教育と王太子の妻としての生活に全てを捧げ奪われて来たわ。


それをこんな形で踏みにじられるなんて我慢できるわけがない。


妻にすら配慮できない王なんて終わっているわ。

終わっている王子とこのまま一生牢獄のような生活をするなんて我慢できない。


私はこれからは王家から解放されて、自由に生きたいのよ。



「私は事故死か、病死したとでも発表して、お二人でどうぞお幸せになって下さいませ」

「マ、マリエル、本当にそれでいいのか?」


王子は焦りまくっている。まさか離縁になるとは思っても見なかったのだろう。


引き止めるぐらいなら、はじめから浮気なんかするなっての。


「私達は相性が悪いのですから、このまま一緒にいてもお互い幸せではありませんわ」

「え······俺達は、相性が悪かったのか?」


今さら何を驚いているのかしら?


「相性が良かったら浮気する必要はありませんし、子どもだってできたでしょうね」

「······そっ、それは」

「このまま離婚せずに、私が愛人を持ってもいいのですか? 私が愛人との子どもを産んだらどうなさるんですか? 自分だけは不貞が許されるとなぜ思えるのですか」

「······」

「わたくし、あなたとはもう一生シたくないのです。あなたとするのは、もう無理です」



王子の妻として、元公爵令嬢だから強気に出ることができたことだけは父に感謝している。


この国を支える四大公爵家のうちの一つであるマクギリス公爵の父には、「離婚するなら修道院へ行け」と言われた。

私は実家から絶縁されてもいいから、得意の語学を活かして隣国で働くことにした。


マリエルをリエと改名し、母方の姓ブラッドリーを名乗り新しい名前で別人として生きていくの。


私マリエルは事故死したことになっていて、見せかけの葬儀も終えた。

この国には十年間入国禁止の約束で離婚が成立した。

十年後は32歳、私のことなど誰も思い出しもしないだろう。


それに十年あれば愛人の王太子妃教育も流石に身に付くことでしょうから。



父は歳の離れた妹フローネをなんとかして王家に送り込もうと血眼だ。

役に立たなかった娘はもう用済みってことね。



隣国ルルデュスには従姉が嫁いでいる。

しばらくはそこでお世話になりながら仕事を見つけて自立するつもり。


窮屈な世界から私は自由になって、ようやく羽ばたけるのよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ