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諸星の春

うら若い春が梅のつぼみを柔らかくほころばせる、弥生のある日。


「おかしいわね。書かれた番地だとこの辺りだけれど」


怜子は葉書を手にしたまま、あっちをきょろきょろ、こっちをきょろきょろと(せわ)しない。


のどかな早春の昼下がり。

二人は屋根瓦が所狭しと連なる下町で、先ほどからこうして目当ての家を探して彷徨(さまよ)っていた。


何しろ伯爵邸のある閑静な屋敷町とは違って、小さな民家が無数に建ち並ぶ通りだ。

目的地に辿り着くだけでも、随分難儀な道行きだった。


「嗚呼、参ってしまう」


まだ肌寒さの残る頃だが、麗らかな日なたを歩き回った怜子の額は薄く汗ばんでいる。


「もしかして、あのお宅じゃありませんか?」


一見すると空き家の様に、真昼の木漏れ日にひっそりと佇む家屋を美夜は指さした。

果たして、その小ぶりで質素な造りの家こそ、美夜達が探し求めていたところだった。


開け放された古めかしい木戸門には、真新しい「野々宮」の表札が出ている。


「ごめんくださいませ」


美夜が玄関先で呼び掛けると、奥から弾んだ足音が駆けてきて、格子戸をがらりと開ける。


「まあ、美夜に怜様!」


来客達の姿に、この家の若い女主人である珠緒は玉の(かんばせ)を明るく輝かせた。

久方振りに相見る彼女の溌剌(はつらつ)とした振る舞いに、二人も表情が緩む。


「お元気そうで何よりです」


「ご機嫌よう、珠緒さん」


「二人とも、来てくださって嬉しいわ!さっきからずっと待ち(どお)でしたの。さあさあ、上がってくださいまし!」


通された座敷は小ぢんまりとしながらも、隅々まで掃除が行き届いている。

障子が開かれた縁側からは爽やかな空気が吹き込み、い草香る畳の上を流れていく。


芽ぐむ春の気配は隔てなく、このささやかな住まいにも訪れる。


「素敵なお家ですねえ」


怜子と並んで上座に座布団を与えられた美夜は、ぽかぽかと心地よい陽気に目を細めながら言った。


「そうでしょう?あたくし、一目見て気に入ってしまいましたの。手狭だけれど、お志津と二人ならこれで十分ですもの」


艶やかな黒髪をそよ風に(なび)かせる珠緒の横顔は、雲一つ無い弥生の青空よりも、なお晴れやかだった。


その時、庭から一匹の黒猫が短い尻尾を振りながら座敷に駆け込んできた。

にゃあごと不満げに鳴くと、相変わらず丸々太った体を珠緒の膝に擦り付ける。


「そうそう。お前を忘れてはいけませんわね、御萩丸(おはぎまる)


珠緒の美しい手に抱き上げられると、侯爵家の別邸で飼われていた黒猫はゴロゴロと満足げに喉を鳴らす。


孤月ヶ浜(こげつがはま)の屋敷も、売る事になりましたの。もう、あたくし達には不必要ですから。それで、御萩丸もこの家に」


爵位を返上し、野々宮家の姉妹が華族から一平民の身分となって幾月。

姉と妹はいずれも、生い立った野々宮の家を出る事を選んだ。


姉の焔は不自由になった左脚や、火事で負った火傷の療養という名目で地方へ。

妹の珠緒は腰元の志津を連れて、この家へと移り住んだ。


その際、侯爵家が所有していた家屋敷や土地の数々は焔の手で処分されたという。


野々宮侯爵家という名家が帝都に君臨していたのも、今では過ぎし日の夢幻だ。


珠緒達がこの下町に居を移してから、怜子と美夜は初めて二人を(おとな)ったのである。


「お引越しおめでとう。少ないですが、これを」


怜子が黒革のハンドバッグから、紅白の水引が蝶結びにされたのし袋を差し出す。


「かたじけのうございます。(つつし)んで、受け取らせていただきます」


珠緒は座布団から降り、つつましやかな動作で三つ指を突いて(こうべ)を垂れる。


華々しき粉黛(ふんたい)は控えめな薄化粧に取って代わられ、茜色の無地の着物という落ち着いた装い。

しかし、その所作の(しと)やかさは以前と変わらず、むしろ深みが増したと言って良い。


そんな珠緒は、綺羅を(まと)い、侯爵家の妹姫として多くの人々に(かしづ)かれていた頃よりずっと美しい。

美夜は、ひそかにこう思うのだ。


怜子に続き、美夜も風呂敷包みから千代紙張りの箱を取り出す。


「これ、吹雪(ふぶき)屋のお大福です。どうぞ、召し上がってくださいな」


「まあ、ありがとう!折角だから、皆で頂きましょうね」


「失礼いたします」


廊下に面した襖が開かれると、茶を運びにやってきた志津がにこやかに控えていた。


「美夜様も怜子様も、ようこそお出でくださいました。どうぞ、ごゆっくりお(くつろ)ぎくださいね」


侯爵邸での火事以来、顔を合わせていなかった志津が現れて、美夜はすっかり浮き立ってしまった。


「わあ、志津さん!」


「志津さんもこちらにいらっしゃいな。美夜から、志津さんは吹雪屋の塩豆大福が好きだと聞いていたので買ってきたの」


「そうよ、お志津。怜様もこう(おっしゃ)っているし、お前も休憩なさいよ」


「では、御言葉に甘えて」


いそいそと腰を下ろした志津は、喜びを隠せない様子で隣の珠緒と目配せを交わす。


「けれど、よろしいのでしょうか。使用人の私が、御姫様(おひいさま)やお客様方とお茶を頂くなんて」


「お志津ったら、またそんな事を言って!あたくしはもう、侯爵家の御姫様などではありませんわ。お志津だって、あの頃のお志津ではないでしょう」


「でも、何だか現実味がないのです。こうして御姫様とこの家で暮らせている事が、夢の様で」


「それなら、あたくしだって」


彼女らだけの世界に入り込んだ二人は、まるで蜜月の夫婦を見ている様だ。

睦み合う珠緒と志津を横目に、美夜は小声で怜子に耳打ちした。


「怜子さん。このお二人、もしかして」


「……私も同じ事を考えていてよ」


婿を迎えて侯爵家を継げという親類達の意見を、珠緒は頑として聞き入れなかったという。

その理由の一端を、美夜は垣間見た気がする。


かつての姫君と女中が恋仲である事に驚きはしたものの、それはすぐに微笑ましさへと変わる。

尽きせぬ天満月の輝きの様に、(かたみ)に想い合う二人の幸福が、どうかいつまでも続きますようにと。


名家の令嬢として歌舞音曲の稽古は一通り受けてきた珠緒だが、中でも琴は別格の腕前を持っている。

侯爵家の別邸からこの家に越してきて以来、珠緒はその才能を生かし、琴のお師匠(っしょう)さんとして生計を立てているという。


「武家の女は(やわ)ではいけませんわ。自分の食い扶持(ぶち)くらいは、自分で稼ぎませんと」


姉の焔からも相当に財産は分け与えられたが、それはいざという時の為に(たくわ)えておくそうだ。


「日輪様に選ばれる為に習い覚えていた芸が、お志津と暮らす為に役立つなんてね」


珠緒はそう言って、心安く笑った。


「ところで、結婚式はいつ頃お挙げになるの?」


「四月の初め、桜の花が咲く頃には」


風光り、帝都が爛漫の春に染め上げられる佳き日。

美夜は、怜子との変わらぬ愛の誓いを神の御前(みまえ)で結ぶ。


やがて(きた)る瞬間を思うと、どこか心()いてならない。

しかし、愛しい女性(ひと)と夫婦になれる日を、指折り数えて待ち焦がれているのも事実だった。


「楽しみね。あたくしにも、是非祝わせて欲しいわ」


「よろしければ、珠緒様も式にいらっしゃいませんか」


美夜の申し出に、珠緒はゆっくりと首を横に振る。


「嬉しいお誘いだけれど―――あたくし、一時は怜様と婚約していた月影ですもの。あたくしの様な者がいては、晴れの日に縁起が悪いわ」


衆目を忍ぶ慎ましさも、新しく珠緒に身についた美徳だ。

寂しく目を伏せたのもつかの間、珠緒は快活に破顔する。


「その代わり、後で話を聞かせて頂戴。お志津と一緒に、この家でいつでもお二人を待っていますから。改めて、御結婚おめでとう」


午後のひと時は打ち解けた会話の元に流れていき、塩豆大福も残りわずかとなった頃。


「それで、お二人の結婚のお祝いと言ってはなんだけれど」


珠緒が志津に目配せすると、彼女は立ち上がって部屋を後にする。


戻ってきた志津は、両手に大型の旅行鞄を(たずさ)えていた。

美夜と怜子が何かと見守る中、トランクの蓋は開かれる。


現れたものに、二人は思わず声を上げた。


中には帯封をされた札束が、数えるのも気が遠くなるばかりに詰められていた。


「これは、ほんの一部ですのよ」


珠緒は懐から折り畳まれた書状を取り出し、怜子の震える手に持たせる。

墨書きの文書を読み進める怜子の目が、驚愕に見開かれる。


「何と書かれているのですか」


「⋯⋯野々宮家が所有する財産の三分の一を、清小路伯爵家に贈与すると」


華族の中でも、五本の指に入る富豪だと言われていた野々宮侯爵家。

その資産の三分の一だけでも、途方もない額だろう。


あまりの衝撃に絶句する美夜達に、珠緒が言い添える。


「全て、姉上からお二人へとお渡しするものですわ」


「焔さんが―――私達に?」


自分の耳を疑う様に、怜子が問い返す。

姉と揃いの切り揃えられた前髪が、珠緒の頷いた顔に影を落とす。


「……姉上も、こんな風にお金だけで(かた)を付ける様な真似はなさりたくなかったと思いますの。もし許されるのであれば、御自分の所業を面と向かってお二人に心からお詫びしたかったでしょうに」


(くま)無き春陽の中、その表情は何ともやるせない。


「ですが―――これから一生涯、美夜と怜様の前に姿を現さない事が姉上の償いなのですわ。このお金は、お二人へのせめてもの罪滅ぼしの気持ちでしょう」


思えば、如何(いか)ばかり悲壮な覚悟だろう。

栄誉ある地位や巨万の富の何もかもを投げ捨てて、贖罪(しょくざい)にのみ生きる道を選ぶとは。


願わくば、焔のこれからが明るいものである様にと―――畏日の君の希望ある前途を祈ってやまない美夜だった。


それぞれが、今は何処(いずこ)の空にある相手を思って、陽だまりの座敷はしめやかな空気に包まれる。


「でも、こんなに沢山のお金をどうしたら……」


栄耀栄華を望まぬ美夜にとっては、千金を積まれても始末に負えない。


弱り果てて怜子の方を向くと、彼女は静謐(せいひつ)な瞳を巻紙の上に注いでいた。


じっと考え込んでいた怜子は、ややあって口を開く。

顔を上げると、一同に向かって朗々と語り掛ける。


「―――これは、世の為に使いたいわ」


その言葉が意味するところは、美夜にはすぐに知れた。


月影であろうと、尋常種であろうと、日輪であろうと、誰もが自分の生きる道を選べる社会。


昔の美夜の様に、弱き者が闇に(ほうむ)られる事の無い世界。

それは怜子の夢であり、美夜の追い求める理想でもある。


「一つ、提案なのですが」


彼女と志を同じくする者として、美夜はこう切り出した。


「学校を作るのはどうでしょう。生まれ持った性別によらず、それぞれが学びたい事を勉強できる学校を」


現在、月影には一部の教員養成機関を除いて高等教育を受ける場がもたらされていない。


社会が彼らを性の檻に閉じ込めようとする限り、この矛盾は変わらないだろう。

しかし、自ら考え、生きる力を教育によって与える事ができれば。


未来の明かりは、少しずつ常夜(とこよ)の国を照らしていく筈だ。


怜子の切れ長の目が、興奮に大きく見開かれる。


「名案ね、それは!さすが美夜だわ」


彼女が快哉(かいさい)を叫ぶと、珠緒がくすりと笑う。


「お二人らしいわ。あたくしも、それが正しい使い道だと思います。―――きっと、姉上も同じでしょう」


後年、清小路伯爵夫妻は第二性別によらず生徒を受け入れた初の大学を設立し、月影の地位向上に尽力する等、近代史に幾つもの功績を残す事となる。

しかし、それはまた別の話である。




「姉上からだけではなく、あたくしからも何か結婚のお祝いを差し上げたいわ」


かくして、珠緒は自分の愛用していた玉衣(たまぎぬ)や髪飾りを美夜に与えたいと言い出した。


自室へ美夜の手を引っ張っていくと、襖をすっかり閉め切ってしまった。

若い娘達の華やいだ歓声が、怜子が一人残された座敷にまで聞こえてくる。


「この(かんざし)、あたくし特に気に入っていましたのよ。桜貝の螺鈿(らでん)が漆塗りの黒に映えて、見事でしょう。きっと美夜にも似合いますわ」


「わあ、綺麗!やはり、珠緒様が愛用なさるものはどれも逸品(いっぴん)ですね」


座敷に一人残された怜子は、縁側に座って晴れた空を見上げた。

遠くで(うぐいす)が鳴いている。


まるで時が止まったかの様な、悠悠閑閑(ゆうゆうかんかん)としたひと時だった。

ともすると微睡(まどろ)んでしまいそうな怜子の元へ、志津がやって来る。


「お茶のお代わりは如何でしょうか」


「ありがとう。頂くわ」


玉露のまろやかな香りを味わう怜子の背後で、志津は神妙に控えている。


他に誰かがいるのに黙り込んでいるのも、何だか落ち着かない。


此方(こちら)にお座りになったら?」


怜子は自分の横に、もう一つ座布団を置いた。

志津は(しば)したゆたっていたが、ゆっくりと膝行(いざ)ってその上に腰を下ろす。


「いい季節ねえ」


「はい、本当に」


飴色の陽射しが、志津の姿を浮かび上がらせる。


幾分かふっくらとし、血色の良い頬。

黒髪には油気こそ無いものの、(したた)る様な瑞々しさを誇っている。

いつも青白い顔をして、痩せ衰えていた彼女の変わり様に、怜子は目を見張った。


しかし、何より変わったのは志津の内面ではないだろうか。

怜子達の会話に声を上げて笑い、柔らかな表情で珠緒を見守る。


常に(うつむ)き、能面の様な顔をしていた彼女とはまるで別人である。


「……やっぱり、恋をすると人は変わるのかしら」


胸の中で(ひと)()ちたつもりが、うっかり声に出ていたらしい。


ばっと顔を上げた志津は、火を吹かんばかりに真っ赤になっていた。


「怜子様、何故それを」


あからさまに志津がうろたえるので、怜子は何だか可笑(おか)しくなってしまった。


「あなたと珠緒さんを見ていれば、そのくらい分かりますとも。愛しい相手以外、何も目に入らなくなってしまっているのが」


悪戯っぽく怜子に図星を指されて、志津がしおしおと縮こまる。


「……尋常種の私が月影の御姫様を()うなど、許されないと思っておりました。けれど―――あの方をお慕いする気持ちは、今ではとどめようもなく(つの)るばかりで」


恥じらいつつも、思い人への赤心を吐露する志津は可憐なばかりに初々しい。


「誰かを愛する気持ちに、性別などは関係なくてよ。あなた達二人が幸せに暮らせば、焔さんだってお喜びになるでしょう」


その名を口にして、はっとする。


帝都を離れて幾百里、今は遠い(ひな)の地にいる女性(ひと)

焔の行く末が、案じられてならない怜子だった。


「……東暁(とうきょう)を出る時、焔さん、どうしていらした?」


しんみりと膝に目を落として、怜子は志津に尋ねた。


「―――あの方らしい、立派な門出で御座いました」




主君が帝都を離れ、遠方の地へと旅立とうという日。

志津は東暁駅へと焔の見送りに行った。


焔に自分の腕を貸し、杖を突きながら混雑したプラットホームを進む彼女を(たす)けた。


「もう、ここまでで良い。すまないな、志津」


志津の腕をするりと抜けて、焔は旅行鞄を受け取る。


ホームには黒鉄(くろがね)の汽車が、その出発を今かと待っていた。


「……本当に、行ってしまわれるのですね」


志津は名残惜しく、呟いた。


「この様にお尋ねする事も、出過ぎた真似であると存じておりますが―――帝都にお残りにならなくて、本当によろしいのですか。御姫様も、是非にと仰っておられますのに」


「もう、決めた事だ。貴様らに迷惑を掛けては悪い。それに、私は東暁(ここ)にいてはいけないんだ。だから、行かなければ」


そして、金輪際(こんりんざい)都の土は踏むまい。

焔の決然たる覚悟を寂寥(せきりょう)漂う物言いから感じて、志津は忍びなかった。


随分、お変わりになられた―――


しみじみと、志津は主人の変わり様を見やった。


漆黒の軍服を脱ぎ捨て、男物の(つむぎ)の着流しと羽織という出で立ち。

金色(こんじき)のサーベルを帯びていた手には、飾り気の無い杖。

焼けただれた顔の傷を隠す為に、黒の頭巾を目深(まぶか)に被っていた。


帝國軍人の誉れ高き焔の勇姿を見る事は、二度と叶わないのだ。


燃え尽きた炎が、同じ色を見せはしない様に。


別れの時は刻々と迫っているというのに、言うべき事もすぐには出てこない。

口下手な自分が、志津はもどかしかった。


杖の先で地面をなぞりながら、焔は頭巾の下から志津へ深い海の様な眼差しを向ける。


「貴様ら二人には十分良くして貰った。珠緒にも色々と酷い事をしてしまったというのに、献身的に面倒を見てくれて。……あれは、本当に気立ての良い娘だ」


焔の介添え役には志津や他の女中がいたものの、侯爵の妹は甲斐甲斐しく姉の世話を買って出た。


「だって、あたくしのただ一人の姉上ですもの」


機能的な結び髪にたすき掛けをした珠緒は、こう言って朗らかに笑った。


どれだけ利用され、傷つけられようとも、血を分けた姉を慕う珠緒の気持ちはそのままだった。

珠緒の骨身を惜しまぬ献身は、両親の愛を一身に受ける妹に対する焔の長年のわだかまりをも溶かしてしまったらしい。


「今日だったな。貴様らが、新しい家に移るのは」


その日は焔から分け与えられた財産で珠緒が購入した下町の一軒家に、別邸から家財道具を運び込ませる予定だった。

諸々の準備で、珠緒は惜しくも姉の見送りには来られなかったのである。


新居への引っ越しが済み次第、侯爵家の仮住まいであった別邸も人の手に渡る事になる。


「これで、野々宮の家も終わるのだな」


晴れやらぬ空を見上げて、焔はぽつりと言った。


「……左様で御座いますね」


それ以外に、志津は答える言葉を知らなかった。


焔こそは野々宮の家そのものであり、志津の生きる意味であった。

たったひとつ、志津の仰いできた太陽であった。


しかし―――今、その太陽は自ら没そうとする落日である。


(かな)しみとも、寂しさともつかない感情が志津を満たす。


生まれて二十四年連れ添ってきた焔が、自分の元を離れていく。

大切な何かが、この指の隙間をすり抜けていく様だった。


口をつぐんだ志津を見かねてか、焔は闊達(かったつ)な声で続ける。


「これで良かったんだ。毒を持った(くちなわ)の様に、業を抱えた家など無くなってしまえば良い。天照(あまてらす)と一緒に」


大日本帝國の政治や経済を牛耳らんとするごく少数の華族達が各々の持つ力を分かち合う秘密結社。

 

天照を組織した家として野々宮侯爵家はその頂点に立ち、代々実権を握っていた。

先代侯爵の死によって、焔は二十二の若さで天照の最高権力者の座に()いた。


珠緒さえも知り得なかった機密を、志津は父から陰ながら伝えられていた。


美夜や怜子の行方を追う際にも、焔は天照の情報網を大いに利用したのである。


野々宮侯爵家の瓦解(がかい)に当たり―――天照もまた、焔によって息の根を止められたのだ。


「御心労、お察しいたします」


「あの連中を押さえ込むのには苦労したな」


天照の顔触れは揃って反駁(はんばく)し、強固に異を唱えた。

しかし、彼らの汚職や贈賄の証拠を天照の存在と共に公表するという焔の圧力に、ようやく追従したという。


「私が言えた義理ではないが、この日の本はもっと良い国になって欲しいな。……国を担う華族に清小路の様な者がいれば、大丈夫か」


背を向ける焔が、かつて愛した女性の名をどんな顔で口にしたのかは分からなかった。

けれど、志津の方を振り返った彼女は、雨上がりの空の様に爽やかな笑みを浮かべていた。


「こんな事を言うと変に思うかも知れないがな。私自身は、全く清々しているんだ。人生の惨敗者と呼ばれようが、構うものか」


―――本当は、何もかも捨てたいと思っていたのだ。


燃え盛る業火の中で、死を目の前にした焔が明かした胸の内。


侯爵の地位や天照の長の立場。


彼女を縛り続けた全てから、焔は解き放たれようとしている。


ああ、そうだ。


焔が自らの翼で羽ばたこうとしているのならば、志津だけはそれを慶さなければ。

臣下として。どんな時も共に歩んできた、乳姉妹(ちきょうだい)として。


「……御館様の御多幸を、志津も絶えずお祈り申し上げます」


「ありがとう。だが、私はもう貴様の主人ではない。私の事など構わず、思うままに生きてくれ」


焔の口から発せられた言葉に、志津は信じがたい思いで顔を上げた。


「御館様」


唖然とする志津の手を包み込み、焔は慈しみの瞳で語り掛ける。


「今まで私に仕えてくれた貴様には、本当に感謝している。だが、貴様を私の傀儡(かいらい)にさせてしまった事を、申し訳無く思っていた」


心苦しく声を落とし、焔は続ける。


「それから―――子供の頃、貴様を私の苛立ちの()け口にしてしまった事をどうしても()びたかった」


父侯爵による軍人となる為の苛烈な教育は、焔の心と体に消えない傷を刻んだ。


鬱屈とした不満の矛先は、彼女の傍にいた志津へと向けられたのである。

しかし、志津は甘んじて受け入れたのだ。


そうしなければ、珠緒に白羽の矢が立つのは目に見えていたから。


「九つの時、私に井戸の中へ落とされたのを覚えているか」


忘れられない。


焔が庭で鞠突きをしていた時、ふとした拍子に手鞠は少女の手を逸れた。

あれよあれよと、鞠は井戸の奥深くへと落ちていった。


全ては近くにいながら鞠を拾えなかった志津の手抜かりだと、焔は彼女を(なじ)った。

そして、罰として志津は光の射さない水底(みなそこ)へと落とされたのである。


幼い胸に焼き付いた恐怖と絶望共々、志津には忘れがたい記憶だ。


「あの時、少ししたら貴様を井戸の中から助け出すつもりだったんだ。だが、いなくなった貴様を探す使用人達の騒ぎが大きくなってしまって」


古傷の様な後悔が、焔の表情に表れていた。


かつての仕打ちを恨むとも、許すとも志津は口にしなかった。


「大切な御品だったのでしょう。あの手毬は」


とだけ言った。


八重桜の花房の様に美しい手毬。

それは、自分に似た珠緒ばかりを可愛がる侯爵夫人が、唯一焔に与えた品だった。


妹だけが煌びやかな着物や髪飾りと共に母の愛を注がれる事に、姉はどんなに苦しんだだろう。


志津は知っていた。


気まぐれにその手毬を母から渡された時、焔の目がどれほど生き生きと輝いたか。

あの手毬は、焔が母の愛を信じる唯一のよすがであったのだと。


何もかも、志津は隣で見守ってきた。


ゆえに、知っていた。

焔が父を憎み、母を()みながらも、彼らに愛されるのをひたすらに望んでいた事を。


「⋯⋯ああ」


悲しさの混ざった、懐かしげな微笑を焔は浮かべた。

いつか、心から愛し合える相手が焔にも現れる事を志津は切に願った。


「とにかく、貴様はもう自由の身だ。けれど、貴様の主としてではなく、珠緒の姉として、最後にこれだけは言わせて欲しい。―――あの子を、守ってやってくれ」


焔の言葉に込められた、祈るが如く一途な響き。

志津は悟った。


この方は、御存知なのだ。


珠緒が婿取りを拒んだ真の理由を。

社会には受け入れられない恋を。


しかし、それを知った上で珠緒を志津に託してくれている。


心が、熱く燃え上がる。

今度は志津が、焔の手を取った。


「お言いつけは、しかと肝に命じました」


「頼んだぞ。あの箱入り娘を放っておいたら、どんな目に遭うか分かったものではないからな」


二人は手を握り合ったまま、(もく)して人混みの中に佇んだ。

だが、互いの気持ちは言葉にせずとも伝わった。


その時、汽車の出発を知らせるベルはけたたましく鳴り響いた。

ホームの人々は我先にと汽車へと乗り込んでいく。


別れの時が来たのだ。


「じゃあな、志津」


「御館様も、お健やかでいらっしゃいますよう。どうか、また逢う日まで」


焔は頷き、迷いの無い足取りで(きびす)を返す。


折しも、雲の切れ目から射した陽光は溢れんばかりに焔に降り注ぐ。

遠ざかりゆく彼女を、御空(みそら)の輝きは明るく照らし出す。


どんな姿に成り果てようとも、決して背を丸める事はせず。

堂々と進む焔の凜々しさは、昔日(せきじつ)のそれに少しも引けを取らない。


その情景に、志津は言葉にできない感動を(おぼ)えた。


この方もまた、誇り高き日輪でいらしたのだ。

命ある限り耀(かがよ)う強さを持った太陽は、旅立つ。


目頭が熱くなり、陽炎(かげろう)に遮られた様に焔の背中が滲んでいく。

しかし、()いてそれを(こら)え、深く頭を下げる。


主の壮途を見届けるのが、志津の役割だ。

それが、臣下として唯一できる(はなむけ)である。


焔を乗せた汽車が見えなくなるまで、志津はそうしていた。





「侯爵家当主であらせられた往時(おうじ)に劣らぬばかりに―――否、それをも凌駕(りょうが)するお勇ましい御姿でいらっしゃいました。私には、御館様についてそう申し上げる他は御座いませぬ」


柳の葉の如き志津の唇は、それきり閉じられた。


如何なる美辞麗句も、彼女の口から語られる事は無い。

しかし、言い尽くせぬ言葉は水の(おもて)を渡る陽光の様に、三白眼の瞳を巡った。


血によって宿命づけられた主君へのひそやかな想いを、志津は胸の中に宿していたのだろう。


「……よかった」


春のにおいを含んだ風に白木蓮の枝が揺れる。

はらりはらりと落つる花びらは雪の様。


その細雪(ささめゆき)のひとひらの様に、怜子は淡く微笑した。


「あの方は、いつだって勇ましくいらしたもの」


「―――はい」


二人は敬虔な思いに項垂(うなだ)れる如く、積もりゆく沈黙の中に身を慎んでいた。

すると、(ふすま)がすぱりと開いて珠緒が顔を覗かせる。


「お志津、あたくしの蝶々と芍薬(しゃくやく)の模様の着物がどこにあるか知りませんこと?こちらの箪笥にありませんの」


志津がくるりと振り向いて、それに答える。


「あの友禅のお着物でしたら、奥の部屋に仕舞って御座います。私が取りに参りましょう」


「お願いね。さぞや、美夜に映ると思うの」


襖が閉まっても志津は立ち上がるでもなく、怜子の目をじっと覗き込む。

何事か、と怜子は目を(しばた)かせた。


「実は―――怜子様へお渡しするようにと、御館様から言付かっている物があるのです」


志津が懐から取り出したのは、一通の真白い封書であった。


彼女の発する肌のぬくもりを帯びたそれを、捧げる如く怜子の手に握らせる。


清小路怜子殿。


紙の(おもて)に力強い筆致で記された自分の名に、怜子は目を見張る。


「どうぞ、御一読下さいませ」


丁重な礼を残し、志津は立ち去った。

今度こそ、座敷には怜子一人が残される。


春の陽射しのもとに、怜子は秘められた扉を開く様に手紙の封を切る。

かつて彼女が軍服の上着に焚きしめていた伽羅(きゃら)の香が、ふわりと匂った。


それは怜子の胸を、得も言われぬ懐かしさで埋め尽くす。


焔さん―――


心に唱えた名は追慕の炎となって、怜子の中に灯る。

巻紙の上に墨で綴られた文字の一つ一つに、怜子は焔の面影を辿ってやまなかった。




拝啓 清小路怜子殿


貴殿がこの卑書(ひしょ)を手にされる頃、私は既に東暁にはいないだらう。

帝都を離れるにあたつて、かうして身勝手な乱文を綴る失礼をお許し願いたひ。


(しか)あれど、私はどふしても筆を取らずにはいられなかつた。


願はくばその御胸(みむね)に、浅はかな私の姿を(よみがえ)らせてくれ。


()づは逝去(せいきょ)された御父君へのお悔やみを、心より申し上げる。

私自身も、彼の方が泉下の客と成られた事への哀悼を表さずにはおられぬ。


私は尊子殿を親に持つ貴殿が、羨ましかつた。

我が身に代えても子に尽くす父といふものを、運命は私に与えはしなかつた。


私が愛といふ愛に(かつ)え、(ひたぶる)にそれを渇望してひた事は貴殿がよく知つておられやう。

それが十悪五逆の罪に比すべき過ちの言い訳にもならぬとは百も承知だ。


されど、私はどうしても貴殿に伝えておかねばならなひ。

他ならぬ、美夜につひてだ。


伯爵家の夜会で見掛けた彼女は、抗い様もなく私の心の全てを奪つた。

まさしく運命と呼ぶ他ない強さで、私は美夜といふ月影に引き寄せられた。

彼女こそは我が対の日月であると、内なる本能が(ささや)ひた。


如何なる犠牲を払つても美夜を番とするのだと、欲望の炎は私を焚きつけた。

しかし、今になつて悟つた事がある。


私は美夜から、自分と同じにおひを嗅ぎ取つていたに過ぎなかつたのだらう。

美夜もまた、闇のやうな生の光となるべき人の愛を知らず、(くら)ひ道を歩み続けてきた存在であつた。


そんな人間はにこやかに笑つていたとて、心の奥底には消せなひ悲しみを抱へてゐるものだ。

同じ痛みを持つた美夜を、私は同胞(はらから)として得やうとしていたのだと、今になつて思ふ。


だが、それは間違ひであつた。


美夜は愛される事は知らずとも、人を愛する強さを持つている。

私のやうに、愛されぬ恨みを晴らさんと他人を傷つけて生きてきた者とは違ひ、美夜は自分が与えられぬ優しさの光を振りまける月だ。


触れればさゆらぐ月見草のやうな儚い見目とは裏腹に、どこまでも真っ直ぐな自我を貫ける女子(おなご)である。

美夜をそのやうな月にしたのは他ならぬ貴殿といふ日輪の愛だろうが、あの娘の生まれ持つた美しさでもあるだろう。


最初から、私は美夜の対の日輪ではなかつたのだ。


美夜は、貴殿と結ばれるべくして生まれた月影である。

どうか、二人で末永う円満に過ごされたし。


野々宮焔などといふ人間は、既に息絶へたものと思し召されよ。


慈悲深ひ貴殿ゆえ、私を燃え盛る炎の中から救へなかつた事で御自分を責めてはおられぬだろうか。

けれど、かつての私といふ傲慢な日輪はあの業火によつて滅されたのである。


これからは、名も無き一人の人間として新たな生を歩んでいきたひ。


だから、今から書く事は死にゆく者の遺言として、この手紙を読み終へたら忘れて欲しい。


野々宮焔は、貴殿といふ日輪ただ一人を愛してゐた。


恐惶謹言(きょうこうきんげん) 野々宮焔




在りし日の負けん気の強い人柄そのものである様な、墨書きの雄々しい文字。


それが次から次へと滲んでいくのを見て、怜子は自分の頬を伝う雫を感じた。

空知らぬ雨は、握り締めた巻紙の上にまた一つ降りかかる。


あの女性(ひと)は、行ってしまった。


思いの丈を込めた手紙と、怜子の心に切ない痛みを残して。


涙に溶けた墨がブラウスに移るのも構わず、怜子は手紙を胸に抱いた。

もう二度と、相見る事は叶わぬ彼女にそうする様に。


「ずるいわ、焔さん」


届かぬ恨み言が、怜子の唇をついて出る。


愛してゐた―――別れの代わりに、忘れられない言葉を怜子の中に焼き付けていくなんて。

燃え尽きた筈の彼女の熱情は、かつての(はげ)しさのまま怜子を包んだのだ。


怜子の震える肩に、舞い落ちる一葉(ひとは)の静かさで誰かの手が乗せられる。

泣き濡れた瞳を上ぐれば、小腰を屈めた志津が母の様な眼差しで自分を覗き込んでいた。


怜子の嫋やかな肩に手を置いたまま、志津はその横に腰を下ろす。

何も言わずに寄り添ってくれる優しさが、怜子を頑是無い子供の様にしてしまう。


「もう逢えないひとの面影を抱えたまま、生きろというのは酷ではないの」


怜子は拗ねた口調で、独りごちる様に言った。


「誰にだって、癒えぬ傷の様な思い出の一つや二つはあるものです」


悟り澄ましてそう言える志津とは違い、やり場の無い感情に振り回される自分が恥ずかしくなる。

しかし、ややもすれば志津は遠くを見る様に目を伏せる。


「私も御館様を忘れろと言われたとて、土台無理な話で御座います。無かった事にするには、あまりに多くのものをあの方から受け取ってしまいましたから」


乳姉妹(ちきょうだい)として長年主人を支え続けた志津の中には、怜子の知らない焔が()んでいる。

怜子にとっての焔がそうである様に、きっと志津の心にも彼女は息づいているのだろう。

霞の様な面影も、秘めたる想いも、志津だけが触れられるものだ。


その時、咲き誇る春を歌うが如き琴の調べが辺りに響いた。


何事かとそちらを見やれば、小さな庭を挟んで(かぎ)の手に曲がった廊下の先の縁側で、琴を奏でる珠緒の姿。

傍らでは、美夜が慎ましく控えてその音色に耳を傾けている。


春風に舞う花の様な琴の音は、怜子達のいる座敷まで伸びやかに流れてくる。


志津は愛しげに、作り物の様な繊手で懸命に琴を爪弾(つまび)く珠緒に目を細める。

つややかな黒髪に、桜貝に似し琴爪を嵌めた指先に降り注ぐ陽射し以上に、その眼差しはあたたかい。


「けれども、懐かしい過去と同じくらい、私には生きねばならない未来があるのです」


生きたい明日がある。

守りたい人がいる。

太陽の輝きが尽きる日まで、誰よりも幸福でいて欲しいと願う相手がいる。


全てが明るい喜びに溢れた春の一日の様に、のどやかに微笑む美夜を眺めるうちに涙は止まっていた。


「どうか、これを」


レースの縁飾りのついた手巾(ハンカチ)を、志津が懐から取り出す。

濡れそぼった目元は、まだ光を孕んだ風にひんやりとする。


「ありがとう―――」


四つ折りにされたそれを広げて、怜子ははたと固まる。

手巾の片隅に青の絹糸で刺繍された、R・Kの頭文字(イニシャル)


確かに、これは怜子の持ち物であったものだ。


「その手巾、お返し申し上げます。―――十五年、経ってしまいましたが」


幼い日の記憶が瞬く間に蘇る。


九つの、茹だる様な夏の日。

父に連れられて訪れた野々宮侯爵邸で、姉娘に虐められる一人の少女がいた。

怜子はその子を憐れみ、踏まれて腫れた爪先を水に浸した手巾で冷やしてあげた。


この手巾は、間違い無くあの時のものだ。


「あなただったの、志津さん」


驚きにわななく怜子に、志津は無言の微笑みで答える。


おどおどした目の痩せっぽちの少女の姿が、目の前の女性に重なる。

魂の無い人形の様な諦観(ていかん)は、もうその三白眼には見られない。


「怜子様に受けた御恩を忘れた事は、一度として御座いません」


十五年の歳月を超えて。


あの夏の日の様に、怜子は志津と向かい合った。

一枚の手巾を巡る奇跡が、怜子の胸を熱くする。


「……ずっと、気に掛かっていたの」


春の日を透かす薄い絹地に触れ、怜子はしみじみと呟く。


「あなたが、どうしているだろうかと。辛い思いをしてはいないか。幸せでいてくれているか―――でも、きっと今はお幸せね」


「はい」


心から頷いてみせる志津の笑顔が、長年の憂いを氷解させていく。

長く苦しい冬を耐えて、彼女の幸福はようやく明るい陽射しの下に芽を出そうとしている。


「……焔さんも、お幸せになれるといいわね」


偽りなき恋情を捧げてくれた人の明日が、光あるものであれと怜子は切に願う。

春を寿(ことほ)ぐ琴の調べは、未だ止む事を知らない。


青空に向かって枝を伸ばす梅の花の蕾は膨らみ、今にも綻びそう。

(なが)き春は、(へだ)てなく全てを包む様に照り輝く。


春は来ぬ。

遠い空の下にいる、あの人のところにも。

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