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親友は同性に限るって誰が決めた?

「もしもし、今どこ?」


「あー、今ね、駅には着いたけど、出口がたくさんあって適当に出たからよくわかんない」


「いや、出口指定したじゃん」


「あ、今見えたからそこ動かないで!」


一方的に通話を終了させたのは親友の谷村。うちらは変わった組み合わせで男女の親友。親友って聞くと同性をイメージしがちだけど、こちらは異性の組み合わせだ。子供から大人になった今でも変わらず二人で遊ぶ仲。



さて、今日の遊びはというと海釣り。しかも、船釣りだ。初めての船釣りなので、道具は持ち合わせておらず、道具一式をレンタルできる船を予約した。



船着き場は横浜元町から徒歩圏内にあるので、釣りの格好をした男女が歩くには恥ずかしい街並みだった。



お腹すいたし、中華街で何か買おうかと谷村に提案したところ、いいねと快諾してくれた。中華街は食の誘惑が半端じゃない。消化の悪そうな肉まんや焼売の香りに負けてしまい、ついつい買ってしまった。



念の為、酔い止め薬を飲んだけど、そんな状態で船に乗ったのはやはり間違えだった。この日は風が強く、船がよく揺れた。出発直後は気持ちいいくらいだったけど、30分もしないうちに自分は船酔いしてしまい、船縁に頭を突っ伏していた。



それを見ていた谷村から大丈夫?と声をかけられたけど、少しだけ顔を上げて「うーん、吐きそう」と情けない声で答えた。一方で谷村はというと、顔色までは確認しなかったけど、声色は変わっていなかったから船酔いはしてなさそうだ。



頭を突っ伏してしばらくすると、船のエンジンが静かになり、揺れが軽減した。どうやらポイントに到着したようだ。船員に餌の付け方などを教えてもらい、重い仕掛けを海に沈めて竿をしゃくりあげては沈めるの繰り返しで、さっそく当たりがあった。



自分はルアー釣りの癖で竿を強くグンっと上げた途端、竿から手応えがなくなった。それを見ていた船員からアドバイスを受けた。


「アジは顎が柔らかいから巻き上げるだけで大丈夫ですよ」


「なるほどねー」


と谷村がからかうような笑顔でこちらに話しかけてきた。アドバイスを聞いた直後に谷村の竿がしなり、難なくアジを釣り上げた。その後は竿さばきが余程良かったのか、アジがどんどんかかる一方、隣にいる自分は当たりがイマイチで数が伸びない。


「釣り歴は俺の方が長いんだけどなー」


「それは湖とか川釣りでしょ。海ならあたしの方が上」


谷村は最初に川釣りから入り、その後は海釣りにシフトしていのだ。


「いやー、ラインの結び方を教えていた頃が懐かしいよ。あ、俺もきたきた!」



しばらくすると横にいるはずの谷村がいないことに気がついたけど、船の操縦室付近から出てくるのが見えた。


「中田も早く吐いた方がいいよ!すごいすっきりするから!」


「いや、谷村も船酔いしてたんかい。じゃあ、俺も行ってくるよ」


トイレで盛大に戻した。確かにすっきりした。その後は自分も順調に釣れて釣果の面でもすっきりした。



港に戻り、改めてクーラーボックスを覗く。


「たくさん釣れたね!食べきれるかな」


「サイズは小柄だから案外食べ切れるかもよ」


「それなら、この見たことない大きい魚は中田が持って帰っていいよ」


「いや、それ釣ったの俺だけど」


こうしてクーラーボックスに正体不明の魚が移された。初めての船釣りだったけど、たくさんの魚が釣れてお互い気分上々だ。ちなみに正体不明の魚は船屋の奥さんから種類と調理方法を教えてもらった。



前回は防波堤で釣りをしたけど、釣果は自分が1匹、谷村が0だったから谷村に残念な思いをさせてしまった。けれど、今回の谷村の釣果はアジが10匹以上と悪くない結果だった。自分も同じような釣果。遠慮なく嬉しい気持ちをシェアできた。



船着き場から徒歩で移動し、デートスポットで有名な山下公園に着いた。氷川丸がライトアップされて輝き、通りがかる人たちは足を止めてその輝きをスマホで撮影していた。



バラ園にあるベンチに腰掛けておしゃべりが始まった。いつもの場所とは違うけど、たまにはこういったデートスポットでおしゃべりをするのもいいかもしれない。海風、ライトアップされた氷川丸、バラの香り。うん、悪くない。



傍から見ればおしゃべりをするカップルか夫婦に見えるだろう。でも、谷村と自分はそうじゃない。元カノ、元彼でもない。もちろん不倫でもない。自分たちは中学生時代からの親友。今回もたくさんのおしゃべりができそうだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 最初からほんわかとした雰囲気が好きです。 続きを楽しみにしています。
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