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【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。3【アフターストーリー】
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ワールド・コミット!(2)

 ぐいぐいと手を引っ張られながエスカレーターを登り、広めのフロアに辿り着く。

 そこから視線を泳がせてみると、いくつもの入り口が大きく口を広げて、人の流れを飲み込んでいた。

 そこでようやく、この視界に映る全てがイベント会場なのだと理解する。


「人、すご……」


 下手したら、有名なテーマパークよりも人がいそうだ。

 マユさんは『コミット・カタログ』に載っている地図を見ながら、キョロキョロと頭を振っている。

 どの入り口から入ればいいのか、探しているのだろう。

 私一人だと、ここから目的のブースに行くことなんて、できないかもしれない。


「あっち」


 マユさんが、再び手を引っ張り始める。

 らく〜、これらく〜。

 思えば私の好みのタイプは、中学くらいの時から『引っ張ってくれる人』だった気がする。

 押しに弱いってのは、そういうところから来てるのかもしれない。


「マユさんの、好みのタイプってどんな人でした?」

「へ? なによ、いきなり」

「いや、どうなのかなーって。高校とか、中学の時とか」

「中学ぅ〜? まぁた、随分むかしの話を……」


 マユさんが、若干のジト目を向けてくる。

 それでも、歩くスピードが落ちるほど、真面目に考えてくれているようだ。


「そーだなー。かわいい子かなー」

「それは、ヴィジュがってことですか?」

「ん〜、それもゼロではないんだけど……なんていうか……反応というか、言動というか、行動というか……」

「フーン。全然わかんないです」

「聞いといてなんだ、その可愛くない反応は!」


 極めて塩な返事を返したせいか、ペチペチと頬をはたかれる。


「どうせ私は、可愛くないですよー」


 べーっと舌を出すと何故かマユさんが、じっと見つめてきた。


「なんですか?」

「……なんでもないし。さっ、行こっ」


 なんかマユさん、頬が赤いような……。

 というか、会場に近づくにつれて、暑くなってきている気がする。

 外が寒かったせいもあるのだろうけど、肌で感じられるほど熱気が凄い。

 ちょっと、上着を脱ぎたくなるほどだ。

 入り口を抜けると、中はさらに熱気と喧騒の渦が立ち込めていた。

 とてつもなく広い空間に、出店者の机が、数えきれないほど列になって並んでいる。


「わぁ……」


 視界いっぱいに広がる机の列に圧倒され、思わず感嘆の声を上げてしまう。

 いったい何列あるのか、一番奥がどこなのかすら分からない。

 この全てが出店者のブースなのだと考えると、とてもじゃないが全てを見て回るなんてできないだろう。

 みんなが足早に動いている理由は、真っ直ぐ目的のブースに向かっているからだ。

 出店者と客を含め、とにかく人・人・人である。


「これ、お目当てのブース、見つけられるんですか?」

「あ〜うん。大丈夫、いたわ」


 ほらあそこ……とマユさんが、アゴをくいと上げる。

 その先には私も見覚えのある人が、ニコニコと笑顔を見せて接客をしていた。

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