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【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。3【アフターストーリー】
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バレンタイン・キッス!(1)

※時系列にズレが生じましたので、順番を変えました

 とある平日の昼下がり。

 今日はマユさんと二人で有給をとって、桜木町でデート。

 桜木町といえば、言わずと知れた鉄板のデートコースで、観光客も多く、いつも混んでいるイメージがある。

 そのため平日の休めた日に行くというのが、私の中でのお決まりだ。


「マユさん、マユさん」


 駅からワールドポーターズを結ぶロープウェイを見上げながら、少し前を歩くマユさんを呼び止める。


「乗らないわよ?」


 秒でバレた。


「えぇ〜あぁいうのぅ〜、乗りたいじゃないですかぁ〜?」

「ワールドポーターズとか、超近いじゃん。こんな短い距離で、お金払って乗る意味が分かんない」

「移動手段じゃないんですぅ〜。アトラクションなんですぅ〜。シチュエーションなんですぅ〜」

「お上りさんみたいじゃん」

「せっかくのぅ〜デートじゃないですかぁ〜。マユさんとぅ〜乗りたいじゃないですかぁ〜」

「なに、その話し方」


 マユさんが額に手をやり、大げさにため息をつく。

 お、これは……もしかして?


「もぅ〜、乗ればいいんでしょぅ〜、乗ればぁ〜」

「なんですか、その話し方」

「ひどっ!」


 私の口真似をするマユさんをバッサリと切って、その手を取り乗り場へと向かう。

 さすがに平日の午前中、すごく空いてる。

 マユさんはチケットの金額を見て「たっか、たっか」と連呼しているが、もうここまで来れば乗るしかないはずだ。


「流石に往復は、乗らないからね」

「う〜ん……じゃあ、コスモロック21のセット券にしませんか?」

「なんだっけ、それ」

「観覧車ですよ。大観覧車の名前」


 あぁ〜、と気のない返事。

 しばらく間をおいて……


「ロープウェイか観覧車の、どっちかだけにしない?」

「セットならお得だし、いいじゃないですかぁ〜」


 と、半ば強引に決めてしまう。

 マユさんは、押しに弱いのだ。

 特に、好きな人の押しに。

 ふふふん。


「ほら、さっさと乗りますよぅ〜」

「うぅ〜なんでこんなことにぃ〜」


 項垂れるマユさんの手を握り、私はロープウェイの乗り場へと引っ張るのだ。

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