コウハビティング!(4)
大晦日の夕方は、なぜか気分が高揚する。
しかも今年はマユさんと一緒なわけで、私のテンションはバグりまくりだった。
「にょほほほ、ほ〜」
「だぁ〜、うざいうざいうざい!」
軽く酔った状態の私は、ベッドにもたれて動画を見ていたマユさんに抱きついていた。
構って欲しいのだ。
無駄に、ひっつきたいのだ。
「なによ、もー」
「一緒にテレビ見ましょうよ〜」
「一応見てるわよ……動画見ながらだけど」
「そんな“ながら見”じゃなくてぇ〜、一緒に見ましょうよぅ!」
「だぁ〜、ひっつくな、揺らすな、わかった、わかったから!」
諦めてタブレットを床に置くマユさん。
どうやら、根勝ちしたようだ。
それでも私は、マユさんの首元に抱きついたまま、鼻先を擦り付ける。
そして“くんかくんか”と、匂いを嗅ぐのだ。
「匂うな、犬か」
「マユさんの匂い、好きー」
「ったく、もー」
マユさんは半ば呆れながら、私の指をゆっくりと剥がし、そのまま指を絡めてくる。
そして私をベッドにもたれさせるようにして、そのまま唇を塞いできた。
「んんっ」
思わず小さく呻き、そのまま身を委ねようと力を抜く。
するとマユさんは、あっさりと私を解放し台所へと行ってしまった。
「えぇー、なんですか、キスだけですか!」
「なぁに、スイッチ入っちゃった?」
「入るに決まってるじゃないですか!」
「あはは、いぬ〜、わんころ〜」
はしゃぐようにして、ぴょんぴょんと飛び跳ね、喜んで笑うマユさん。
みんな見て、ほら、めちゃ可愛い。
何度も思うけど会社ではクールで、綺麗で、カッコいいのに、私の前ではこんなに可愛いのだ。
こういうの、ずっと独り占めしてたい。
「あ〜おもしろ。さて、おせち食うかぁ!」
「パーティー、パーティー!」
「年越しそば食べろよとか、おせちは正月に食べろよとか言われそうだけどね。んで、なに飲む?」
「とりあえず、泡盛で」
「とりあえずで、泡盛かよ!」
二人できゃっきゃっしながら、次々と料理を運ぶ。
するとテレビの前にあるローテーブルは、あっという間におせち料理とお酒で埋まってしまった。
これが、この二日間の成果だ。
「我ながら、よくもまぁ〜こんなに作ったわ」
「ですね。二杯目からは、弱めのお酒飲も〜」
「そうだよ。早々に酔い潰れたりしないでよね」
「しませんよ〜。少なくとも、年越すまでは起きてたいですし」
「志し、低っ!」
ケタケタと笑うマユさんを見て、しかし私は「絶対に起きてます!」と頬を膨らませて抗議した。
だって今日は、いっぱいイチャつくと決めているのだ!
それから私が目を覚ましたのは、二時間後のことだった。




