コウハビティング!(2)
「さて、明日から何しましょうか」
買ってきた缶ビールに口をつけながら、正面に座っているマユさんに聞いてみる。
マユさんは片膝を立てて、同じように缶ビールを喉に流し込んでいた。
「とりあえず明日の朝は、ADZでモーニングかなぁ。その後は買い物か……あぁ〜そうだ。休み中の食材を買い込まないとだぁね」
「ちなみに休み中って、どっか行きます?」
「ん〜特に考えてないけど……ユリは、どっか行きたい? いつも年末って、どうしてるの?」
「だいたい実家で、ゴロゴロしてますね。年が明けたら、初売りと初詣だけ行きます」
「私も似たような感じだなー。せっかくだから、小旅行とかしてもいいんだけど」
「でも、宿とか予約してないですしね」
「そだね。旅行は来年にして、今年はダラダラする?」
「何それ、サイコー♪」
私が大袈裟に喜んだせいか、マユさんが思わず吹き出した。
「ダラダラとか……付き合って最初の年末年始が、そんなんでいいの?」
「いいじゃないですか。あと今の“サイコー”は、“旅行は来年にして〜”って台詞に対してですよ」
首を傾げるマユさんに、人差し指を立てて説明を続ける。
「当たり前のように、来年の約束をしてくれたのが嬉しいんです。来年の今も付き合ってて当たり前、みたいな」
「そりゃぁ、そうでしょ。そういや、別れたりするビジョンが頭になかったわ」
「私もないですけど、あらためて嬉しいんです」
「まぁでも、当たり前でしょ?」
「まぁ、そうですね」
お互いに、少し照れくさそうに笑う。
頬が少し熱い。
もはや、愛しさしかない。
「それで、年末は何しよっか」
「この際、おせちでも作ってみませんか?」
「おせち〜?」
少し面倒くさそうに、眉を寄せてくる。
いや私だって、おせちは面倒だけども。
正直、好きってわけでもないし。
でも、なのだ。
「年越しに食べたいやつを、二人で一品ずつ凝りに凝って作っていったら楽しそうかなーって。和洋問わずに」
「あーね。昔は年末といえば、おせち手伝わさせられてたわ。それこそ、三日くらいかけてたかも」
「でしょー。どうせなら、本気でやってみません?」
「じゃあそれで、年末は最高の年越しパーティに向けて、贅沢三昧なおせちでも作るか〜」
なんとなくマユさんが乗り気になったので、私たちの年末はおせち作りから始まった。




