ダイナマイト!
ずっと推敲なし!
つまり荒いけど、早い!
そんなお気楽・執筆作業。
「あのぅ、マユさん」
下着姿のマユさんは、私の呼びかけを無視するかのようにクローゼットの中を漁っている。
「あのぅ〜マユさん。聞いてます?」
ちなみに私はまだ、ベッドの上でお布団にくるまっている。
寒いのだ。
何も着てないから。
「昨日ウニシロで買った、私のスウェットはどこですか?」
「洗った。ベランダで干されてる」
「スーツは……?」
「洗えるマークついてたから、ついでに洗った。今、ベランダ」
「はぁ……あのぅ、じゃあ下着は?」
そこでようやくマユさんが、歯ブラシを咥えたまま振り返った。
そして「んー」と唸りながら、何かを投げてきた。
見れば、まだ開封されていないスポーティーなインナーセットだ。
「洗ったから、いまベランダ。それ、まだ使ってないからいーよ」
なぜ全て洗われてしまったのかという問いかけには、応じてくれなさそうだ。
仕方なくビニールを剥がし、着用する。
でもこれって、かなり……
「あー。あんた、やっぱり大っきいから、私んじゃきつそうだねー」
「スポーツタイプだからですよ。ありがとうございます」
「ダイナマイトだね!」
「何のテンションですか、それは!」
しかし私の声も虚しく、マユさんは「デカッ! デカッ! デカッ! ダイナマイトッ! デカッ!」という謎の鼻歌を歌いながら、またしてもクローゼットに潜ってしまった。
どうでもいいけど、めっちゃ歌がうまい。
今の一瞬で、体に電流が走るほど聞き惚れてしまった。
めっちゃ、変な歌だけど。
なんかパソコンにマイクもあるし、もしかしてマユさんって……
「マユさんって、歌ってみた動画とか作ったりしてるんですか?」
ぴたりと歌が止む。
「なんで?」
「今の、めっちゃ上手かったですし。それにほら、マイクも」
「そういうのは、やんないよ。魂はベーシストだからね」
「歌、やらないんですか?」
「うっさいなー。それより、これ着て」
今度は白のカーゴパンツと、春らしい薄ピンク色のハーフジップセーターだ。
こうしてみると、マユさんの服のセンスが見えてくる。
まぁいつまでも下着のままでいるのも何だし、とりあえず言われるがまま着てみる。
「おー、そのサイズの娘が着ると、そんなにダイナマイトになるのか」
「おっさんみたいなこと、言わないでください」
「しれっと酷いこと言うね。私、パパっ子なの」
今度は靴下を投げてきた。
これも新品だ。
「ほら、出かけるよ」
「どこ行くんですか?」
「休日の朝は、ココって決めてるとこがあるの。いいから、ほら」
「このカーゴに、あう靴がないです」
「あーもう、あんたは何から何まで!」
「うぅ……ごめんなさい」
いや、これは私が悪いの?
全部、洗濯されたからだし!
いや、ありがたいですけれども!
「Mでいける?」
「私、普段はSよりのMなんで、いけると思いますよ」
「変態みたいな、会話だね♪」
「朝から、ナニ言ってるんですか!」
「キャハハッ!」
あぁ、この笑い方。
さすがに分かってきた。
この人は私の反応をみて、楽しんでいるんだ。
「ほら〜、もう行くよ!」
こうして私は選択肢を与えられることなく、マユさんにリードされてしまうのだった。