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【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。2【アフターストーリー】
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クリスマス・バトルロイヤル!(4)

「……ていう感じ」


 マユさんの話を一通り聞いて、なるほど……と相槌をうつ。


「ちゃんと相手に合わせて、飲み物変えてますね〜」

「観察されてたとか考えると、怖くない?」

「ん〜」


 顎に指をトントンと当てながら、一度脳内をフラットにして考えてみる。


「ちゃんと好きになって、本当に気になっていたからこそ、好みの飲み物とかに気づいていた、とかはないですか?」

「前向きだねぇ、ユリは」


 少し呆れられた。

 でも、それだけだと遊び人とは断定できないと思うのだ。


「とりあえずカフェに誘って、彼氏がいるのか探りを入れてるのも、ある意味健全な手順のような?」

「まぁ遊び人なら、彼氏がいようがいまいが関係ないだろうけど……」


 マユさんも、考え込み始める。


「誘い方が同じパターンなのは、誘う側としてはありがちですし」

「むぅ……」


 お〜考えてる、考えてる。

 まぁ私も、結局のところどうなのか分からないんだけど。


「私のマユさんに手を出そうとしたところは、評価に値しますね。いいセンスです」

「ユリに手を出そうとしたところもね」


 頭をポンポンとされた。

 もっとして欲しい。


「じゃあ今回も、たまたま同じ職場の人が、気になったってこと?」

「じゃないですかね。矢代さんって忙しいみたいですし、出会いのある場所が職場にしかないとか」

「今時出会いなんて、SNSでいくらでもあるのに?」

「ん〜、現物見て判断する派とか」

「現物て……」


 マユさんが缶ビールを一気に飲み干すと、何か思いついたのか、スマホを弄りだした。


「こういう時は、情報屋に聞いてみるか」

「情報屋?」

「手懐けとくと便利よー。こっちの情報も守れるし」


 話しながらも、すぐにマユさんのスマホから通知音が聞こえた。


「うわっ、さすが早っ!」

「いったい、誰なんですか〜?」

「見る?」


 マユさんがコツンと頭をぶつけてきたので、こちらもコツンとぶつけて、二人でスマホを覗き込む。

 そこには独特の文章で、返事が書かれていた。


チャコ『オー! パイセン、その人は危険デスよー』


「チャコ?」

葵 千弥(あおい ちや)。アカウント名はチャコ。社内いちの情報通よ」

「千弥さんっ!?」


 そういえば夏祭りの時に、マユさんと二人でいるところを、千弥さんに目撃されたんだっけ。

 その情報が社内に漏れていないのは、マユさんがしっかり口止めをしていたってわけだ。


チャコ『遅く帰る娘を狙って、駅前の喫茶に誘う常習犯デース!』


「えぇー!」

「ほらー、だから言ったじゃん」


 言わんこっちゃない的な顔をするマユさん。

 いやいや、でもまだ真面目に好きになった説は消えてないはず……


チャコ『ちな、私は今年の夏に誘われましたデース!』


 うわぁ……出るわ出るわ、新情報。

 ちょっとだけフォローを入れた、私が馬鹿みたいだ。


チャコ『あと、社外に彼女イマース!』


「えぇぇぇぇっ!」

「はい、ゲス認定! アイツ、超クズじゃん!」


 激アツモードに空の缶ビールを握りつぶして、ガッツポーズを取るマユさん。

 はい、私の負けです。


チャコ『しかも、二人イマース! 某、何度か目撃してマース!』


「はぁぁぁぁっ?」


 最後は、二人同時に声を上げてしまった。

 それにしても千弥さん、こわー。

 たまにいる、天性の“ゴシップに遭遇できるタイプ”の人だ。


「やばー、矢代さん、やばー」

「想像の百倍クズだったわ。それにしても……」


 マユさんが、前髪をかきあげながら続ける。


「よく社内の人に、手を出せるなー。どういう神経してんだ」

「私、手を出されましたけど?」

「私たちのは、真剣でしょ?」

「イエス、マム。私、返事しちゃいますね」


 これはもう、関わる必要なんてゼロだ。

 きっぱりと断ろう。


「待って。連絡先、交換してたの?」

「はい。断るにもDMのが楽ですし……あ、通知来てた」

「……なんて?」


 うぅ、こうなるとあまり見たくないけど……

 一人で見たくないので、マユさんにひっついて、二人で見てみる。


ヤッシー『二十三日、どうかな。行けそうなら、もうお店予約しないとだからさ』


 マユさんと、顔を見合わせる。

 そして、同時に「うげぇ」と舌を出してしまった。


「二十三日って……クリスマスでもイブでもないじゃん。私のユリを、遊び相手にしようとしてるじゃん」

「本命からほど遠くて、悲しいです」


 少しふざけて、答えてみる。

 マユさんはというと、ちょっとだけムッとしているようだ。

 みるみると目を細めていく。

 そして……


「よし……そのお誘い、受けよう」

「え?」

「オッケーするの」

「えぇぇぇぇっ?」


 怒ったマユさんは、とんでもないことを言い出したのだ。

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