クリスマス・バトルロイヤル!(2)
「で? 誰に告られたのよ?」
缶ビールを片手に片膝を立てて、ジト目を向けてくるマユさん。
風呂上がりなのか、ヘアターバンを巻いている。
泣きぼくろのある頬が、ほんの桃色に上気していて色っぽい。
「それはぁ……そのぉ……お相手のプライバシーのこともありますしぃ……名前を言っていいのかぁ……」
「ほぅ〜じゃぁ、ユリは何しにきたの? いいから、言え」
「矢代先輩です」
服従の即答である。
「はぁ〜?」
あからさまに、嫌そうな顔をするマユさん。
もしかして、矢代さんのこと嫌いなのだろうか。
一応、マユさんのひとつ上のはずだけども。
「なんで、そんな顔するんですか。社内じゃわりと人気のイケメンですよ? 清潔感あるし、爽やかだし」
「あーはいはい。とりあえず、最初から話して?」
今度は最初から説明を始める。
といっても残業してギリギリで会社を出て、そのままカフェに誘われてってだけの話なんだけど。
マユさんはというと、腕を組んだまま口をへの字にして聞いていた。
「で、断ったの?」
「いえ、まだ……即答で断るのもどうなんだろぅ……というか、同じ会社の先輩だし……フロアも一緒だし……どう断れば……」
「そんなの、普通に断ればいいじゃん」
「そーなんですけどー」
「まぁ、ユリの気持ちも分かるけど……にしても、クリスマスは家族と過ごしますーとか、何でもよかったでしょ?」
「その手があったか!」
思わずパンッと手を叩くと、心底呆れ顔をされてしまった。
でも、そんな咄嗟に浮かばないもん。
「……ったく、社内の娘には手を出すなと、あれほど……」
「なんですか?」
「いや……うーん」
何か難しい顔をして、考え込み始めた。
尋問は終わりかな?
とりあえず、マユさんの横に移動してみる。
するとマユさんが、黙ったまま私の頭を肩に抱き寄せてきた。
甘えてよし、ってことだろう。
ムフフー。
心置きなく、マユさんの肩に頬を擦り寄せる。
「で、なんで唸ってるんですかー?」
「あぁ……えっとねぇ……」
マユさんは少しバツが悪そうにしながら、言葉を選んでいき……
「去年だけどね。全く同じこと言われたのよ……私も」
衝撃の告白をしてきたのだ。




