リベンジ!(3)
歩きに歩く、京都観光。
マユさんはジムに通っているから平気なんだろうけど、普段からあまり運動をしない私にとって、かなりハードな行程である。
もしこの工程の中に喫茶店巡りが組み込まれていなかったら、午前中でギブアップしていたかもしんない。
それでもマユさんに連れられて、お洒落なカフェや昔ながらの純喫茶に立ち寄っているうちに、少しずつ頭の中で京都の地図が出来上がっていく。
「だんだんと、位置関係が分かるようになってきましたよ〜。朝は全然ピンと、こなかったのに」
「地理関係は、歩きの方が覚えられるからね。慣れれば、地下鉄も便利だよ」
「地下鉄は都内でも苦手なんですど」
「都内に住んでる人とは思えない台詞ね」
「正直、まだまだ地方民ですからね〜。そもそも地下は苦手〜。前に大阪の地下街で、迷子になりましたし」
「梅田ダンジョンは、日本最大の迷宮だからね」
ケタケタと笑われる。
あそこはダンジョンだったのか。
すごい分かる。
「地下街って、似た景色ばかりだし、人酔いしそうだしで苦手ですよ〜」
「アンタ、よく都内で暮らしていけるわね」
「マユさんがいなかったら、とっくにリタイアして田舎に帰ってたかもしれないですよ」
「リタイア、早っ! まぁでも……それなら、そうなる前に出会えて良かったと思えるかな」
今度はイケメンな台詞を言いながら、艶のある笑みを浮かべる。
マユさんの笑顔は、見てて飽きないなぁ。
「ところで、マユさん」
「ん〜〜?」
「今日は着物、着ないんですか?」
「絶対言うと思ったわ……というか、順番で言ったらユリの番じゃん?」
「あ〜、まぁ〜着てもいいですけど〜、どうせなら二人で着ませんか?」
「アンタ、人の話聞いてた?」
「だって二人でぇ〜、お互いに相手の着物を選んでぇ〜、着たいじゃないですかぁ〜。それに今日は、リベンジなんですよね?」
「リベンジ……というか、まぁ……うん。そうだね、着たほうがいいか」
あ……真剣な顔になっちゃった。
そう、今回の旅行には目的がある。
そんな中で、私の役割はというと……
「そうと決まれば、さっそく行きましょう!」
マユさんの手を引っ張って、楽しい気分にさせてあげることだと思っていた。
着物のレンタルは、前にマユさんと行った店でいいだろう。
それから、互いに着物を選ぶとなると……むっふっふっ……
「なに、そのイヤラシイ笑い方……」
あからさまに、不信感マックスのジト目を向けられる。
「なんかハロウィンの時の、思い出しますね」
「思い出したから、この顔なんだけど?」
「大丈夫ですって。悪いようにしませんからぁ〜」
「めちゃくちゃ悪役の台詞じゃん」
今からニヤニヤを隠しきれない私に、マユさんは一層目を細めるのだ。




