リベンジ!(2)
「うー、体がバッキバキ!」
マユさんがバスを降りてすぐに、思い切り手を上げて伸びをする。
京都駅のバス停は朝から混んでおり、外国人観光客によるロッカー争奪戦が始まっていた。
私とマユさんは、ほぼ荷物がないので完全スルーである。
「お尻が痛いですよ〜」
「ユリは、寝れてたからいいじゃん」
「マユさんは、寝れました?」
「寝て、起きての繰り返しだよ。そんなことより風呂行こう、風呂」
「お風呂? ネカフェですか?」
「朝食と日帰り入浴のできるホテルが、近くにあるの」
こっちと言わんばかりに、手を引っ張られる。
前に来た時は仕事だったけど、今日は単純にデートなので手繋ぎオッケーだ。
ホテルは歩いて十分もかからないところにあり、入口からモダンかつ現代風に洗練されていて、とにかくお洒落だった。
自動チェックインの機械が券売機を兼ねているらしく、大浴場利用券、小浴場利用券、朝食ブッフェ+入浴券と選べる仕様だ。
もちろん朝食を兼ねるので、ブッフェ+入浴券を購入する。
その後は二人でお風呂を堪能し、ホテルブッフェで朝食をとり、すっかり疲れがリセットされた。
まさに、気分爽快な朝の京都である。
「どこ行くんですか?」
この小旅行の目的は夜にあり、日中の予定は何も決めていない。
マユさんに、お任せなのだ。
「アンタ、旅行とか彼氏に全部やらせる系でしょ?」
「え〜? 普通そうじゃないんですか?」
「私は、自分で決めたい派だけど?」
「じゃあ、ちょうど良かったじゃないですか〜♪ さぁ、私を誘ってください♪」
「なんか腑に落ちないわ〜」
不満げに言いながら、スマホでメッセージを送ってくる。
見てみると、今日の日程表だった。
ほんとにマメだなぁと、感心してしまう。
「まずバスで下鴨神社に行って〜歩いて銀閣寺に行って〜哲学の道を歩いて〜湯豆腐のお店で食べて〜祇園に行って〜清水寺よって〜三十三間堂行って〜四条河原町に向かって鴨川を歩いてぇ……」
読み上げながら、私の声がだんだんと小さくなってしまう。
「なによ?」
「なんか、めっちゃ歩きません?」
「いいでしょ。京都は歩いたほうが、色々まわりやすいの!」
「まぁ〜お洒落なカフェとかあったら、ちょくちょく入る方向で」
「もちろん喫茶店も、めぐるよ♪」
なんかマユさんは喫茶店を楽しみたいだけで、休憩としては捉えていない感じだ。
でもこういうエネルギーに満ち溢れたところは、引っ張ってほしい私にとって大助かりである。
それにしても……スケジュール、きっちりしててすごい。
職業病じゃないかってくらい、細かいところまで決めてある。
「んじゃぁ〜京都観光、スタートぅ!」
「おぅ〜!」
二人で拳を振り上げて、小さな旅行が始まったのだ。




