リベンジ!(1)
現在、金曜日の夜九時過ぎ。
場所は新宿のバスタ(新宿バスターミナル)の、四階にある待合室。
隣の椅子に座るマユさんは、真っ直ぐに前方を見据えている。
短めの黒いタイトスカートからは、スラッとした長い足が伸び、綺麗な形で組まれていた。
細身の美脚は羨ましいし、六十デニールの黒タイツがエロみ増し増しで、通りすぎる男どもが必ずチラ見して行くのも仕方のないことだろう。
黒のライダースジャケットも、マユさんに似合っててカッコ可愛い。
ああいうの、本当に似合わないんだよなぁ、私。
──あんたは、可愛い系着れるじゃん。私、そういうの着れないもん。
これも、よく言われる。
着ればいいのにって言ったら、そっちこそ着ればいいのに、で返されるやつ。
「あ、きたきた!」
マユさんが荷物を持って、いち早く立ち上がる。
見れば目の前のロータリーに、これから私たちが乗る夜行バスが、下の階から現れたところだった。
ミッドナイトブルーのバスの行き先は、『京都駅 八条口行き』と表示されている。
「後ろの方の席でしたっけ?」
「そうそう、後ろは女性エリアなの。隣席も女性になるように配慮してくれるし、安心・安心♪」
「というか隣はマユさんだし、最初から安心〜♪」
初めての夜行バスなので、私は少しドキドキしている。
マユさんは前彼(蒼井さん)のいる京都に通っていたから、よく使っていたらしい。
新幹線より圧倒的に安いし、仕事終わりにご飯を食べてから乗って、朝には京都に着くんだから便利だと思う。
夜行バスは一般的な貸切バスと同じ、真ん中に通路を挟んだ四列シートだった。
隣が知らない人だと近くて少ししんどいけど、一席一席にプライベートカーテンが付いていて、一応は個室っぽくなるようだ。
「ユリ、窓際いっていーよ」
「窓って言っても夜だし、ずっと高速だし、寝るしなんですけど」
「通路側より、いいっての」
「まぁ〜そうですよね。じゃあ、お言葉に甘えて」
席に着くと、とりあえずカーテンを閉めてみる。
思ったよりも、個室感があっていい。
ちなみに隣はマユさんなので、カーテンをしないし、肘掛けも上げてある。
二人の個室、みたいな感じだ。
なので……
「うん?」
マユさんに腕を絡めて、肩に頭をのせてみる。
「さっきちょっと飲んだせいか、眠いんです〜」
「まぁ〜出発して三十分くらいしたら消灯だけど……早くない?」
「おやすみなさぁい。だいすきぃ」
「ズル……」
どうせ途中で目が覚めて、何もすることがなくて暇するのだ。
寝れるうちに寝て、あとでマユさんとイチャイチャしてやろう。
私はそんなふうに考えながら、すぐに眠りについてしまった。
ちなみに……
目が覚めたら、思いっきり京都だった。




