マザー・アタック!(2)
さて……マユさんが会社に行っている間、何をして過ごそう。
私としてはダラダラしていたいけど、マユさんが働いていると思うと、それもどこか後ろめたい。
とりあえず、洗濯でもしていよう。
今日は天気がいいから、夕方には乾くだろう。
「ふふふ〜ん♪ ふんふん♪」
鼻歌まじりで、私とマユさんのスウェット上下を投げ込む。
ついでに転がっていたインナーも投げ込み、洗濯開始。
あとは部屋を簡単に片付け……って、あれ?
「やっば、やっちゃった」
転がっていたインナー……私のも混ざってたらしい。
つまり私は今、裸なわけだ。
いや……裸なのは上半身だけで、下は履いてますけれども。
「上、いつのまに脱いでたんだろ。脱がされたんだっけ?」
お酒のせいで、昨日の夜の記憶がない。
まぁ昨日着ていた服はあるけど……どうせ部屋からは出ないし、このままでいいか。
そもそもマユさんのマンションは、オートロックエントランスになってるしね。
あのエントランスを通過するには、8桁の暗証番号を打ち込まなければならない。
そのため訪問者は、まずエントランスでインターホンを鳴らし、この部屋から遠隔で解錠してもらわないと入れないのだ。
つまり突然の訪問とかがなく、安心して下着姿でいられるのである。
ちなみに私は暗証番号を知っているので、普通に出入り可能……いわゆる、彼女特権ってやつ?
ふへへ。
『ラブラブ・ユリユリ♪ ラブラブ・ユリユリ♪』
マユさんが恥ずかしがって、部屋で聞くことを禁止された曲を流す。
なんという、至福タイム。
ライカさんの部屋で、ライカさんの曲を流し、そのライカさんとは恋人同士で……ふへへ。
これ、ふへへってなって当然でしょ。
私の気分も、マックス最高潮だ。
ライカさんの歌を聞きながら掃除機をかけ、洗濯物を干し、昼食の準備を始める。
野菜をカットし、焼き肉のタレとスイートチリ、カレー粉を混ぜ合わせ、フライパンで目玉焼きを焼いて取り出すと、ひき肉と野菜を入れて炒め、そこで火を止める。
あとはマユさんが帰ってきたら、ご飯と一緒に炒めてナシゴレンの完成である。
我ながら、なかなかの手際だと思う。
ちょくちょくマユさんの料理の手伝いをしていたから、覚えてしまったのだ。
思わぬ、花嫁修行である。
うん?
花婿修行なのかな?
まぁ、どっちでもいいか。
そうこうしているうちに、お昼になったようで……
ピンポーン♪
ナイスタイミングで、インターホンが鳴った。
続いて、扉がトントンとノックされる。
なんかすごく嬉しいのは、新妻気分でも味わっているせいだろうか。
私は小走りで扉の前まで行き、鍵を開ける。
もちろん扉は、迷うことなく開かれ……
「おかえりー!」
驚かそうと思って、私が抱きつくと……
「キャァ、なに!」
それは、聞き慣れない女の人の声で……
「え、真由美?」
と、聞き返してきて……
一瞬で私の頭はフリーズし……
「えっと、真由美のお友達?」
ギギギギと、錆びたロボットのような動きで私が離れると、そこには……
「えっと、あの……真由美は?」
五十代の小綺麗な女性が立っていて……
「もしかして、マユさんのお母様……ですか?」
無言で頷かれた。
ちなみに私は上半身裸で、下着一枚という……
「まず、服を着ましょうか」
ニッコリと笑顔を見せる強者お母様に、私は恥ずかしさのあまりに涙が出そうだった。




