ハッピーハロウィン・カムカム!(2)
ハロウィンの当日。
私とマユさんは、会社の帰りに駅で待ち合わせをしていた。
まず駅のロッカーに預けておいた、小ぶりのスーツケースを回収。
その後、電車に乗ってマユさんちの一つ前の駅まで移動。
駅を出れば、予約をしているお店はすぐそこだ。
「店の更衣室を借りれるみたいなんでぇ、混む前に行きましょ〜」
「う〜、気がのらないんだぜ〜」
口をへの字にして、やる気なさげにガラガラとスーツケースを引っ張るマユさん。
ちなみにあの中には、私が着るコスが入っている。
どんなのかは知らないけど。
「まぁでも、コス着て飲むだけですし。気楽に行きましょ〜」
満面の笑顔で言ってみる。
「そのコスが問題なのよ。せめてもっと、こう……違うやつがあったでしょ?」
「今さら、駄々こねないでください。あきらめてください」
「理不尽くそビッチ」
「酷すぎませんっ!?」
酷い言いわれようだけど、着せてしまえば私の勝ち。
ライカさんのコスチュームを作るのだって、すごく大変だったのだ。
資料を集め、お金を貯めて、オーダーメイド衣装の専門店と何度も打ち合わせをして、時間とお金をかけて作ったのだ。
実に納得のいく課金だと思う。
……。
…………。
なんか冷静になって考えてみると、私は何をしてるんだろうと思ってしまう。
でも。
でも、なのだ!
そんな苦労の末に、更衣室の扉を開けて現れたのは……
「くっそ、恥ずい……」
ライカ・レーシングスーツ・バージョンのコスに身を包んだ、マユさんである。
ポリエステル生地のピッチリとしたスーツで、ところどころ肌が露出していて絶妙に微エロ。
ウィッグは白シルバーと黒のメッシュで、長めのツインテール。
まさに……
「女神降臨……」
「アホなのね」
ポクっとチョップされた。
すごい。
リアルライカにチョップされた。
まさに眼福、あとでいっぱい写真撮ろう。
「あんたも着替えてきなさいよ」
ほら、とマユさんのスーツケースを押し付けられる。
まぁそれくらいは問題ないし?
ちゃっちゃっと、着替えちゃおう。
マユさんと入れ替わりで更衣室に入り、スーツケースを開ける。
そこに入っていたコスを見て、私は思わず吹き出してしまったのだ。




