サマー・フェスティバル!(3)
この花火大会には、有料観覧席である河岸シートと、堤防シートがある。
千弥先輩は、きっと河岸シートに行ったんだろう。
ちなみに無料で見るには、有料席より離れた場所にある堤防沿いや、路地の隙間から立ち見することが一般的で、上級者ともなると雑居ビルの外階段から見たりするらしい。
……で、私とマユさんはというと、さらに離れた場所にある山を登っている。
まぁ、毎日富士山を見ていた私にとって、山ってほどの山でもないんだけど。
なんなら、こんもりとした小山レベルだ。
それでも目的の神社に行くには、ちょっとした山道と、長い石段を登るしかなく……
「はぁ……はぁ……」
こんな風に息を切らしてしまうのは、仕方のないことだと思う。
運動不足だと言われれば、返す言葉もないんだけど。
「ユリ、運動不足じゃない?」
返す言葉がなかった。
なぜマユさんは、平気そうなんだろう。
「あぁ〜私、ユリと会ってない日は、ジムで走ってるし」
どうりで、スタイルがいいワケだ。
……私と同じくらい食べているはずなのに、ズルい。
「会社の帰りにジムで走って、そのままシャワー浴びてけば、うちのシャワー使わないですむじゃん?」
「まさかマユさん、浴室の掃除をしないために、ジムに行ってるんですか?」
「そりゃそうよ。そのために、わざわざシャワー付きのジムを探したんだから」
そうだったんだ。
流石というか、合理的というか。
あれ、でも……
「私、マユさんちで、何回も浴びてますけど?」
「それは、アンタが泊った時でしょ」
「エヘヘ〜。二人とも、汗かいちゃいますもんね」
「えっち」
マユさんがプイと顔を横に向け、はにかんだ笑みを見せた。
最近はマユさんのほうが、よく照れるのだ。
やたら積極的だった出会った頃のマユさんは、なんだったんだろうと思えてくる。
そして、そんなやり取りをしているうちに、お目当ての神社が見えてきたのだ。




