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【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。1
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ライトアップ・ザ・ワールド!

「お恥ずかしいところをお見せしてしまい、本当に申し訳ありません」


 マユさんが、深く頭を下げる。

 その姿を見ているだけで、胸の奥がきゅうと締め付けられた。


「いや、そもそも俺が、お客さんを入れてしまったことが原因ですよ。今回は、はっきり断るべきでした。ごめんね」


 佐原さんが、申し訳なさそうにする。

 そこで今度は浅田さんが、一歩前に出て頭を下げた。


「佐原さん、撮影時間をずらすべきでした。最上君は悪くない。俺の判断ミスです。今回は本当に、申し訳ございません」


 いやいや、と佐原さんが首を振る。


「とにかく今は、開店時間までに撮影を終わらせて、撤収しようと思います」


 浅田さんがそう言うと、カメラを構え始める。

 マユさんと佐原さんも、視線を合わせると黙って頷いた。

 しばらくシャッターとフラッシュの音だけが、店内に鳴り響いていた。

 そんな気まずい空気の中、私にとって太陽のような女性が現れた。


「失礼しまーす」


 明るい声で入ってきたのは、真希さんだ。

 ニコニコとしたまま私の隣に来ると、店内をかるく見渡す。


「うん? モッチー、あの人どこ行った?」

「あ……あぁ〜っと……」


 私が返答に困っていると、マユさんが顔を向けて答える。


「いいよ、全部説明してあげて。私が迷惑を、かけたんだし」


 うっ……それ言われると、ぜんぶ話すしかなくなる。

 どこまで話そうかと思うけれど、とにかくマユさんを庇うようにしながら、説明するしかない。


「じゃあ、かいつまんで」


 そう言って店の隅に行き、小声で説明していく。

 途中、私の感情が溢れ出そうになり、胸が何度も熱くなってしまった。

 真希さんは私の説明が終わるまで、黙ったまま何度も頷いてくれていた。


「ん、なるほど。わかった」


 そう言って真希さんが、私の頬を親指で擦る。

 一瞬、えっ……と驚く。


「泣くな、モッチー。ちゃんと、マユさんフォローしろ?」

「あ……」


 そうか、いつの間にか泣いていたのか。

 真希さんは太陽のような笑顔を見せると、もう一度強く頷いた。

 そして、くるりと背を向ける。


「浅田さん、物撮り準備オッケーですよ!」

「あぁ〜ありがとう、真希ちゃん。こっちもこれで終わり。佐原さん、撮影する商品を用意してもらえますか?」

「あぁ、はい。あぁでも、お客さん帰ったし、ここで撮ってもいいんですよ?」

「いやいや、これ以上ご迷惑をかけられませんし。車の中にセットを組んだんで、そこで撮りますよ」


 浅田さんが話しながらも、手際よく機材をまとめていく。


「ほらほら、マユさんは着物返しきてくださいよー」

「えっ……いや、私も物撮りの手伝いを……」

「いいから、いいから。マユさん、このあと宿でも撮影するんでしょ?」


 そうだけど、とマユさんが少し困ったような表情を浮かべる。


「ほら、モッチー。マユさん仕事バカだから、このままだと最後まで、こっちの撮影に付き合っちゃうよ」

「真希ちゃん。そういうわけには、いかないって」

「借り物の着物きたまま物撮りの商品を持って、車とココを往復するつもりですー? 汚したら、それこそ大変ですよー?」


 真希さんは、半ば強引にマユさんを店の外へと追い出すと、今度は私の背中を押しだす。


「ほら、しっかり支えてやんな」

「なんですか、そのイケメンな発言……」

「ふっふっふっ、あとはおねーさんに任せなさーい」


 しかし今の私に、この強引さは有難かった。

 とても優しく、その明るさに救われる気持ちがした。


「真希ちゃん、いい女になってきたねぇ」

「浅田さん、それー」

「わかってるよ。撮影終わったら、好きなだけ焼肉おごるよ」

「きたこれー!」


 その明るさは、どこまで本気なのか。

 私は背中を押されながら、本当に太陽のような女性だなぁと思えた。

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