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【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。1
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ハービンジャー・ストーム!

「モッチー。ちっちゃいレフ板、出しといてぇ」


 真希さんが、組み立てたスタンドにアンブレラを差し込みながら言う。

 レフ板……光を反射させる板だよね……と、カメラマンが持ってきた大きなバッグの中を漁ってみる。


「机に立てるやつねぇ。光を起こすやつ」


 言ってる意味がわからないんだけど、三十センチくらいの白い板はすぐに見つかった。

 板にはぐにゃぐにゃに曲がった太い針金が貼り付けられており、これがスタンド代わりになるのだろう。

 なんていうかカメラマンの小道具は、手作り感満載の物が多い。

 マユさんの話だとスケジュールの空いた日は、買うと高い小道具を自分たちで作ってしまうらしい。

 創意工夫が経費節約にもなり、一石二鳥なんだろう。

 そうこうしていると、外から他のカメラマン達が入ってきた。


「うーん、なんかなぁー」

「まぁ準備はしとくべ」


 まだ名前を覚えていない、残り二人の男性カメラマン。

 えっと……と、ほんの少しだけ戸惑っていると……


「吉岡さんと、和田さんだよ」


 真希さんが小声で教えてくれた。

 意外に視野が広い。


「あの……吉岡さん、和田さん、どうしたんですか?」


 私が声をかけてみると、二人が困ったように説明を始めた。


「いやー、十九時に来る予定だった客がさ、もう来たんだよ」

「えぇぇ、早くないですかぁ、吉岡さぁん」


 真希さん、ナイス。

 こっちの痩せてる人が吉岡さんね。


「いま、店長の佐原さんと話してるんだわ。なんか最上さんも困ってた風で……珍しいべな」


 こっちの、訛りがキツい人が和田さんか。

 吉岡さんは三十、和田さんは四十代だろう。

 二人とも、ベテラン感がすごい。

 ていうか、マユさんが困ってた?

 たしかに珍しい。


「あれぇ? じゃぁこのセット、バラす感じですか?」


 真希さんの質問に、吉岡さんが頭を掻いて頷く。


「まだ分かんねーけど、車の中で物撮りのセット作っておこうかって、浅田さんが言うからなー」

「まぁ、しゃーないべ。吉岡くんと俺は先に車でセット作っとくから、真希ちゃんはここバラしといてくんね?」

「うげぇ、せっかく組んだのにぃ」

「まぁ、店長と最上さんのシーン撮影は、店内でするしかないかんな。真希ちゃんは最悪、車まで撮影商品持って行き来することになるわな」

「それは重ね重ね、うげぇ」


 べぇと舌を出しながら、片付け始める真希さん。

 私もそれを手伝いながら、マユさんは大丈夫かなと心配になっていた。

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