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【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。1
37/101

ラッシュ!

39度の熱&GWまでは超絶多忙のため、ちょっと更新ペース落ちてます。

 先斗町(ぽんとちょう)の通りをさらに南へと下り、細い路地を曲がると、その奥にバー『凛ノ音(りんのね)』が現れる。

 隠れ家的な雰囲気があり、初見で入るには勇気がいりそうだ。


「ねぇねぇマユさん。途中にある店、入り口はあるのに、看板とかノレンがなくて何屋だかわからなかったんですけど、あれが一見さんお断りってやつですか?」

「ん〜私もよくは知らないけど、普通に予約すれば入れるお店が多いらしいよ。まぁ予約しなきゃダメなんだから、一見さんお断りといえばお断りなんだけど。でも予約なしで入れる店も、けっこうあるはずだよ」


 話しながら、石畳を闊歩する和装ロックのマユさん。

 通り過ぎる男の視線が、高確率でマユさんを追いかけている。

 うんうん、かっこいいよね〜、美人だよね〜、と思わず私も頷いてしまう。

 もちろん普通の着物でも良いんだろうけど、マユさんが着ているような黒レースの着物は、観光地だからこそ許される記念コスプレの感覚に近い。

 なんていうかテーマパークに行って、キャラクターグッズを身につけるのと同じ感覚だ。


「まさに旅の思い出に、普段とは違う特別な体験を〜って感じですね」

「なんの話よ?」


 首を傾げるマユさんに、それですと指をさす。


「あぁ〜着物ね。そだね。体験型イベントとして考えれば、ちょっと楽しいかも。どうせなら、二人で着たかったけど」

「まぁ、半分仕事ですからね」

「全力で仕事だよ!」


 ポクっと脳天に、手刀を落とされる。


「痛ぁっ!」

「あんたが、馬鹿なこと言うからでしょ」

「うぅ〜。ちなみにその着物、何時まで借りられるんですか?」

「一応、撮影協力ってことで特別に二十時まで。遅れそうなら、連絡してくださいだって」


 ふむふむ。

 二十時ならバーの取材も終わっているはず。

 もちろんそのためには、スムーズに撮影が進むよう、しっかりと段取りを整えなくてはならない。


「よし。じゃぁ〜気合い入れ直して行きましょう!」


 私が右手を振り上げると、マユさんが「おう〜」っと同じように手を上げて応えてくれた。

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