表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。1
30/101

ビッグ・バス・キス!

 撮影はいたって順調、さすがはプロのカメラマンだ。

 きっとマユさんの段取りの良さとカメラマンの手際の良さが、うまく噛み合っているんだろう。

 実際、外観・エントランスと特に問題なく終わり、今は事務所で女将さんの撮影をしている。

 ちなみに、私とマユさんは一足早く大浴場に行き、次の撮影の準備をしていた。


「さすがに、湿気がすごいね」


 マユさんが、幾つもあるシャワーヘッドの角度を真正面に直しながら、ため息混じりに言う。

 私はというと、風呂桶を綺麗に並べているところだ。


「さすがにスーツだと……もうベタベタなんですけどぅ」

「ほんとだ。ユリ、した透けてるし」

「えぇーっ」


 慌てて視線を落としてみると、確かに白のブラウスから白ブラが透けて見え始めている。


「アンタ、カメラマンが来たらジャケット羽織りなさいよー」

「この状態でジャケット着るの、超・抵抗感あるんですけど……て言うか、マユさんはあんまり透けてないような?」

「あー、今日はスポブラにキャミだから。こうなるのは予想済みー」

「なら教えてくださいよ!」


 ケタケタと笑い出すマユさん。

 どうやら私が困ると、とても楽しいらしい。

 

「……そう言えばマユさんって、真希さんと仲良いんですか?」


 うん?と首を傾げるマユさん。

 やがて「あー」と声をあげる。


「仲良いっていうかさー。あの娘、距離感バグってるからねー」

「ほぼ初対面の私にキスしてきたマユさんが、それ言うんですか?」

「あれはバグじゃなくて、適正距離だよ?」


 くっ、そうきたか。

 ちょっと嬉しい気がする私は、この暑さでどうかしてるのかもしんない。


「あの娘、まだ二年くらいだけど、いい感じのいじられキャラだからねー。性別年齢問わず、みんなにあんな感じなのよねー」

「それにしても、すっごい抱きついてましたけど?」

「なんかねー、私の腰を見てると折りたくなるとか前に言われ……」


 そこでマユさんが、ハッと目を見開く。

 そして、おもむろに近づき……


「やーん。もしかして、妬いてるの?」

「やっ……妬いてなんか」

「えー」


 マユさんが私の頬を両手で挟み、顔ごとくいと持ち上げる。

 お風呂で蒸されたせいかマユさんの頬が上気し、ピンク色に染まっていた。

 さらに湿度のせいで、唇も艶かしいほどつややかだ。


「ちょ、ダメですって。ここじゃ!」

「ここじゃなきゃいいの?」


 そう言いながら、マユさんが唇を近づけてくる。


 そうじゃなくてっ!


 ……と頭の中に浮かんだものの、声にしなかったのは、無意識でその先を受け入れていたのかもしれない。

 そのまま私が、トロンとした目でマユさんを見つめていたら……


「マユさーん、撮影終わりましたよー。次はここでいいんですかー?」


 真希さんの大きな声が、入り口から聞こえてきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ