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【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。1

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オーサム!

「あー……えぇ……っと……」


 マイクを持ったまま、気まずそうに視線をそらすマユさん。

 一方の私は顔を真っ赤に上気させて、大きく目を見開き、マユさんの次の言葉を待っていた。


「あー、はい。どうもー、ライカでーす」

「きゃー!」


 思わず立ち上がり、両手で拍手をする。

 しかし私の興奮はそれだけでは収まらず、ソファの上に登ると、その場でピョンピョンと飛び跳ね始めた。


「ちょ、ちょっと落ち着いて。ほんと、実際の中身はこの通り、たいしたことないんだから」

「なに言ってるんですか! ライカさんなんですよ! 私の大好きな!」

「わかったから、アンタがファンなのも理解してるから、とにかく落ち着いて」


 そうは言われても、目の前に本物のライカさんがいるんだから、落ち着くだなんて無理に決まってる。

 生なのだ。

 リアルなのだ。


「じゃあ、ここ、ここ! 隣に座ってください!」


 私がバンバンとソファを叩くと、マユさんが嫌そうに隣に座った。


「本当に……ライカさんなんだ。本物の……」

「あぁ……まぁ……はい、本物です。会社では言わないでね?」

「言わないですよぅ〜そのかわりぃ〜」


 目を合わせようとしないマユさんの横顔に、鼻先がぶつかりそうなほど顔を近づける。

 改めて間近で見ると、本当に綺麗な横顔だ。

 細身な首筋から肩にかけての肌が綺麗で色気もあるし、足だって細くて真っ白で……


「あのー、ユリさん?」

「なんですか?」

「アンタ、さっき百合禁止って言ってなかったっけ?」

「これは百合じゃないです。憧れの現物を、生で触って確認しているんです」


 私がマユさんの体をベタベタと触っていることに、ちょっと引いているようだ。


「いや、ほんと、ちょっと触りすぎというか、触り方がエグいというか」

「マユさん、私に対してあんだけのことをしといて、今さらソレはなくないですか?」

「うっ……」

「キス2回、裸で朝をむかえたのも2回ですよ?」

「いやそれは、その……その通りだけど……」


 おや?

 おやおや?

 なんかマユさん、ちょっと頬が赤いような?


「マユさん、私に触られるの恥ずかしかったりします?」

「恥ずかしいというか……アンタ、急に積極的すぎない?」

「そりゃあ、積極的にもなりますよ。だって、ライカさんがマユさんなんだから」

「それって恋愛感情じゃなくない?」

「マユさんは好きですよ? ライカさんは元から好きですし」


 マユさんが、むぐっと言葉を飲み込む。

 若干、戸惑っているようにも見える。

 あんなに積極的なマユさんから、また違うギャップが生まれてる。

 また、みんなの知らないマユさんを知れて嬉しい。

 こんなこと知っているのって、私以外に……


「じゃあマユさんの彼氏って、やっぱり……」

「ん、ブルームーンPだよ。だから、絶対に言わないでね。私はともかく、相手に迷惑かけるのは大人として、絶対に嫌なんだ」

「はーい、絶対に言いませーん」


 私が素直にそう答えると、マユさんはようやく私の目を見て、安堵の表情を浮かべながら「ありがとう」と返すのだった。

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