表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。1
23/101

デトミネーション!

「ねぇ、他の曲にしない?」

「しませんねー。私がライカさん好きなの、知ってるじゃないですか」


 うー、と頭を抱えて唸るマユさん。

 私は構わず、曲を入れる。

 ほどなくして、イントロが流れ始めた。


「はい、どうぞ」


 私がマイクを差し出すと、マユさんは長ソファの上で、うつ伏せに寝転がったままマイクを受け取った。

 そしてそのままの姿勢で、だらしなく歌い始める。


 うまいのは、うまいんだけど……


 私は曲をキャンセルし、もう一本あるマイクを握った。


「マユさーん。明らかに手を抜くのは、なしの方向で」

「おにー!」


 ぐったりと項垂れ、今度は駄々をこねる子供のように足をバタバタとさせる。

 相変わらず職場とのギャップがすごい。

 とにかく可愛い。

 正直、尊い。

 このモードのマユさんを私しか知らないのかと思うと、ある種の優越感すら覚えてしまう。


「そういうマユさん、もっと見せてくださいよ。なんだかマユさんの秘密を独り占めしてるみたいで、けっこう嬉しいんですよ?」


 わりと、正直な意見である。

 するとマユさんは、ばたつかせていた足をぴたりと止める。


 長い沈黙。


 何か、深く考えているようだ。

 やがてなにか決意をしたかのように、すっくと立ち上がった。


「曲、入れて」


 凛々しい横顔だった。

 その迫力に押されてもう一度曲をリクエストすると、マユさんがようやく私の方を向く。


「色々と、話さなきゃいけないことがあるって言ったよね?」


 私がこくりと頷く。


「いいよ。とりあえずひとつ、話す」


 そうして、マユさんが歌い始めた。

 本気の歌だ。

 その歌声は自信に溢れ、力強くて艶があり、時に切なげで……まるで何人もの歌い手を憑依させているかのような……いや、もう言葉で誤魔化すのはやめよう。

 間違いない。

 マユさんは私の大好きな、ライカさんだったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ