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【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。1
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ギャップ・エモーション!

 土曜日はマユさんと映画に行き、お昼はパスタを食べ、ショップをブラブラし、暗くなる前に服を取りに行った。

 さすがに、夕食時まで一緒にいるのは迷惑すぎるだろうと考え、十六時にはお別れをした。


 日曜日は、死んだように寝ていた。

 とにかく色々とありすぎて、疲れていたのだと思う。


 そして、月曜の朝。

 たっぷりすぎるほど、睡眠をとったせいだろうか。

 あの激動の週末が現実に起こったことなのか、イマイチ実感を持てなかった。

 とりあえず会社に出社し、マイボトルにいれてきたコーヒーをマグカップに注ぐ。

 熱い珈琲を喉の奥にゆっくりと流し込み、ふぅと一息つく。


 ……またクロワッサンのところの珈琲を飲みたいな。


 マユさん、また一緒に行ってくれるだろうか。

 でも行くとしたら休日の朝だし、難しいかもしれない。


「夕璃ちゃん、おはよー」


 元気に挨拶をしてくれたのは、一年先輩の千弥さんだった。


「おはようございます、千弥さん」

「初出社で疲れたでしょー。よく眠れたー?」

「はい、ぐっすりでした」


 疲れた理由は、初出社が原因じゃないんですけどね。

 いや、まぁ私の酒癖が原因なんですけどね。

 でもやっぱり、原因の一端は……


「おはようございます」


 マユさんの声が、フロアの入り口から聞こえてきた。

 やっぱり二人でいる時と違って、少し声が凛々しい気がする。

 なんというか、距離のある話し方だ。


「おはようございまーす」

「おはよう、葵さん」


 そういえばマユさんは、千弥さんに対しては葵さんって呼んでいる。

 いや……他の人に対してもだ。

 誰と話していても、苗字で呼んでいた記憶がある。


「おはよう、夕璃ちゃん」

「おはようございます、マユさん」


 やっぱり、私だけ名前で呼んでいる。

 しかも“ちゃん”付けだ。

 なんとなく疑問に思い、席につくマユさんを見つめる。

 すると目が合ってしまい、思わず目を逸らしてしまった。

 ほんの一瞬で、あの朝を……寝起きのマユさんを思い出してしまったのだ。

 あぁ、これはマユさんに揶揄われるパターンだと気づく。


「夕璃ちゃん」


 ほら、きたー。


「はい」


 少し頬が熱くなっている気がする。

 なんか意識しすぎだ、私。


「今日の予定を説明するから、支給されたタブレット持ってきて」

「あ……え、はい」


 ものすごく真面目に返されてしまった。

 そうだ、ここは職場なんだ。

 ちゃんとマユさんのように、仕事モードを分けなくちゃだ。

 どうも私は、まだ学生の気分が抜けていないのかもしれない。


「葵さん、朝のミーティングは先週話した通りに進めておいて。私は会議室で彼女に今週の予定と、主な仕事の流れを教えるわ」

「はーい、了解でーす」

「ん、よろしく。じゃあ夕璃ちゃん、会議室に」


 マユさんはノーパソを小脇に抱え珈琲を片手に、颯爽と歩き出した。

 私は慌てて、それについて行くのだ。

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