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【完結済】あなたが、ユリを望むなら。  作者: Ni:
あなたが、ユリを望むなら。1

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ユリ・アタック!

 何だかんだ朝食を楽しんでいると、テーブルの上に置いてあったスマホがブルッと震えた。

 そのまま通知を見てみると、見知った名前が出ている。


「なに、彼氏?」


 覗き見られたらしい。

 まぁ、いいんだけど。


「元、ですよ。元」

「より戻そう、とかじゃないの? 二日目だし」

「二日でそんなこと言ってきたら、じゃあ二日前のは何だったのって思うんですけど」

「構って欲しいのよ。結構そういう男って多いよ」


 そんなもんですかねーと、クロワッサンにかじりつく。


「彼女が就職して、新しい職場に行く。そこで新たな出会いがあって、声をかけてくる男もいて……とか、勝手に想像して嫉妬でもしたんじゃない?」

「それこそ、私を疑ってるみたいで、幻滅なんですけど」

「でもーじっさいー、二日もお泊まりしてー、キスまでしたしねー、ユリちゃんってば」

「それは……そう」


 だとしても、今更だ。

 なんか自分でも思っている以上に、未練がない。


「もどってあげれば?」

「い、嫌ですよ。もしそんな理由なら、今後も定期的にこういうのあるってことじゃないですか!」

「まーねー。束縛系なんだろーねー。でもそれって、それだけ好かれてるってことじゃない?」

「好きならばこそ、信じてほしいですし、ある程度の自由も認めてほしいです」

「そだねー。束縛系だと、私んちにお泊まりとかも、できなくなるしねー」

「そうですよ」


 まったくもう……と残りのクロワッサンを、勢いのまま口の中に詰め込む。

 しかしほっぺたが膨らむほど詰め込んでしまったので、飲み込むことができず、私は慌てて珈琲に手を伸ばした。

 しかしそれを邪魔するように、マユさんが手を絡めてくる。

 びっくりしてマユさんの顔を見ると、またしてもあのニヤニヤ顔を浮かべていた。


「いま、そうですよって言ったよねー?」

「ふがっ!?」


 言った。

 確かに、無意識で言ってた!


「そっかー、ちょっと私のこと意識してくれるのかー」

「そ、それは……いや、たしかにこの二日間、楽しかったのは認めますけど」


 それは事実だ。

 本来ならフラれたショックで落ち込んでいるはずの二日間なのに、そんな感情が一切ないのだ。


「おっ、女友達としてっです! すごく楽しいので、これを邪魔されるのは嫌なだけです!」

「へー」

「別にその、お泊まりじゃなくてもいいですし!」

「ほー」

「そもそも、そういう肉体的な関係は、求めてないですし!」

「ふーん」


 なんですか、その反応はと半目で返す。

 まだ楽しんでいるようだ。

 やがてマユさんは、やれやれと口を開いた。


「そこ、どうして抱かれてる前提なのかなー。ユリちゃんが私をおそった、とは考えないのかなー」


 えぇ?

 いや記憶にはないですけど……えぇ?

 私からってこと?


「お、おそったんですか?」

「ひみつー」


 そして、キャハハと笑い出すマユさん。

 やっぱり、どうしても憎めない。

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