テイクアウト!
外から、可愛らしい雀の鳴き声が聞こえてきた。
カーテンの隙間からは朝日が差し込んでおり、私の露出した肩を照らし出している。
ぽかぽかとして、とても心地良い。
……あれ?
昨夜は、裸で寝てしまったのだろうか。
私が何年も愛用している、ピンクのもこもこルームウェアを着ていない。
「昨日ってたしか……」
記憶を探ろうとするが、寝起きで頭が回らない。
とりあえず体を起こし、手探りで眼鏡を探そうとする。
ムニュ。
うん?
ムニュムニュ。
なんだろう、この慣れ親しんだ感触。
適度に柔らかく、それでいて形が崩れない弾力。
あぁ、そうだ。
これは、例えるなら女の子の胸と同じ感触だ。
胸なら私も持っているから、よく知っている。
なぜここに同じ感触があるんだろうと疑問に感じつつ、枕元を探ると眼鏡が見つかった。
「う〜、頭いたい」
この頭痛は、お酒によるものだろう。
少しずつ、昨日の記憶が蘇ってくる。
たしか昨日は……彼氏にフラれて……一人で飲みに出たんだっけ。
そう考えると、これ以上思い出したくない気分になる。
とりあえず頭痛薬を探そうと部屋の中に視線を向けると、そこは……
「えっ……」
見知らぬ部屋だった。
シックなグレーを基調とした、冷たい印象を持つ部屋。
私の部屋はもっとこう、ガーリーで明るいはずだ。
「どこ、ここ」
なにか手がかりはないのかと、注意深く見回す。
最初に目を引いたのが、壁にかけられた三本のギターだ。
弦が四本だから、たぶんベースなんだろう。
他にも気になるものはある。
それは、ゲーム配信者が使いそうなゲーミングチェアと、LEDの間接照明が組み込まれたテーブルだ。
怪しげな光を放つテーブルの上には、中身が透けて見えるパソコンもある。
パソコンの横には本格的なマイクがあり、マイクにはよく見る網々がついていた。
床には昨日着ていた自分の服と、見知らぬ女物の服が、乱れるようにして重なり合っていた。
そこでようやく、先程の感触の元へと視線を移す。
「えぇっ……?」
眼の前の光景を見た瞬間、鈍器で頭を叩かれたかのような衝撃を受けた。
そこには、見知らぬ女性が眠っていたのだ。