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お呼び出し

 殺戮メイドが爆誕した話はさて置き、ルーミアがこなしてきた仕事の事務処理などを終え、依頼報酬を渡すリリス。

 報酬を受け取りはしゃぐ少女の落ち着かない姿を半目で眺め、注目を集める彼女から物理的な距離を取ろうとカウンターを離れようとしたリリスは「あっ」と何かを思い出したように口を開いた。


「そうでした。ルーミアさんが戻ってきたら連れて来てほしいって言われてたんでした」


「連れて?」


「はい」


「えっと……誰にですか?」


「ギルド長です」


「ゔぇっ? い、いったい何なんでしょう?」


 リリスはギルド長ハンスから言伝を預かっていた。

 それはルーミアが戻り次第共に来てほしいというもの。

 だが、その理由までは聞いていない。何の用で呼ばれているのか見当もつかないリリスはルーミアを半目で射貫いた。

 そして、そのことを告げられたルーミアはビクッと肩を震わせた。


「どうせまたルーミアさんがなんかやらかしたんじゃないですか?」


「どうせまたって何ですか! 何もしてないですよ……多分」


「何もしてない人はそんな風に挙動不審にならないんですよ」


「えぇ……本当に心当たりないですよ?」


「いっぱいありすぎてどれか分からないだけでは?」


「辛辣っ? あれぇ……でも、そうなのかなぁ? そんな事ない……はずなんだけどなぁ」


 ルーミアの行動が突拍子もないのは今更の事。本人も気付かぬうちに何か仕出かしているのだろうとあらぬ疑いをかけられる少女だったが、その返事はどうにも歯切れが悪い。


 本当ならば自信を持って問題となるような行動はしていないと胸を張って言いたい。だが、もしかしたらと思うとはっきりと明言できない。ルーミアは目を泳がせながらごにょごにょと濁した。


「ほら、早く行きますよ。ちゃんと謝れば許してもらえますって」


「やっぱり私が悪い事した前提なんですね!? 私が無実の可能性はないんですか?」


「ルーミアさん。寝言は寝てから言うんですよ」


「酷いっ!」


 ハンスが何用で呼び出したのかは定かではないが、ルーミアに非がある前提で話を進めようとしているリリスはどことなく楽しそうだった。

 大袈裟に反応するルーミアのコロコロ変わる表情を眺めて遊んでいるのだろう。


「嘘ですよ……半分くらい」


「もう半分は!?」


「ふふふ、どうでしょうね?」


 何はともあれ、呼ばれているのだから顔を出すしかない。

 ルーミアは不安を隠せない様子で、リリスの背中にピッタリと張り付きながらハンスの待つ部屋へと向かうのだった。


 ◇


「すみませんでした!」


 緊張した様子で入室し、ゴクリと唾を飲み込んだ。その次の瞬間、床に頭突きでも繰り出そうとしているかのような勢いで頭を下げ、ルーミアは謝罪した。


「えーっと、それは何についての謝罪かな? とりあえず頭を上げて」


「あ、はい」


 突然の出来事にハンスもついていけていないのかやや困惑している。

 まだ呼び出しをした用件について口にしてもいないのに、何を早合点しているのだろうかと不思議に思いながら謝罪を止めさせ頭を上げるように言う。

 ルーミアはルーミアで想像していたような展開が起こらないことに眉をひそめた。

 ルーミアの不安を煽ったリリスはこの状況を見て、プルプルと肩を震わせて声を押し殺している。


「私を怒るために呼んだんじゃないですか?」


「うん? それは初耳だねぇ。怒られたいなら怒るための材料を探してきてもいいけど、君は怒られたいのかな?」


「い、いえ! 怒られたくないです!」


「じゃあこの話は終わり。本題に入っていいかな」


「はい!」


 元々、ルーミアを叱るつもりで呼び出したわけでもない。

 ルーミアもわざわざ粗探しをされてまで怒られたいという特殊な性癖があるわけでもないので、お叱りは辞退して安堵の表情を浮かべている。


「じゃあ、とりあえずこれを読んでくれるかな?」


 安心に浸るのも束の間。

 ハンスは本題を切り出してルーミアの前にあるものを差し出した。

 それを手に取ったルーミアは恐る恐るその折りたたまれていた紙を開いた。


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