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もう一つの素材

 ルーミアの装備新調。

 その素材に見事抜擢された金剛亀の甲羅。

 高い物理耐性、魔法耐性を持ち、その硬さという最大の強みを活かした装備は攻守共に優れたものになることが予想される。


 しかし、ルーミアが考える最高の装備とするには、一つだけ見逃せない点があった。

 それは魔法との相性だ。


「これだけで作ってしまうと魔法親和性が心もとないというか……私の魔法のコストが大きくなりそうです」


「なるほど……前の金剛亀討伐も装備の新調のためでしたか。だからこの依頼……確かにこの魔物の皮などは魔法との相性がいいとよく聞きます」


 ルーミアがまたしても自分で選び取った依頼。

 その内容はブラックアリゲーターの討伐だった。


 金剛亀の素材は確かに一級品だ。

 それで作られた装備は硬く物理攻撃の威力なども上がるだろう。

 だが、その防御性ゆえに魔力を弾いてしまう性質がある。その特性はルーミアがよく使用する属性を付与する魔法や重さを軽くする魔法などの効果を弱めてしまうもので、彼女の強みを殺してしまうものだった。


 そのため、その欠点となり得る性質を調和するための必要素材。

 ブラックアリゲーターは今現在ルーミアの装備しているガントレットにも使われている素材で、魔法との親和性も十分にある。それでいて強度も申し分ない。

 それと混ぜ合わせた装備にすることで、物理性能を高めた上で、魔法親和性もしっかり確保した理想の配分にしようという考えがルーミアにはあった。


「ルーミアさんってそういう魔法との相性とかも分かるんですか?」


「まあ、大体は。実際に作ってもらって完成形を見ないと何とも言えませんが、この素材だけは現時点でもかなり魔法を弾いてしまっているので……ちょっとって感じですね」


 実際に装備を作るのはルーミアではないが、彼女とて白魔導師の端くれ。

 素材が魔法と馴染むか、それとも魔法を弾いてしまうかくらいならば触れて魔法を通してみれば簡単に判明する事だ。

 そのため、金剛亀の甲羅だけで作る装備では恐らく満足いくものは出来上がらない。ルーミアの感覚がそう告げていた。


「ブラックアリゲーターはルーミアさんが今使っているガントレットの素材にもなっていますもんね。なるほど……確かにそれと合わせて作ってもらえばいいものができそうですね」


「そうだといいですが……! とりあえずどうなるか分からないので、素材確保のためにこちらも多めに狩るつもりです」


 今回も多めに素材を確保することを目標にしているルーミア。

 理想の装備が出来上がるまで妥協しないという意志が現れている。

 そのための素材集めならばどれだけ労力がかかっても惜しくはないということだろう。


「こっちの依頼は金剛亀と違ってかなり危険ですよ。特に人間の血の匂いには敏感で、群れで襲いかかってきます。回復も浄化もできるルーミアさんなら大丈夫だとは思いますが……くれぐれも気を付けてくださいね」


「血の匂いで……? へぇ、それはいいことを聞きました。血の匂いでおびき寄せられるってことですか。なら結構楽できそうですね」


「あの……人の話聞いてました? 危ないのでダメですよ? 絶対やっちゃダメですからね……!」


「善処はしますよ。善処は……ね」


 注意喚起のつもりで情報を口にしたリリスだったが、ルーミアの反応を見て余計なことを言ってしまったと後悔した。

 索敵手段に乏しいルーミアにとって、敵の方からやってきてくれるのはむしろありがたいこと。

 たとえそれがどれだけ数が多く、一斉に押し寄せてくるものだとしても、ルーミアならばやってしまう。もはや意味を為さないだろう念押しをしながら、リリスはそんな確信を覚えていた。


 冒険者を危険にさらさないための忠告。

 それを聞き、危機に嬉々して飛び込んでいくだろう白い少女を恨めしそうにじとーっと睨みつけるリリスだった。

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