表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/169

受付嬢の独白②

 そういえばこの頃からでしょうか?

 ルーミアさんとの関係がより濃密なものになったのは……。


 ルーミアさんがソロの白魔導師という意味不明なことをしているから、対応する側としては困ったものです。やはり白魔導師と言うのは後衛職。そもそも一人で活動するなんてあり得ないし、討伐依頼なんてもってのほか。


 みんながみんなルーミアさんのことを知っている訳じゃないですし、マニュアル通りの対応をするのならば、ルーミアさんに討伐依頼は紹介できません。

 そこで私がルーミアさんの対応をすべて引き受けました。彼女が意味不明なことを口走っても円滑な対応ができるようにです。


 今となってはもはや当たり前になってしまったルーミアさんへの討伐依頼の斡旋も、慣れない初めのうちは頭がこんがらがってしまいました……。

 ですが、私は悪くありません。全部ルーミアさんが悪いんです。絶対そうです。間違いありません。




 おかげでルーミアさんが白魔導師だということを忘れてしまった私は彼女に驚かされることになりました。

 その日の私は手を怪我していました。私としたことが書類作業でうっかりやってしまったそれは、応急手当の包帯越しでも血が滲んでくるのが分かるくらいには深かったです。ザックリです。地味に痛いです。


 そんな失態がルーミアさんにバレてしまったわけですが、なんとびっくり。彼女は私に回復ヒールをかけてくれたんです。それはそれはもう、本当に驚きましたよ。ヒールってどこの国の言葉なんだろうって思ってしまいました。


 今のルーミアさんの格好からは想像もできないですが、彼女……白魔導師なんですよね。日頃から暴力とか殴るとか蹴るとか、そういうことばかり口にしているのでつい忘れがちですが……一応白魔導師だったんですね。

 綺麗に治っていた私の手。ルーミアさんがちゃんと白魔導師なんだということを再認識させられた日でした。



 そんな白魔導師だけど白魔導師らしからぬルーミアさんは次第に有名人になっていきました。

 ……悪い意味で、ですが。


 白魔導師は一人で活動できないというのはやはり共通認識で、ソロで次々に結果を出すルーミアさんを奇怪な目で見る人はそれなりにいました。

 その中の、ルーミアさんに嫉妬している冒険者でしょうか。

 白魔導師の癖に討伐依頼を何事もなくこなせるなんておかしい、不正していると騒ぎ立てる輩がいたわけです。


 もちろんルーミアさんはそんなことはしません。

 何か不正があったのならそもそもギルドが依頼達成の受理を認めません。

 そのことを言及したら、私がグルなのではないかと詰められました。


 ルーミアさんと接する機会が多く、比較的仲の良い私がルーミアさんの不正の手助けをしている。そんな風に言われた私は咄嗟に反論できずに黙りこくるしかできませんでした。。

 そんな時、ルーミアさんが怒りの声を上げました。


 普段の彼女からはとてもじゃありませんが想像もできない低くて冷え切った声。

 思わず一歩後ずさってしまうような迫力に気圧された私でしたが、その後のルーミアさんの言葉に目を見開きました。


 私のことを友達と言って、私のために怒ってくれたんです。

 ルーミアさんの方がよっぽど酷い言いがかりをつけられているのに、自分の事じゃなくて、私のために……。


 そして、その後私はルーミアさんの暴力を初めてこの目で見ることになりました。それはもう圧倒的で、彼女より一回りも体格が大きい男性を蹴り飛ばし、壁に蹴りを入れた迫力だけで意識を刈り取るといった実力行使。

 彼女が日頃から口にしている、暴力はすべてを解決するというのを分からされた瞬間でした。


 ルーミアさんはあの時人目もはばからず大暴れしてしまったことに負い目を感じていたようですが、そんな風に思う必要はありませんよ。

 そして……私のために怒ってくれるルーミアさんは、とてもかっこよくて輝いてました。彼女がもし男性だったらきっと惚れていたに違いありません……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ