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オーダーメイド

「ほお、こりゃまた面妖な……お前さん。自分が歩けなくなるような重量のブーツなんて履いてどうするんだ?」


「その上で動くんです。私にはそれが……できます」


 店の奥から現れた男は、少女の取ったルーミアの要望を確認すると、その尖った性能をしたブーツについて興味を持ち、その持ち主になるであろう彼女にその要望の真意を訪ねた。

 他人から見ればただの悪ふざけ。

 実用性の欠片もないただのオブジェクトをオーダーメイドしにやってきた冷やかしのようにも見えるだろう。


 しかし、ルーミアは至って真面目だ。

 これを作ってもらって、装備して、また一つ上のステップへ進めると本気で思っている。


「あんた、名前は?」


「ルーミアです」


「そうか、ルーミアちゃん。あんたの依頼、しかと承ったよ。必ずあんたの満足いくブーツを作り上げてみせよう」


 その真剣さが伝わったのだろう。

 男はそのブーツの作成を引き受けた。


「自己紹介が遅れたな。俺はこの店の店主のジュンだ。こっちは娘のマーナ。よろしくな」


「よろしくお願いします」


「しかし、中々面白いブーツだな。履きこなせればとても強力だが……本当に大丈夫か? 嬢ちゃんが耐えられる重量とやらも要調整で難しいな」


 ルーミアが常時身体強化ブーストを纏って強化状態を維持しているのは他人には知りえない情報だ。

 条件として出したマーナが履いた時に重くて歩けないというのは、ルーミアが履いた時も当然動けないのと同義だと思ってしまうだろう。


「しかし、魔法の親和性か。特定の魔法の術式を埋め込むのではなく、あらゆる支援に対応させたいとなると、魔鉱石が必要だな……」


「魔鉱石ですか。必要ならば私が取ってきましょう。かなり無茶を言っている自覚はあるので、手伝えることは手伝わせてください」


「そうか。そうしてくれると助かる。魔鉱石はここから北に行ったところにあるグランツ鉱山から取れるだろう」


「分かりました。持ってくるのは早い方がいいですか?」


「ブーツの完成が早い方がいいならそうだな。嬢ちゃんには重量テストなども挟んでもらって調整しながら仕上げたいから、こっちとしてもそうしてもらえると助かる。あと重さの調整にも魔鉱石を使いたいから、なるべく大きめでたくさんあるのが好ましい」


「では、可能な限りたくさん集めてくるとします」


 己が追い求める装備のためならば尽力は厭わない。

 魔鉱石が多く必要なら、その分をかき集めてこようという気概がルーミアにはある。


「とりあえずこっちもできる作業は進めていくから、二、三日経ったらまた顔を出してくれ。その時に足のサイズを測ったり、重量テストをやったりする。ルーミアちゃんは空いた時に魔鉱石集めを頼む」


「はい。ジュンさん、マーナさん、今日はありがとうございました」


 ひとまずブーツ作成にこぎつけることができてルーミアはほっと胸を撫で下ろした。

 しかし、ガントレット作成の依頼がまだ済んでいないし、やることも増えてしまった。

 のんびりしている暇はないと、ルーミアはまた走り出すのだった。


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