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ソロAランク白魔導師爆誕

 ルーミアにとっては普段のBランク依頼より簡単で楽と思える討伐依頼を終えて冒険者ギルドに戻ると、リリスが既に昇格試験に関する諸々の手続きを終えて待っていた。

 昇格試験は格上冒険者との模擬戦の結果と、Aランク依頼の結果で決まる。

 試験官を務めるアンジェリカの判断にルーミアの処遇は委ねられていた。そんな彼女からの報告を待たずして勝手に手続きを進めていたのはどうかと思うが、アンジェリカ自身もルーミアの合格と結果は揺らがないという確信があったから特に口を出す事もなかった。


「ルーミアさんはどうでしたか?」


「ああ、もちろん合格だ」


「そうですか。それよかったです。この進めていた手続きが無駄にならずに済みました」


 二人のやり取りも合格か否かを伝達する、されるだけの簡単なもので、それさえ分かってしまえば残りの手続きは終了しておりスムーズに進む。Bランク昇格の際よりもはるかに早く行われていく手続きにルーミアは茫然としていた。


「あのっ……アンジェさんとの模擬戦は大変でしたけど、討伐依頼の方はすごく簡単でした。こんなので昇格しちゃっていいんですか?」


「こんなのって……まあ、ルーミアさんにとってはやっぱり楽でしたよね。ですが、ルーミアさんは昇格試験を確かにクリアしました。その内容がどうであれ、試験官のアンジェリカさんがこう判断しているので安心してください」


「ルーミア、さっきも言ったが運も実力のうちだ。それともなんだ? 私との戦闘を乗り越えて勝ち取った昇格は不服か?」


「いえっ、そんなことは……」


 昇格試験が想像していたよりも簡単で拍子抜けしてしまったルーミアはどこか納得がいっていない様子だ。

 しかし、ルーミアが納得していなくともたたき出した結果は合格。

 試験官であるアンジェリカがそう判断しているのだから結果は変わらない。


 リリスに続き、アンジェリカも呆れた様子で口を開いた。

 手加減したとはいえ全力で臨んだ模擬戦。それを軽んじるような発言に少しばかりの苛立ちを覚えたアンジェリカは強い口調で告げる。


 それを聞いたルーミアはハッとした表情を浮かべる。

 アンジェリカとの模擬戦という難関の後に易しい依頼が来てしまったため、感覚がマヒしてしまっているが、実際はかなりの激戦を乗り越えている。

 アンジェリカとて誰彼構わずAランクの資格を手放しで渡すほどお人好しではないし、自らの実力を過信していないからこそ受験者の前に高い壁として立ちはだかっている自覚もある。


 ルーミアはそれを実力で越えた。資格を勝ち取った。


「だったら堂々としていればいい。お前はきちんと自分の力で成し遂げたんだ」


「そうですよ、もっと自信持ってください。それに、これはかなりのスピード出世なので誇っていいんですよ?」


 Aランクの昇格試験はルーミアが思うほどに易しいものではない。

 人によって難易度やかかる労力、さらには準備期間なども含めた日数も変わってくる。

 それをサクッと、まるで散歩に赴いたかのようなノリで達成してきたルーミア。

 本人からすればそれも拍子抜けしてしまって手放しで喜べない一因となっているのかもしれないが、短時間で試験を突破するのは極めて困難な偉業でもある。


「ありがとうございます……!」


 そこまで褒めちぎられてようやく試験をクリアした実感とその達成感がじわじわと押し寄せてきたルーミアはへにゃりと顔を綻ばせた。


「では、改めておめでとうございます!」


 ルーミアが自分がAランク昇格試験に合格したという事実を受け入れたところで、リリスはあらかじめ用意していたAランクの冒険者証を渡す。

 それをたどたどしく受け取ったルーミアは、どこかもの欲しそうな目でアンジェリカを見やる。

 その視線に気付いたアンジェリカは一瞬どうしたものかと考えたが、ルーミアの望むものを理解しその言葉を与えた。


「Aランク昇格おめでとう。だが、ここで終わりじゃないぞ。お前はまだまだ強くなれる。待っててやるから私と同じ場所に上ってきてみせろ」


「はい! いつか本気のアンジェリカさんと戦って、勝てるように頑張ります」


「ほう、それは大きく出たな。だが、その……なんだ。楽しみにしている」


 アンジェリカはルーミアに祝福と激励の言葉を添えて贈る。

 ルーミアはここで終わるような女じゃない。これしきで満足する女じゃない。

 さらにその先の高みを目指す資格を持つ。

 ならば己と同じ立場まで駆け上がってこいとアンジェリカは薄く笑った。


 任せてくださいと自信満々に無い胸を張るルーミア。

 それを微笑ましく見守るリリスとアンジェリカ。


 そんなありふれた日常の一コマの中。

 冒険者ギルドユーティリス支部にて、新たなAランク冒険者が誕生した瞬間だった。


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